マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『CASSHERN』の私的な感想―誰かの願いが叶うころ―

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CASSHERN/2004(日本)/141分
監督:紀里谷 和明
主演:伊勢谷 友介/麻生 久美子、寺尾 聰、樋口 可南子、唐沢 寿明

 国産SFアクション映画の新境地

・・アクション映画ってあんまり見ません。。。

派手な立ち回りや豪華なCG映像だけを見せられても、それだけだとどうしても感情移入が出来なくて、爽快感だけを望むなら、富士急の絶叫マシンの方がよっぽどじゃありませんか?

そんな中でもこの作品だけは、自分は映画館でしっかり観ました。

原作のテレビアニメ『新造人間キャシャーン』を見ていた世代でも、主題歌を歌う当時の紀里谷監督の妻の宇多田ヒカルファンでもないんですが、何と言ってもこのメインビジュアルがカッコ良過ぎます。。

当時から賛否両論のあるこの作品ですが、自分は全然嫌いじゃありません。

尺の長さや演出の不出来等、映画としてのツッコミどころは満載ですが、それでも120分間十分に紀里谷ワールドの真骨頂ともいうべき美的感覚に終始圧倒されました。

ビジュアルパッケージだけで中身のない映画が横行する中、映画評論家らも類にもれずこの作品を随分批判していましたが、結論から言うとそういう作品は、全然あっていいんだと思います。

なぜならまず、映画は映画館に観に来てもらうコトが最優先なので。

そしてこの作品はまずその第一段階を余裕でクリアし、観賞後観客に多くの疑問をちゃんと残してくれたので、只の娯楽アクション映画とは一線を画す、見応えのある作品だと思います。

とは言え原作からの乖離度はハンパないので、アニメを知ってらっしゃる方達はこの作品は本家へのオマージュとして創られたまったくの別物として観るコトを強くおすすめします。

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物語はパラレルワールドの中での超大国、大亜細亜連邦共和国が戦争に勝利したところから始まります。

―――長きに渡るヨーロッパ連合との戦いの末国土は荒れ果て、各地で深刻な公害病が発生する中、遺伝子工学の第一人者である東博士は、画期的な再生医療を可能とする新理論「新造細胞」を発表する。
そこに目を付けた軍は彼に支援を申し入れ、やがてその研究施設での培養実験がスタートする。
一方父である東博士の反対を押し切り、テロリスト鎮圧の為戦線に赴いていた息子鉄也は、その優しさが仇となり戦死してしまう。
鉄也の遺体が国葬とされ陸軍本部に届く正にその時、異形の稲妻が天から落ち培養施設から「新造人間」が誕生してしまう・・

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 誰かの願いが叶うころ

結局、伝えたかったコトはこれだけなんだと思います。

第一次大戦後の社会主義国家を彷彿させるスチームパンク的な色合いのない世界で蠢く群衆の苦悩、太平洋戦争時代に神風特攻隊に志願してしまった息子と父との葛藤、その後の中国共産党によるチベット民族同化政策によって迫害を受け続ける人々の苦しみ等、どれも監督が主観を置いて問題定義してる様々なわだかまりを『CASSHERN』に乗せて表現しているように感じられます。

ただそれが先入観を持って観られがちなアニメ原作の実写化というコトと、紀里谷監督にとって、それまでの映像業界の既成概念を徹底して無視して撮られた初の長編作品だったというコトが、批判の対象としては好都合だったのでしょう。

それでも、、


乱闘シーンにおいてのマット画の使い方等は、十分原作をリスペクトした上での作風に見えますし、ちょっと棒読みでオーバーリアクションな俳優陣の演技も、俯瞰してみれば、アニメキャラの独特な存在感を壊さぬ様元々のキャラクターイメージを忠実に踏襲している様にも感じられます。

強いて言えば、編集を監督自らが行ってしまった為、思い入れのあるシーンをうまく短縮出来ず尺が伸びてしまった事くらいでしょうか?

そして最後に新造人間達が「見えた世界」、「見えなかった世界」の曖昧な表現には観客から大分疑問符がついたようですが、やっぱりこれも、

それぞれで想像すればいいコトなんじゃないでしょうか?
 

史実を基にしたドラマやミステリーじゃないんで、多少の辻褄が合わなくても自分としては何の問題もありません。

かっこいいフルCGのアクションと華麗な色彩美で観客を十分に魅了した上で、最後に「・・あれ、どういう意味だったんだろう?」と何かを考えさせられるアクション映画なんてそう多くはありません。

実際この映画の公開後、監督にはハリウッドからも多くのオファーが届いたようなので、世界的にも十分認められた大作アクションだったようです。

個人的には、最後の4分半のエンディングソングでこの映画の伝えたかったコト全てを表現してしまった宇多田ヒカルこそが、本当の天才なんじゃないかと思ってはしまいましたが。。 


宇多田ヒカル - 誰かの願いが叶うころ

 

『CASSHERN』
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