マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

クライム

映画『レ・ミゼラブル』の私的な感想―怒りのクラスター連鎖は何を生むのか?―

Les Misèrables/2020(フランス)/104分 /怒りのクラスター連鎖 / 新型コロナの爆発的な感染力が広がりをみせる中で、世界中に広がる不安。 テレビを付ければ、そんな対応の遅れを取った日本政府に対し、浅はかな予備知識と貧困な想像力をひけらかすメデ…

映画『テッド・バンディ』の私的な感想―史上最悪の殺人鬼を愛した3人の女―

Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile/2019(アメリカ)/109分 /殺人鬼を愛した二人の女 / こんな事を言うと大分誤解を受けてしまうだろうけど、劇中に登場する女達には酷く共感出来てしまう。 ミステリアスな男に、女は何時の世も後ろ髪を引かれ…

映画『アイリッシュマン』の私的な感想―ギャングスターのリアルな不条理の世界―

The Irishman/2019(アメリカ)/209分 /アイロニカルなジョーク / マーベル映画を侮蔑した発言で批判を浴びた、マーティン・スコセッシの気持ちはよく分かる。 カラフルでスタイリッシュに彩られた刺激的なスクリーンの中では、彼らが映画に残したかった…

映画『楽園』の私的な感想―実話に基く日本の闇、現代に蘇る津山事件の真の恐怖―

Rakuen/2019(日本)/129分 /観念的に感じる恐怖 主観のない映画は胸に響かない。 それは傍観者の観客との距離感が、どうしても縮まってこないから。。 言い換えれば、ビジネス脳的な俯瞰で世界を見渡すと、世の中の危険性はだいぶ薄まるが、その分、相手…

映画『ホテル・ムンバイ』の私的な感想―神無き街を救う神―

Hotel Mumbai/2019(オーストラリア/インド/アメリカ)/123分 /アラブとインド人の違い なんだか『バイオハザード』の様な、サブタイを勝手に付けてみたけど。。 緊張感を高ぶらせる演出が頗るうまい。 ホテルに集まったブルジョア階級の外国人たちのそ…

映画『十年』の私的な感想―香港デモから見る近未来のディストピア―(ネタバレあり)

TEN YEARS/2015(香港)/104分 /香港の真意 最近、遠い昔の記憶を掘り起こす為にも、巷で評判の中田敦彦のYouTube大学を見始めた。 やっぱり、あっちゃんは相変わらずかっこいーw これまで表層的だった歴史や政治、或いは宗教の知識なんかまでまとめて、…

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の私的な感想―歴史を塗り替えるタランティーノの流儀―(ネタバレあり)

Once Upon a Time in Hollywood/2019(イギリス、アメリカ)/161分 /歴史に消えた悲劇への鎮魂歌 /遊びの過ぎるタランティーノ映画はあんまり得意じゃない。 けれど、彼ほど映画界をまるごと愛してやまない熱狂的なオタクも、そうはいない。。 ブラピに…

映画『存在のない子供たち』の私的な感想―現実のシリア難民が最期に零す笑顔―

Capharnaum/2011(レバノン)/125分 /シリア内戦下の難民の実態 /大昔、女性に言われた台詞がある。 「人は、誰かに愛されたいから、誰かを必死に愛するのよ」 久しぶりの映画館で観たこの映画の間、そんな言葉が終始、頭の中を駆け巡っていた。

映画『恋の罪』の私的な感想―東電OL殺人事件に捧ぐ雨の鎮魂歌―

Guilty of Romance/2011(日本)/144分 /渋谷の魔力 /やけに雨が印象的に残る映画だ。 まるで見えない人の何かを洗い流すかのように・・ 四半世紀近く経ってしまったが、この映画のベースとなった未解決事件は、ちょっと忘れられない。。 東電OL殺人事件…

映画『新聞記者』の私的な感想―地上波では放送できない不都合な真実―

Journalist/2019(日本)/113分 /全国公開に漕ぎつけたポリティカル映画 /日本人はとにかく政治に疎い。 そんな中、ローバジェットな皮肉めいた作品ではなく、全国公開でこの手のどストレートなポリティカル映画がようやく日本でも日の目を見れた事は、…

映画『運び屋』の私的な感想―老いを受け入れたイーストウッドが最期に辿り着いたもの―

The Mule/2018(アメリカ)/116分 /クリント・イーストウッドの告解 /破天荒に生きてきた人間ほど、その人生の最期を上手く締めくくろうとする。 それが贖罪の意識からくる懺悔なのは明白だが、とうとう往年の名優にして偉大な監督としての功績も上げて…

映画『ウトヤ島、7月22日』の私的な感想―史上最大の殺戮劇をワンカットで撮る意味―

Utøya 22. juli/2018(ノルウェー)/90分 /テロ事件を映像化する難しさ /この手の映画を観るには相当の気合がいる。 現に自分も一人では勇気が出せず、連れに付き合ってもらって観賞した。 77人の犠牲者と300人以上の負傷者を出したこの歴史上類を見ない…

