マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

アジア映画

映画『はちどり』の私的な感想―愛のない世界で叫ぶ少女―(ネタバレあり)

벌새/House of Hummingbird/2020(韓国)/138分 /言葉に出来ない想い /言葉に出来ない想いを表現するのが映画だ。 その上で、この作品ほど、文字に起こすのが困難な映画もめったにない。 新進気鋭の女流監督キム・ボラが、その少女期を自叙伝の様に綴っ…

映画『STOP』の私的な感想―原発事故がもたらしたもの。被災者の怒りと覚悟―

스톱/2015(韓国)/82分 /忘れる事 / 忘却にバイアスを傾けないと、やってられない事はごまんとある。 世界中を、目に見えない不安に陥れる新型コロナの恐怖でもそうだ。 あらゆる手段を尽くしても、その閉塞感を拭い去れなくなった時に、人はその話題を…

映画『パラサイト 半地下の家族』の私的な感想―アジア映画初のオスカーの快挙!寿石(スソク)に込められた人の品格と染みついた貧乏の臭い―(ネタバレあり)

기생충/2019(韓国)/132分 /ジャンルに縛られない映画 / メイヤーの法則というものがある。 これは、“事態を複雑にするのは単純だが、単純にするのは複雑な作業である”という一種の哲学だ。 映画もこの法則の類に漏れず、監督の伝えたい事を単純化する…

映画『嘆きのピエタ』の私的な感想―聖母マリアの憎しみから生まれるもの―

피에타/2012(韓国)/104分 /底辺で喘ぐ者 貧乏に理由なんてない。 冒頭からいきなりそんな事を言ってしまうと、なんだか身も蓋もないけど、この映画を見る時は、それぐらいの心構えが必要。 。 日韓関係が露骨に悪化する中で、今更こんな映画に手を出す…

映画『ホテル・ムンバイ』の私的な感想―神無き街を救う神―

Hotel Mumbai/2019(オーストラリア/インド/アメリカ)/123分 /アラブとインド人の違い なんだか『バイオハザード』の様な、サブタイを勝手に付けてみたけど。。 緊張感を高ぶらせる演出が頗るうまい。 ホテルに集まったブルジョア階級の外国人たちのそ…

映画『十年』の私的な感想―香港デモから見る近未来のディストピア―(ネタバレあり)

TEN YEARS/2015(香港)/104分 /香港の真意 最近、遠い昔の記憶を掘り起こす為にも、巷で評判の中田敦彦のYouTube大学を見始めた。 やっぱり、あっちゃんは相変わらずかっこいーw これまで表層的だった歴史や政治、或いは宗教の知識なんかまでまとめて、…

映画『娑婆訶(サバハ)』の私的な感想―ヘロデ王の虐殺に準えた宗教戦争と人の祈り―(ネタバレあり)

사바하/SVAHA : THE SIXTH FINGER/2019(韓国)/123分 /ヘロデ王の大虐殺 /『コクソン』の二番煎じかと思い身構えてしまった自分が恥ずかしくなる程、純粋でストレートな思いをぶちまけた映画だ。 “サバハ”だか“バサラ”だかよくわからないこの手の単語…

映画『迫り来る嵐』の私的な感想―香港返還の裏を描いたアジアン・ノワール―

暴雪将至/THE LOOMING STORM/2018(中国)/119分 /現実と妄想が交差するノワール /重苦しいテーマの映画は随分見てきたつもりだが、今回のは結構堪える。 腹の底に染み入ってくるかのようなその冷たさは、社会主義国家の底辺で蠢く人達の地鳴りの様な叫…

映画『バーニング』の私的な感想―村上文学で「僕」が抱えていた事―(ネタバレあり)

Burning/2018(韓国)/148分 /韓国人の感情 /エンドロールが流れた瞬間、唸ってしまった作品はかなり久しぶりだ。 村上春樹の世界にどっぷりハマっていたあの頃を、懐かしく思い出す。。 低迷を続ける『ウォーキング・デッド』から、結果だいぶ上手く卒…

映画『パリ、ただよう花』の私的な感想―揺れ動く情動。セックスで求めあうもの―

Love and Bruises/2011(フランス/中国)/105分 / 完全に自立していく女 /夢を見させてくれる反面、残酷な現実を容赦なく突きつけてくるのも映画の醍醐味だ。 フランス映画のシェードに覆われ情緒的に描かれてはいるが、セックスシーン満載のこの作品の…

