マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

メランコリー

映画『MOTHER マザー』の私的な感想―実話に基づく倒錯した聖母の祈り―(ネタバレあり)

MOTHER/2020(日本)/126分 /共感性ゼロのドラマ /大森立嗣という監督の事をもっと知りたくなった。 彼はこの映画で、どんなメッセージを伝えたかったのだろう? スクリーンの中でもんどりうつ様に試行錯誤する主演の彼女はおろか、この映画に出演してい…

映画『ゴーン・ガール』の私的な感想―虚構の夫婦の肖像画―(ネタバレあり)

GONE GIRL/2014(アメリカ)/149分 /本当の違和感 /結婚は理想であっても、現実ではない。 バツイチのまま四十もとうに過ぎてくると、ふとそんな盲信が生まれてくる。 アメリカ・ローリング・ストーン誌が選ぶ“2014年の映画ベスト10”にランクインしたこ…

映画『ドニー・ダーコ』の私的な感想―銀色の兎の新解釈と孤独を癒すパラダイム―(ネタバレあり)

Donnie Darko/2001(アメリカ)/113分 /新世紀最高のカルト映画 /ストレス加担のコロナ自粛の影響は、冷静になってみると、自分にとってそんな悪い事じゃないかもしれない。 現にこんな事でもなければ、新世紀最高の超難解カルト映画と呼ばれるこの作品…

映画『ミッドサマー』の私的な感想―禁忌の異色ホラー。フォークロアに閉じ込めた凶悪な恋心―(ネタバレあり)

Midsommar/2020(アメリカ/スウェーデン)/148分 /禁じ手のホラー映画 / 傍若無人に鬱憤を映画で晴らすアリ・アスター監督がまたやってくれた。 冒頭の意味深なタペストリーから、天地逆転のカメラアングル。 ・・彼の抱える闇は、まだまだ深そうだ。。

映画『タクシードライバー』の私的な感想―ジョーカーとトラヴィスの悲観論の違い―(ネタバレあり)

Taxi Driver/1976(アメリカ)/114分 /孤独な男のナルシズム 最近、孤独な男のナルシズムを描く映画が、ちょっと増えてきた気がしてる。 ようやく、世間がメンタル弱い系男子を追い込む恐ろしさに気づき始めたって事? 近代アメコミサイコパスの頂点に君…

映画『嘆きのピエタ』の私的な感想―聖母マリアの憎しみから生まれるもの―

피에타/2012(韓国)/104分 /底辺で喘ぐ者 貧乏に理由なんてない。 冒頭からいきなりそんな事を言ってしまうと、なんだか身も蓋もないけど、この映画を見る時は、それぐらいの心構えが必要。 。 日韓関係が露骨に悪化する中で、今更こんな映画に手を出す…

映画『ゴーストランドの惨劇』の私的な感想―ハリウッドの惨劇を憂う皮肉な挑戦―(ネタバレあり)

Ghostland/Incident in a Ghostland/2019(カナダ、フランス)/91分 /強い既視感 /短いながらも、随所に強い既視感を感じるスリラーだった。 W主演のエミリア・ジョーンズは“ハリポタ”の頃のエマ・ワトソンそっくりだし、その母親役の歌手・ミレーヌ・…

映画『マーターズ』の私的な感想―アンナの台詞に隠された本当の恐怖―(ネタバレあり)

Martyrs/2008(フランス/カナダ)/100分 /私的なベストスリラー映画 /この映画だけは胸糞なんて言葉じゃ、語りつくせない。 けれど大抵のレビューサイトでは、この映画の核心がイマイチ理解できてないような気がして。。 私的にはNo.1スリラー映画と呼…

映画『恋の罪』の私的な感想―東電OL殺人事件に捧ぐ雨の鎮魂歌―

Guilty of Romance/2011(日本)/144分 /渋谷の魔力 /やけに雨が印象的に残る映画だ。 まるで見えない人の何かを洗い流すかのように・・ 四半世紀近く経ってしまったが、この映画のベースとなった未解決事件は、ちょっと忘れられない。。 東電OL殺人事件…

映画『ハウス・ジャック・ビルド』の私的な感想―シリアルキラーが築く家族の風景―(ネタバレあり)

The House That Jack Built/2019(デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデン)/155分 /マザーグースの童謡 /何時の頃からか、ユマ・サーマンにはどうしても嫌悪感を感じてしまう。 ・・それが、屈折した自分の留学経験からの、強い白人コンプレックス…

映画『ザ・バニシング-消失-』の私的な感想―二つの金の卵が暗示するもの―(ネタバレあり)

SPOORLOOS/1988(オランダ/フランス)/106分/ /反社会性パーソナリティー障害を持つ男の真理 /子供の頃、ブランコを漕いでいる友人が、その手を放してしまう妄想を抱いた事はないだろうか? 半円を描く弧が次第に深くなっていき、彼らの目線の位置に大…

映画『告白』の私的な感想―痛みを知らない子供達に伝える最後のホームルーム―

Confessions/2010(日本)/106分 /暴力のない世界 /暴力を受けた事のない子供が最近やけに増えている気がする。 アラフォー世代の世迷い言の様に聴こえるだろうが、ネット上の匿名で誹謗中傷が横行する現代では、自分達の頃とはあきらかにその性質が変化…

映画『バーニング』の私的な感想―村上文学で「僕」が抱えていた事―(ネタバレあり)

