マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『イントゥ・ザ・ナイト』のキャスト紹介と私的な感想―ポールシフトで滅亡する人類。ベルギー産SFディザスタードラマ―

Into the Night01

Into the Night Season1/2020~(ベルギー)
ショーランナー:ジェイソン・ジョージ
出演:ポリーヌ・エチエンヌ、ローラン・カペリュート、マフメット・クルトゥルス、アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ、ステファノ・カッセッティ他

 醜態をさらしながら団結する人類

・・コロナで死ぬか。失業で死ぬか。。

下々の労働者の生活なぞには全く興味のない政府主催のチキンレースのおかげで、零細撮影現場の仕事はすっかりなくなっちゃった。。。

そんな、ややこしい助成金申請の仕方もさっぱりわからないまま、惨めで金欠なスローライフを送る日々の中、B級ドラマを量産し続けようやくノウハウを掴みかけたNetflixが、久々に面白い海外ドラマを世に送り出してくれました♪

 

“イントゥ・ザ・ナイト”=“夜へ・・”というこの直球なタイトル通り、スピード感抜群のこのドラマの登場人物達は、只管夜を目指します

そのエポックであるシーズン1は、エピソードも全6話と全くダラけずに、退屈な夜の一晩で一気見出来てしまうコト請け合い。

・・思えば、アポカリプスドラマの先駆け的な『ウォーキング・デッド』も、この短い尺の中で繰り広げられる色濃い人間模様が、醍醐味の一つでした。。。

 

太陽光が人類を滅ぼす近未来を描いたこのドラマは、ポーランドのSF小説『The Old Axolotl』を実写化したそうですが、ハイジャックされた飛行機の中で巻き起こるユーロ民のその慌てふためく様子が、なんだか絶妙にリアル。。

 

おまけに、ベルギー発の民間旅客機がその舞台の殆どなので、アジア民はおろか、自ずとヒーローキャラに洗脳されたアメリカ人でさえ、シーズン1では一切登場してきません。

 

・・・ベルギーってドコよ?ワッフルくらいしか思いつかん。。。

てゆーか、アメリカの言うコトもよくわかんなくなったこのご時世で、ユーロ民の動静なんて興味ねえ。。。

 

なんてヒト達も、『月曜から夜更かし』を見るよーな感覚で、まずはユーロ民の皮肉とユーモアセンスが入り混じったこのドラマを、斜に構えて視聴してみて下さい!

 

・・なんて言うんだろ。。

日本に例えるなら、ディスられまくってきた埼玉県民辺りが、同じマイナー県民の生き残りをごっそり集めて、壊滅的な被害を受けた東京を捨て国外脱出する様な感じ・・?w(・・自分でも何言ってるかサッパリわかってない(^^;)

 

その過程で醜態をたっぷりさらしながらも一つの目的の為に団結していく彼らの様子は、コロナの実被害よりも、その恐怖心に憑りつかれた自分達の姿にも、ピッタリと重なってくるかも。。。 

 

 

 

 

 

Into the Night02

 他のアポカリプスドラマとは違う理由

ポスト・アポカリプスドラマの定番と言えば、やっぱりウィルスかゾンビ。

その強烈な見た目のビジュアルに、ドン引き、或いは毛嫌いする視聴者も少なくはないはず。。

 

このドラマは、そんなハリウッド的な外連味を一切省いて、不安と差別、更には宗教や政治背景の企みなんかをバックに添えた、人間同士のぶつかり合いに焦点を当てた一本勝負。

そんなベルギー産SFドラマ『イントゥ・ザ・ナイト』のユニークな点を、以下に簡単に3つまとめてみました。

 

①ホラーなビジュアルがない

大抵のハリウッド産アポカリプスドラマには、グロテスクな造形のクリーチャーがつきもの。
その点このドラマは、突然巻き起こる磁極の逆転現象(ポールシフト)によっての大惨事から物語が始まるので、CGやVFXで魅せる凝った造りの変死体なんかも、シーズン1迄は一切登場しません。
・・逆に言えば、ブロックバスター的な天変地異は全く見せないので、単純な刺激だけがほしー方には、物足りない演出かも。。

