マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『13の理由』シーズン4第10話の私的な感想―ハンナに送る言葉―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Final Season Episode10/2020~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他

 友達の絆

友達の絆ってなんだろう?

大人になると、そんな青臭いものにいちいち付き合っていられる余裕はない。

おまけに、決して友人が多い方とは言えない自分は、人に過度の期待を求めないで生きる生き方を、すっかり身に着けてきてしまった。。

 

それでもふとした瞬間に、自分を支えてくれている存在を感じる時がある。

それは何も、現実世界の中だけの話じゃなく、ネット上で繋がっているだけの人達でも同じで、彼らの一挙手一投足に一喜一憂している自分に気づくと、腹の底にふんわりと温かいものが広がる。。

 

新時代のネットツールを通じて、自分達は様々なものと繋がってきた。

その大部分は単なる情報にしか過ぎないのだけど、仮想空間に溢れる言葉は千差万別。

更に、稀にそこで垣間見る激しい憎悪や苛立ち、或いは無神経に投げかけられている言葉は、受け手側がどんな状態でも、容赦なくその心を切り刻む。。

 

言葉で相手を救う事のできる人間の叡智は、同時に、言葉だけで人を死に追い込む事もできる。

自分達は漠然とぼやけた“幸せ”を手に入れる為、この諸刃の剣を上手く使いこなす術を、友人という存在からしか体得する事が出来なかったはずだ。。

 

現代のアメリカ社会のみに留まらず、それに迎合する日本人全体にも立ち込める暗雲は、この他者の多様性を受け入れられずに、個人の殻に閉じこもったが故の末路。

結局自分達は、この悲喜こもごもの人との関わり合いをしながらでしか、生き残る事さえままならない、弱い生き物なんだろう。。。

 

ファイナルシーズンを迎えた『13の理由』には、描き切れぬ程めいいいっぱいに詰め込まれた様々な社会問題の影に、これを解決する糸口に繋がる“愛”を、こっそり散りばめる。

それは、ちょっぴり出演機会の多過ぎる幻想の仲間や、怯える友人達の姿を通じて。。

その若者のしでかす過ちに、大部分共感するのは少し難しかったけど、運命の人と信じて疑う事さえ知らなかった青臭い日々と、その瑕を笑い飛ばしてくれる数少ないあの頃の友人達の顔が、今回の最終話を見終えた瞬間に、突然頭の中にフィードバックしてきた。

シーズン4第9話の感想はコチラ

 

以下、『13の理由』シーズン4最終話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 卒業(あらすじ)

・・病室のベッドで眠るジャスティンに寄り添うクレイ。。
やがてクレイ達は、ジャスティンの主治医から、彼がエイズを発症している事を知らされる。。
更に、ジャスティンが路上生活時において、売春せざるを得ない環境にいた事を知り、クレイは返す言葉もなく絶望感に打ちひしがれる。。

そのジャスティンに付き添い続けるジェシカ。
やがて、見舞いに訪れるチャーリーとアレックス。
勇気を奮い起こせないままのザックは、その病院にさえ入れずにいる。。

エステラとの写真をタイラーの元へ届けに来たウィンストンは、彼らの告発を決意。
しかし、ブライスの殺害の実行犯だった事をアレックス自身に自白された彼は、その困惑を更に広げてゆく。。。

 

人工呼吸器を外せなくなった事で、ようやくジャスティンの死期を悟ったクレイは、思わず病室から駆け出る。
彼は、虚しさの中闇夜を全力で走り抜き、やがて警察署迄辿り着くと・・

その脳裏を過る拳銃を手にした時のフラッシュバックは、クレイを闇に引きずり込んでいく。。

銃の所持を偽装し、警察署内で大声を張り上げ始めるクレイ。
しかし駆けつけたディアスは、威嚇する彼の怯えを鋭く察知し、その震える肩をきつく抱きしめる。。

酒に溺れているザックの元に駆けつけるチャーリーとアレックス。
アレックスはザックにキスをした夜の事を伝え、そのやさぐれる彼を説得。
やがて千鳥足のまま、ジャスティンの待つ病院へとやってくるザックは、無言のままクレイと熱く抱擁を交わす。。

 

トニーが家に戻ると、メキシコの彼の父とネット電話をしているケイレブの姿が。
・・久しぶりの親子の会話で、父が残した工場を守り抜く意思を伝えるトニー。
しかし彼の父は、何よりも大切な息子の将来を案じ、トニーに進学を強く勧める。

付き纏うブライスの幻覚に、その怒りの矛先を向けるジェシカ。。

哀悼の意を示すディーンは、戸惑うクレイに卒業式での生徒代表演説を奨励する。

やがて未来の見えない不安を、クレイは全力でカウンセラーにぶつけるも、彼はその全ての蟠りを受け入れ・・

 

ジャスティンの眠るベッドの横で、息子の心を覆いつくした数々の死を悼みながら、クレイを励ます彼の父親。

ザックの推薦状を書いていたアメフト部のコーチは、進学を挫折した彼に、自分の後を引き継ぐ職を与え・・

 