Burning/2018(韓国)/148分 /韓国人の感情 /エンドロールが流れた瞬間、唸ってしまった作品はかなり久しぶりだ。 村上春樹の世界にどっぷりハマっていたあの頃を、懐かしく思い出す。。 低迷を続ける『ウォーキング・デッド』から、結果だいぶ上手く卒…

映画『サスペリア』の私的な感想―リメイクされた本物のモダンホラー―(ネタバレあり)

Suspiria/2018(アメリカ、イタリア)/152分 /本当の狂気 /ホラー映画のリメイク物は大抵駄作に終わる。 それは恐怖の根本を蔑ろに、進化した映像処理に依存してしまう自分達の悪癖でもある。 78年のホラーの生みの親ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に…

映画『無垢の祈り』の私的な感想―DVD化さえできない禁断のタブー―

Innocent prayer/2015(日本)/85分 /見えない現実 /年明け早々、またとんでもない作品を観てしまった。 胸糞、幼児虐待、R指定と三拍子揃ったこの映画が、まったりとした飽和感の残る正月の吉祥寺UPLINKで再上映されていると知って足を運んでみた。 劇…

映画『渇き。』の私的な感想―加奈子は天使なのか悪魔なのか?―(ネタバレあり)

World of Kanako/2014(日本)/118分 /歪なカタチの執念 /クリスマス・イブの夜から始まるこの物語は、寒い冬場に観ると少し胸が痛くなる。 ホラー映画としては少々トリッキー過ぎた中島監督の『来る』を観て、彼の本質にあるのは、やっぱりハンパない人…

映画『生きてるだけで、愛。』の私的な感想―本物の感覚を求めるふたり―

生きてるだけで、愛。/2018(日本)/109分 / 現代人が抱える孤独 /この作品を独りで観るのはちょっとおススメできない。 それは、言ってしまえば貴方の横に救ってくれる菅田将暉はいないから。。 自分も含め、この手の映画に手が伸びてしまうヒトはきっ…

映画『ロブスター』の私的な感想―アバウトな感覚が存在しないディストピア―(ネタバレあり)

The Lobster/2015(ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス)/118分 /独身者に付けつけられる究極の未来 / 独身者にこの手のディストピアを突きつけられるとちょっと卒倒してしまう。 テラハやバチェラージャパン等のリアリティドラマに…

映画『メメント』の私的な感想―記憶のない男の記録―

Memento/2000(アメリカ) /いつの間にかMARBEL系のブロックバスター映画監督になり果ててしまったクリストファー・ノーランですが、私的には彼はこの作品でその才能の全てを出し切ってしまったと思っていますw 彼の弟、ジョナサン・ノーランが書いた短編…

映画『哭声/コクソン』の私的な感想―福音書に準えた韓国発のアルマゲドン―(ネタバレあり)

곡성(哭聲)/2016(韓国) /冒頭にルカによる福音書のインタータイトルが出てきた時点で、なんか嫌な予感がしてたんですが・・ ダーレン・アロノフスキー監督の映画『mother!』の韓国版かとも思ったんですが、この作品は更にその上をいく難解ぶり。。。 …

映画『mother!』の私的な感想―究極のタブーに踏み込んだ問題作―(ネタバレあり)

mother!/2017(アメリカ) /必ず見返したくなる宗教映画 /伝説の恐怖映画『マーターズ』に対をなす宗教映画と言えるのかもしれない・・。 ジャンルに分けるとしても何と言っていいのか・・ サスペンス?スリラー?ホラー?オカルト? とまあ、多分その全…

映画『パーフェクト・センス』の私的な感想―感じなくなる世界―(ネタバレあり)

Perfect Sense/2011(イギリス) / 哀愁に満ち溢れたアポカリプス SF映画にしては随分と情緒的な作品です。 『トレイン・スポッティング』の頃の妙味はユアン・マクレガーにはもうあまり感じられませんが、代わりに彼の成長した大人の哀愁が随所に漂いま…

映画『ヒメアノ~ル』の私的な感想―R指定おかまいなしの森田剛の挑戦―

ヒメアノ~ル/2016(日本) /本作の原作を知らない方って、やっぱりそれなりに多いんでしょうか? 自分達アラフォー世代にとって、ギャグ漫画界のカリスマ的存在だった古谷実の作品が映像化に漕ぎつけられた時は、ちょっとした驚きでした。 「稲中卓球部」…

映画『ミスト』の私的な感想―ラストシーンに待ち受ける衝撃のトラウマ―

The Mist/2007(アメリカ) /フランク・ダラボンの作品は殆ど見てきましたが、彼は基本的に大どんでん返しが好きなんでしょうか・・? 『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』等で感動的なラストシーンを作り上げてきた彼も、実は元々はホラー映画…

映画『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の私的な感想―一線を越えた男の美学―

LOCKE/2013(イギリス) /スタイリッシュなワンシチュエーションドラマ 夜の高速を車で走っていると、よく色々な事を考えます。 他愛のない事から仕事の事まで、暗闇に目を凝らし集中していると思考がクリアになていくというか、色々な事を客観的に考えら…

映画『悪い男』の私的な感想―歪んだ愛情の果てに、二人が辿り着く先は―

나쁜 남자/2001(韓国) /この映画は本当にヒトに進めていいんでしょうか? 多分この主人公に共感出来るヒトなんて、ごく一部もいないでしょう。 というより、 大多数のヒトが理解し難い究極のラブストーリーなような気がします。 なので、あえてこのブロ…

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