マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』の私的な感想―夜の街に詰め込まれた人間模様―

Night on Earth01

Night on Earth/1991(アメリカ)/129分
監督/脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ウィノナ・ライダー、アーミン・ミューラー=スタール、 ベアトリス・ダル、ロベルト・ベニーニ、マッティ・ペロンパー他

 奇妙で優しいジャームッシュの世界

人恋しい夜には、この映画の事をそっと思い出してみる。

トム・ウェイツの濁声から始まるこの物語は、万人の寂しがり屋へ向けた極上のバラードだ。

 

ロス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキと、世界中の同じ夜、同じ時間のタクシーの中で巻き起こる群像劇は、どれもノイジーだが、丁度いい塩梅のブラックジョークが効いている。

東欧移民とスラム黒人とのアンサンブル、鋭い盲目の女と鈍いコートジボワール人男とのかけあい、おしゃまなウィノナ・ライダーの魅力も格別だが、私的には、酔いどれ3人組を拾う北欧のエピソードが一番のお気に入りだ。

 

・・他人との触れ合いにそろそろ飢え始めてきた方は、この奇妙で独特だが少しだけ優しいジャームッシュの世界に、ちょっとだけ迷い込んでみてみませんか・・・?

 

 

 

 

 

あらすじ
ジム・ジャームッシュ監督によるオムニバス映画。ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの同じ夜を舞台に、タクシー運転手と乗客の間に起こった5つの出来事を描く。
Filmarksより抜粋

Night on Earth02

 夜の街に詰め込まれた顔

余談だけど、自分は夜の街が結構好きだ。

それも、夜明け前の閑古鳥が鳴くようなあの瞬間。

人影まばらな街を虚ろに歩く人達を、空ろなアタマで遠巻きに見守るだけで、何故だか無性に愛おしく思えてくる。

 

そういう普遍的なシンパシーを映像で呼び起こす能力に、ジャームッシュは極めて長けている。

 

ダウナー系映画監督の頂点に君臨するかのように言われる彼には、ほんのり残り香の様に香る温もりが必ずある。

ビバリーヒルズへ向かう鼻持ちならない淑女には、本当の女の逞しさを。
ブルックリンへ帰る黒人“ヨーヨー”と運転手“ヘルメット”の間には、ふとした情けを。

パリの盲目女とローマの小うるさい運転手には、ウィットに富んだ嫌みを利かせながらも、邪険にされがちなマイノリティーな者の、意外な強さと儚さが伺える。

北欧の寒々しい街並みを走り抜けるラストのエピソードは、不満だらけの社会で健気に生きる日本人にはピッタリ。

誰もが胸に秘める僅かな蟠りが、きっちりと凝縮されている。

 

この短くまとめられた5つの短編に、ストーリー上の接点はない。

登場する全ての人間達が、不器用で容量が悪く、少しだけ孤独を背負いこんでいる事だけを除けば。。

 

ロードムービーテイストの多いジャームッシュは、画角を狭くとったフロントガラス越しのワイドスクリーンに、複数の人物の顔を詰め込んだ様に写す

それも、繋がりを忘れ始めた現代人に、僅かな希望を託す万華鏡の様な人間模様と受け取れれば、彼を代表するアナキストのホンネに、ほんのちょっとだけ近づけるのかもしれない。

 

「ナイト・オン・ザ・プラネット」
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