やがて衰弱していくジャスティンに、脳転移の症状が出始めた事から、クレイとその家族は呼吸器を外す決断を迫られる。。

泣きじゃくりながら懸命に寄り添うジェシカ。
朦朧とする意識の中、そんな彼女に永遠の愛を誓うジャスティン。
待合室には、そんな彼の最期を看取る為に集まった生徒達が、溢れかえってゆく。。

静まり返った午後の病室。
やがてジャスティンは、クレイ等の家族に看取られながら、そっと息を引き取る。
その細くなった掌に、別れのキスをするクレイ。。。

教会に集まってくる生徒達。
その最前列に、呆然自失のまま座るクレイにトニーは寄り添う。
動揺するジェシカの、その秘められた強さを語るのはアニ。

シーズンの冒頭に登場した牧師の、ジャスティンの葬式に手向けられたスピーチ。
恐れや恥、歪んだ倫理に押し黙る子供達が、大人が容認する事で死んでいく実態を、彼女は赤裸々に語る。
そして、その後悔や決意が、自分達の未来を切り開く事も。。

弔辞の言葉に詰まるアレックスに、付き添うその父ステンダル。
ザックはアメフト部のコーチの言葉を引用し、弱い自分達が強くなる為に模索する日々の過酷さを語る。

葬式が終わっても、動けずにいるクレイの元へ近づくジェシカは、何も言わずにその手を握り締め、二人はジャスティンの棺を見つめ続ける。。

モネに集まるザック達の姿。
ジャスティンの死に突き動かされたアレックスは、アニへの感謝と謝罪の言葉を述べる。
すると、そこへやってくるウィンストンは彼を表へ連れ出し・・

ブライスを殺した真意を、アレックスに問いただすウィンストン。
その後悔に押しつぶされそうになる彼に、ウィンストンは、計り知れないほど断ち切れないモンティーへの未練を語りながら、アレックスに残る愛情も伝え、ブライスのテープを手渡す。。

失敗や孤独を恐れるトニーは、工場を手放す契約書を手に、その不安をケイレブに爆発させる。
そんな彼に口づけを交わし、止めどない励ましの言葉を投げかけ続けるケイレブ。

 

スタンダールの元へとやってくるディアスは、自分の職務よりも大事な家族の将来の事を語り、ブライスの事件の捜査を打ち切る決断を告げる。。

 

数日が経ち、クレイの元にオリヴィアから小包が送られてくる。
その中には、彼女の娘を最も愛したクレイにその意思を委ねる手紙と共に、ハンナの残したテープが・・・

その動揺を抑えきれないクレイは、カウンセラーに詰め寄り、思いの丈をぶちまける。
ハンナの真意が分からずにいた、あの頃の自分の苛立ちを。
その無力な自分が、再び救えなかったジャスティンの事を。。
やがて、過去の経験から、他人に愛される事を恐れる彼らと、自分とが重なる事をクレイはカウンセラーに告げられ・・・

・・自分が犯してきた数々の過ちとその激動の時代の過去を、カウンセラーはクレイに語り出す。。
そして、その彼の国語の教師が、同じ憤りを抱える子供に寄り添う今の職を、自分に見つけ出してくれた事も。。

やがてクレイは、その憤りの全てが、ハンナの死から始まった事を思い返す。。。

 

卒業式に集まった全校生徒の前で、“愛”についてのスピーチをするジェシカ。
彼女は、その今まで捕らわれてきたあらゆる怒りを捨て、愛し合う事の難しさを説く。

彼女の後に壇上に上がるクレイは、生徒達に問いかける。
僕らは高校生活を生き残れたのか?”と。。。

彼は、飲酒運転で事故死した先輩のジェフ、孤独に耐えかねて自殺したハンナ、救われる価値がないと思い込んでエイズで病死したジャスティンの事を思い返すと共に、怒りに支配され殺されたブライスとモンティーにも、哀悼の意を述べる。

そして彼は、自分のうつ病を告白した上で、その世知辛い現実でも、互いに愛し合い助け合いながら生き延びる素晴らしさを、集まった生徒達に語り掛ける。

・・それはまるで、ハンナへ手向ける最後の言葉の様に。。。。

 

式典終了後、生徒達が集まる体育館では、転校したコートニーライアンの姿も。
成長した妹との再会に驚くトニー。
ハンズオフ運動のバトンを、エステラに託すジェシカとアニ。
音楽の勉強を始める決意を固めたザックは、それをクロエ達に恥ずかしそうに語る。

幻覚のジャスティンに語り掛けるクレイは、自分の妄想の中でもブライスと仲良さげに振舞う彼の様子に文句を言う。そんなクレイに、ジャスティンは告げる。
自分を傷つけた人間さえも、人は許し愛する事ができる事を。。。