映画『フェイク』の私的な感想―実話を元にしたオールドファッションタイプの男達の絆―

Donnie Brasco/1997(アメリカ)/126分 /どこにでもいる家庭的なイタリアンマフィア /・・映画紹介も1年を超えてきたので、これまで恐れ多過ぎて感想さえ手が出せなかった、アル・パチーノ映画をそろそろ。。 愚行を繰り返すがあまり、とうとうディズニ…

映画『迫り来る嵐』の私的な感想―香港返還の裏を描いたアジアン・ノワール―

暴雪将至/THE LOOMING STORM/2018(中国)/119分 /現実と妄想が交差するノワール /重苦しいテーマの映画は随分見てきたつもりだが、今回のは結構堪える。 腹の底に染み入ってくるかのようなその冷たさは、社会主義国家の底辺で蠢く人達の地鳴りの様な叫…

映画『渇き。』の私的な感想―加奈子は天使なのか悪魔なのか?―(ネタバレあり)

World of Kanako/2014(日本)/118分 /歪なカタチの執念 /クリスマス・イブの夜から始まるこの物語は、寒い冬場に観ると少し胸が痛くなる。 ホラー映画としては少々トリッキー過ぎた中島監督の『来る』を観て、彼の本質にあるのは、やっぱりハンパない人…

映画『ボーダーライン』の私的な感想―無法地帯の現実と心の境界線―

Sicario/2015(アメリカ)/121分 /画になる俳優陣の存在感 /続編となる『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』の公開を明日に控え。再度見返して見た。 圧倒的にシュールな質感の中でも、 エミリー・ブラントとベニチオ・デル・トロの存在感は一際抜きん…

映画『ウインド・リバー』の私的な感想―インディアン社会からの悲鳴―

Wind River/2017(アメリカ) / 静かに訴え続ける民族差別 /キャスリン・ビグローが『デトロイト』で暴いた黒人差別の実態を“動”とするならば、正にその対となるのがこの作品。 ドゥニ・ヴィルヌーヴの『ボーダーライン』で脚本家を務めていたテイラー・…

映画『15時17分、パリ行き』の私的な感想―イーストウッドの更なる試み―(ネタバレあり)

THE 15:17 TO PARIS/2017(アメリカ) /イーストウッドの更なる試み 斬新な試みの中にもどこか懐かしさを感じさせる作品でした。 誇張された演出もなく殆どドキュメントの様に、2015年にフランスで実際に起きたタリス銃乱射事件の舞台裏を、あろうことか、…

映画『デトロイト』の私的な感想―アメリカの深い闇、真実を追う記録映画―

Detroit/2017(アメリカ) 『タイタニック』や『アバター』等で知られる巨匠・ジェームス・キャメロンの前妻にして、80年代にはGAPの広告塔まで務めた高身長のアメリカを代表する女流監督と言えばこの作品を手掛けたキャスリン・ビグロー。 余りにエネルギ…

映画『DISTANCE/ディスタンス』の私的な感想―オウムの闇を背負う者たち―

DISTANCE/2001(日本) /私的にはこの映画が一番是枝監督らしい作品な気がします。 ドキュメンタリー出身の彼が日本の社会問題に初めて疑問を抱いたのは、実は地下鉄サリン事件。 平成の犯罪史上類を見ないあの事件の事は未だに記憶に新しいですが、この映…

映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の私的な感想―暗躍するアメリカ国家の陰謀―

The Post/2017(アメリカ) /スピルバーグwithトム・ハンクスってもう何度目でしたっけ? 『プライベート・ライアン』は面白かったんですけど、それ以外はどうもあまりピンときません。 脚本は『スポットライト 世紀のスクープ』のジョシュ・シンガーらし…

映画『殺人の追憶』の私的な感想―歴史的未解決事件を基にしたサスペンス―

살인의 추억/2003(韓国) /実在した事件をモチーフにした映画の中で、こんなにも不条理な映画は珍しい気がします。 大量殺人鬼を題材にした映画では、ジャック・ザ・リッパーの半生を描いた『フロム・ヘル』等が有名ですが、東洋近代史の中で未解決のまま…

映画『クヒオ大佐』の私的な感想―実在した天才詐欺師の半生―

クヒオ大佐/2009(日本) /70年代から90年代にかけて、総額1億円以上を騙し取った天才詐欺師「ジョナサン・エリザベス・クヒオ」をモデルにしたこの作品は、史実をベースにその当時の被害者の女性達の心情や、クヒオ大佐自身の心の葛藤等を独特な吉田ワー…

映画『スリーパーズ』の私的な感想―ベーコン指数も納得。名俳優達の夢の競演―

SLEEPERS/1996(アメリカ) / 豪華キャスト陣の夢の競演作品 この作品は興奮しました。 元々クライム映画は緊張感があり大好物ですが、この作品はまず何よりこの豪華俳優陣の夢の競演に、思わずうっとりしてしまいます。 アラフォー世代にとっては正によだ…

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