映画『私の少女』の私的な感想―社会に抗うオンナたちの生き様―

도희야/2016(日本)/119分 /韓国社会の田舎の現実 /韓国映画の単純なストーリー展開には、あまり理解できない描写が結構ある。 主人公は何かしらの因果を抱え、人は直ぐに裏切り、何よりもあっという間に人が殺されていく。 そんな歴然とした勧善懲悪の…

映画『唐山大地震』の私的な感想― 震災の日から続く家族の絆―

唐山大地震/2010(中国)/135分/ /震災が起きた時に自分たちに出来るコト /2018年9月6日午前3時8分に発生した北海道胆振東部地震に対し、自分に何か出来ないかいろいろ考えてみたが、映像業界に生まれ育った自分に結局今出来る事は映画を通じてそれ…

映画『青いパパイヤの香り』の私的な感想―ベトナム映画に観る釈迦の悟り―(ネタバレあり)

L'odeur de la papaye verte/1993(ベトナム/フランス) / アジア料理が好きになったきっかけの映画かもしれません。 使用人としてベトナムの裕福な音楽一家の下で働き始める無口なムイの手料理。 劇中では随分この料理をする描写が多いですが、それに比…

映画『悪い女』の私的な感想―女たちが辿り着いた友情の先にあるもの―

파란 대문/1998(韓国) /奇才キム・ギドク監督が後にヒットさせた『悪い男』と相対的にこの邦題がつけられた映画の本当の原題は『青い門』 確かに劇中でも印象的にこの門は写されていますが、相乗効果を狙った配給会社の思惑を差し引いても、中々にセンス…

映画『哭声/コクソン』の私的な感想―福音書に準えた韓国発のアルマゲドン―(ネタバレあり)

곡성(哭聲)/2016(韓国) /冒頭にルカによる福音書のインタータイトルが出てきた時点で、なんか嫌な予感がしてたんですが・・ ダーレン・アロノフスキー監督の映画『mother!』の韓国版かとも思ったんですが、この作品は更にその上をいく難解ぶり。。。 …

アジアの美人女優を集めたオススメ映画5選。ノーメイクでも圧倒的にかわいい!

・・気分が沈んだ時は、アジアのナチュラルな美女たちで癒されてみませんか? ハリウッド的な整形美女やルーシー・リュー、マギー・Q達のようなアクション系東洋人スターは外し、今回、自分が選んだ映画は広いアジアの中でも日本人が親近感を持てる極東アジ…

映画『トンネル/闇に鎖された男』の私的な感想―韓国社会を皮肉る悲劇―

Tunnel/2016(韓国) /韓国映画らしい人間味に溢れたスリラー映画です。 閉じ込められる系のシチュエーションスリラーは、棺桶に閉じ込められた男のスペイン映画『リミット』(2010)や、実際に起きたチリの鉱山落盤事故を描いた『チリ33人 希望の軌跡』(…

映画『殺人の追憶』の私的な感想―歴史的未解決事件を基にしたサスペンス―

살인의 추억/2003(韓国) /実在した事件をモチーフにした映画の中で、こんなにも不条理な映画は珍しい気がします。 大量殺人鬼を題材にした映画では、ジャック・ザ・リッパーの半生を描いた『フロム・ヘル』等が有名ですが、東洋近代史の中で未解決のまま…

映画『息もできない』の私的な感想―連鎖する暴力―

똥파리/2009(韓国) /シバルラマ 久々に邦題がしっくりくる映画です。 原題の『똥파리』(トンパリ)とは「クソバエ」を意味する罵倒語らしいですが、そんなかわいい表現じゃ表しきれないくらい、本編は終始、怒りに満ち溢れています。 正に『息もできな…

映画『花様年華』の私的な感想―圧倒的な色彩美―

花样年华(かようねんか)/2000(香港) /この映画はもう美しすぎるとしか言い様がありません。 古い時代の上海を連想させる建物、食堂に燻る紫煙の煙、梅林茂の情緒的な「夢二」のテーマソング、レトロでモダンなマギー・チャンのチャイナドレス。 そんな…

映画『悪い男』の私的な感想―歪んだ愛情の果てに、二人が辿り着く先は―

나쁜 남자/2001(韓国) /この映画は本当にヒトに進めていいんでしょうか? 多分この主人公に共感出来るヒトなんて、ごく一部もいないでしょう。 というより、 大多数のヒトが理解し難い究極のラブストーリーなような気がします。 なので、あえてこのブロ…

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