 

②裏付けの設定がリアルで分かりやすい

ポールシフトにより、中性子爆弾級の放射線が地球に降り注ぐなんて言われてもちょっとしっくりときませんが、この手のサイエンス的な説明も、劇中にはしっかり。
それでいて、その異常現象の問題解決よりも、ただ只管に闇夜を探し続けながら、旅客機で彷徨い続ける人間達の逃避行では、その心理描写がスピーディーな展開の中でも段階を経て、丁寧に描かれていきます。

 

③歴史、宗教、政治的な背景の見える登場人物

・・皆さん、ベルギーがEUの首都なんて言われている事をご存じでしたか?
登場するキャラも、その殆どがアメリカやイギリス以外の純正ヨーロッパ民
共産圏のロシア人や、モロッコからの移民、更にはイスラム圏のトルコ人設定のキャラ迄登場するので、文化圏の違う人種間同士のちょっとした偏見等、民族性の価値観の違いなんかも、薄っすらまるわかり。
・・因みにユーロ文化に全く疎い著者は、ドイツとそっくりな国旗のベルギーがフランス語圏文化な事を、このドラマで初めて知りました。。。
 

 

 

Into the Night03

 「イントゥ・ザ・ナイト」の登場人物

フランス映画界の最高峰、セザール賞の最有力候補に名前の挙がるポリーヌ・エチエンヌステファノ・カッセッティを筆頭に、2019年に北マケドニアの空港で撮影が開始されたこのドラマには、その舞台のベルギーやフランス、ドイツやイタリアからの俳優陣は勿論の事、ヨーロッパ各国の注目株俳優が目白押し。

そんな中で敢えて、EUから脱退表明したイギリス人や、先進国中最も高い失業率を誇ってしまっているスペイン系の俳優をメインキャストから外したりと、EUをけん引しようとしているフレンチ文化圏ならでは思惑や意図的なねらいが、若干見え隠れしたりして・・w

とは言え、アジア民からしたらちょっと区別のつきにくい、12名の各国主要キャスト達を、簡単なプロフを添えて紹介します。

 

f:id:lllkyokolll:20180430194830j:plain①シルヴィ(ポリーヌ・エチエンヌ)

ベルギー空軍に所属していた女性。
黒人の恋人アンリをすい臓癌で突然失い、若干メンヘラ気味に自殺旅行を仄めかすも、乗り合わせた飛行機のハイジャックにより、奇しくも人類滅亡の憂き目に生き残ってしまう。。

f:id:lllkyokolll:20180430195325j:plain②マチュー(ローラン・カペリュート)

ハイジャックされた民間機の副操縦士。
責任感が強くワンマンだが、若干気弱な一面も。。
年上の妻との間に子供が生まれず、憂さ晴らしの浮気相手のCAが、後に妊娠していた事を知る。

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain③イネス(アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ)

フランス生まれの垢抜けた現代美少女。
SNSのインフルエンサーとしての知名度もあるが、悲観的な傾向もあり、周囲の思惑に翻弄されやすい。

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain④ヤコブ(―)

航空会社の真面目なメカニック(整備士)で、妊娠中の妻をこよなく愛する、ポーランド生まれの天然ヤサ男。
注意力は鋭いが、メンタルが弱い傾向もあり、気分の浮き沈みが若干激しい。
 

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑤リック(ヤン・ベイヴート)

民間の警備会社職員。
正義感の強い敬虔なカトリック信者だが、臆病で日和見がちな一面も。。
厳格で病気がちな母と二人暮らしの、寂しい中年独身貴族。

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑥ローラ(―)

ヴォルコフに雇われていた専属看護婦。
偏見や差別が嫌いで、上から目線のオトコには強い反発をみせる。
若干口うるさくも、ホスピタリティに溢れている。
 

f:id:lllkyokolll:20180430195133j:plain⑦アヤズ(マフメット・クルトゥルス)

トルコ系のビジネスマン。
目的の為なら手段を選ばない愛国者だが、行動力は人一倍。
イスラム教だけでなく仏教にも精通し、子供好きな一面も。。

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑧ホルスト(―)

Wifiの修理から気候学まで精通する、知識豊富なITエンジニア。
無宗教の超現実主義者だが、咄嗟の思いやりも忘れない。
 

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑨オスマン(ナビル・マラット)

モロッコ系移民の空港清掃員。
無口で無骨なイスラム教徒だが、冷静沈着で頼りがいもある。

 

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑩ザラ(―)

無償の愛を息子のドミニクに捧ぐロシア人の母。
頑固で融通の利かない一面もあるが、貧困層の弱者目線からの価値観で、冷静に人の本質を見極められる。
 
 

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑪ガブリエル(アストリッド・ウェットネル)

3人の子供を持つ、気品溢れるキャビンアテンダント。
品行方正で冷静さを失わない判断力が、彼女の運命に影響を及ぼしていく。。
 

f:id:maribu1125:20180430221209j:plain⑫テレンツィオ(ステファノ・カセッティ)

NATO軍少佐で、ハイジャックをしてベルギーを脱出する。
信念の薄いネオコン気質だが、自尊心が高く若い女の誘惑に弱い。


 

 

Into the Night04

 『イントゥ・ザ・ナイト』の注目ポイント

ソーシャルディスタンス?リモートワーク?

そんな理想論が通用する職場は、ごく限られたトコロにしか存在しない。

介護、医療、飲食を始めとした大多数の現場は、街を歩けば即DQN扱いされる馬鹿げた報道の裏で、ウィルスよりもその恐怖に汚染された人々と向き合う真っ只中。

 

だけど、この知らない他人との物理的な触れ合いこそが、全人類を不安の陰に覆いつくす何かを解決するキッカケになる気がしてるのは、自分だけでしょうか? 

 

先史時代から続くウィルスの影響下で、皮肉にも、無機質なディストピアがやってきた今、そんな漠然とした恐怖の魔の手に打ち勝つ唯一の方法は、ポスト・アポカリプスドラマに見る、個ではなく集団として生き抜いてきた、その本来の人間性の回帰。

そんな中、『秘密のケンミンSHOW』さながらに、ユーロ圏それぞれの国の事情を抱えた人々が、極限状態の窮地で繰り広げる密閉空間のドラマは、それだけで見応え十分。

例えば、

一人気ままに自由を満喫しまくる垢抜けたフレンチ美女が、SNSを手放した瞬間から、不意に孤独の不安に襲われたり。。

例えば、、

歴史と宗教の対立上、未だにEUに加盟出来ないトルコ人男が、同じく何となく疎外感満載のロシアンシングルマザーと、いつの間にか分かりあえていったり。。。

 

コロナとポールシフトという、同じ目に見えない恐怖に晒された人類という設定上、その困難を乗り越える為に、対立と協力を繰り返していくその様子は、なんだかリアルタイムに胸にグッときます。

 

救助のない閉そく感の最中で、利己と利他のせめぎ合いから生まれてくる矛盾。。

ここにきっちりテーマを置きながら、カットバックで人物の回想シーンを入れ込む演出は、死生観を問う伝説の難解サスペンスドラマ『LOST』の手法にもそっくり。

 

アポカリプスドラマフリークを勝手に自称する自分にとっても、『ストレイン』よりグロくなく、『ザ・ラストシップ』より嘘くさが薄れ、『ザ・レイン』よりも難局に立ち向かう人間同士の絆が、単純な見せかけの恐怖なんかよりも、きっちりと描かれている脚本力は、最近のSFドラマの中でもダントツにアタマ一つ抜きん出ている気がしてます。(『ウォーキング・デッド』の様な安っぽいポリコレで、安易なLGBTキャラにイメチェンしたりしてこないし。。)

 

シーズン2らは、いよいよアメリカやイギリス人等、大国資本主義国家の影がチラつく絶妙なクライマックスを迎えますが、敢えて彼らの陰謀にアンチテーゼを唱えそうな臭いがプンプンする、結束したユーロ民の底力にも是非大注目です!

 

『イントゥ・ザ・ナイト』Netflixで観賞できます。 

www.netflix.com

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