やがて、クレイの目の前に現れたハンナの幻覚に、彼が近づいていこうとすると、ハイディと名乗る、彼と同じ大学に進む生徒に呼び止められるクレイ。。

クレイの呼びかけで集まった仲間達は、彼が最初にハンナのテープを聴いた場所に、それを埋める。
そこへやってくるブライスの幻覚に対峙するジェシカ。。
しかし彼女が、仲間を愛する尊さを教えられた彼の存在意義を認めると、ブライスは何も言わず、その場を立ち去ってゆく。。。

卒業証書を見詰めるクレイに、尚も語り掛けてくるジャスティン。
彼は、自分のロッカーに潜めた大学入試の小論文を、クレイに読むように促すと・・

“自分を変えたもの”と題されたその内容に、クレイへの感謝とその愛情深さが綴られていた事を知り、やがて彼は声を詰まらせる。。

 

ジェンセン夫妻とケイレブに見送られ、マスタングで街を出るトニーとクレイ。

二人は何もしゃべらずに、その長い道程に車を走らせて行く。。。。 
 

 

 

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・・・言いたいコトは山盛りだけど、、、

久しぶりに、感慨深いドラマになった事はまず間違いない!

 

シーズン冒頭から、あまりに不幸に付き纏われるジャスティンを見せられ続けてきたので、彼の死はなんとなく予想できちゃってたけど、それでも、病床に着くその哀れな姿を涙なしに見る事は、到底出来ませんでした。。

 

ファーストシーズンで、ハンナの心がゆっくり死んでゆくその様子と、自分の価値を見い出せないままでいるジャスティンは、まるでそっくり。。

死人が多過ぎるドラマにありがちな違和感があまり感じられなかったのも、この降り積もる雪の様に徐々に蓄積されていく死の影が、二人に共通してしっかりと出てたからでしょう。

・・思い返せば、ハンナを自殺に追い込むキッカケを作ってしまったのも、ジャスティンの弱さからの事。。

4シーズンに跨って伝えてきた若者の瑕は、結局、どうしてもその因果を巡らせる事でしか伝えられないのでしょうか・・・?

 

少し病的に見え過ぎちゃって、これまで言及を避けてきたけど、、

やっぱり今回のシーズンが意外にもテンポ良く感じられたのは、『CSI:ニューヨーク』や『クリミナル・マインド 国際捜査班』で主役を張ってきたゲイリー・シニーズが、独りよがりのクレイのナレーションに、カウンセラーとしての答えをしっかり添えていてくれたおかげ♪

その彼の設定も穿った目で見れば有体だけど、この彼の渋い声で『自分の前でだけなら少しくらいキレてもいい』なんてオトナな台詞を言われたら、クレイじゃなくても、大人しくしてしまいそうw

だけどどうせなら、「自分よりも人の命が大事なのは、自分を愛せていないから」くらいの事をしっかり言ってみてほしかったな。。

 

全体的に、ハンナ以外の女子キャストの演技が淡白過ぎる気もしてるけど・・

現代の現実志向女子って、皆あんな感じ?

愛するジャスティンを目の前で失っても、家父長制とか、コンドームのCMのよーな啓蒙カットとかで、その揺るぎない信念を語れちゃうジェシカは、どう見ても魅力的な女には見えなかったけど、ラストに寂しそうに現れるブライスの幻覚に、その存在意義をきちんと認めてあげたのは、ちょっとだけ嬉しかったな。

 

途中から急に軸のブレ始めたモンティーへの冤罪も、個人的にはピカ一色気のあるダークオーラを出しまくっていたウィンストンの存在感がなかったら、納得できなかったかも。。

性差別の偏見をテーマにしてる割には、レズカップルよりゲイカップルの誕生の方が圧倒的に多かったのも、女子を見る目そのままの、秋波に満ちた彼の流し目があったからこそ。。

彼が周到に進めてきたその復讐劇は、前回のエステラの言葉で気づかされた様に、アレックスと全く同じに、愛する者を傷つけられたからこその自分の怒りなワケで。。

そんな彼がジャスティンの死で、愛するアレックスが傷ついたジェシカを守ろうとした事によって、モンティーに罪を着せた事を知った時、その叶う事のない二人への愛を打ち明けるシーンは、かなり痺れました。。

この時点でもう、自分の告発が誰も救わない事に気づける彼は、あまりに大人過ぎ。。

それに便乗して、彼らが罪から逃れた様に見えてしまうのは、きっと純粋さを失った自分達の野暮な目線と言えるのでしょう。。。w

 

ふんわりとオールドクラシックなノスタルジーに浸るラストは、トニーの車の中で聴いたハンナのテープから始まったこの物語のセルフオマージュ。。

それでも、クレイ達の目の前に突然現れてくるハイディこそを、ハンナを演じたキャサリン・ラングフォードが、彼らを全く知らない一人二役で演じてくれていたら、彼らが過酷なサバイバルを生き抜いたその幻想青春グラフィティが、現実に繋がるになったんだけどな。。。

 

『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。

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