マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『花様年華』の私的な感想―圧倒的な色彩美―

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花样年华(かようねんか)/2000(香港)/98分
監督: ウォン・カーウァイ/撮影:クリストファー・ドイル
出演:トニー・レオン、マギー・チャン

 圧倒的な色彩美

自分がウォン・カーウァイを知ったのは丁度20年前。

当時映像業界で駆け出しだった自分が、ある作品で外国人キャメラマンの通訳をさせて頂いた時です。

監督は殆ど素人、俳優達はまだ当時アイドル全盛期の少女達で、そんな事もあってか自分が付いていたキャメラマンは撮影中も終始二日酔い状態。。

まあ、日本の訳の分からない映画に何かの手違いで参加してしまって、仕方なく撮っているのだろうぐらいに自分は思っていました。

しかし撮影終了後、白完パケ(画と音のみが繋がっていて、MA等音響効果がなされていない素材)を作る為、撮済みの素材を現像所でちょっと覗いてみたら・・

正に鳥肌が立つほどの圧倒的な色彩美。。。

台詞も音楽も入っていない只の映像素材であそこまで感動したのは、それが初めてでした。

あまりの衝撃にそのキャメラマンをちゃんと調べてみたら、その彼がクリストファー・ドイルというこの作品の監督ウォン・カーウァイのキャメラマンだという事。。

大分自慢げに脱線しましたが・・

それから漁るようにこの監督の作品を全て観倒した結果、やはり彼の作品の真骨頂は、緻密で濃厚なその脚本もさる事ながら、それがドイルの芸術的な色彩感覚のカメラワークと融合した際に最大の魅力を発揮すると、今でも自分は勝手に思っています。
 

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(C)2000, 2009 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.
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―――1962年、香港。
二組の夫婦が同じアパートの隣同士に引っ越してくるところから物語は始まります。
日本人の夫を持つチャンと、出版社で働くチャウ。
それぞれの連れ合いは仕事で不在がちで、彼らは狭いアパートの廊下で、小雨の降る表の階段で幾度となくすれ違う。
やがてお互いのパートナーの不倫が発覚した事から、二人は少しずつその距離を縮めてゆくが・・

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  甘美で切ない純愛

この映画はもう美しすぎるとしか言い様がありません。

古い時代の上海を連想させる建物、食堂に燻る紫煙の煙、梅林茂の情緒的な「夢二」のテーマソング、レトロでモダンなマギー・チャンのチャイナドレス。

そんな古き時代のハイセンスなもの全てを印象的なカメラワークと色彩美で捉え、禁断の関係で惹かれ合う男女の恋心を淡々と描写していきます。

何気ない日常の様子にはスローモーションを使い、少しずつ距離が近づいていくお互いの関係性はその二人の足元や指先のカットで描写し、繊細な心の機微を表現した恋愛映画としてはこの作品は間違いなく最高峰と言えるでしょう。

更に映像美だけでなく、切ない恋模様を描くトニー・レオンとマギー・チャンの演技力も絶妙。

二人はそれぞれカンヌ国際映画祭で男優賞と、香港のアカデミー賞と言われる香港電影金像奨最優秀主演女優賞等、数々の映画賞を受賞しましたが、自分が特に強い印象を持ったのはマギー・チャン

大正浪漫全盛期の鹿鳴館の貴婦人のような髪型のせいか、自分にはどこか彼女が日本人ぽく感じてしまいました。

頑なに一線は越えず、それでも抑えきれない恋心を必死に内に秘める様子は、昭和の大和撫子を彷彿とさせる古い時代の日本人妻の様。

 設定としては『昼顔』と大差ないはずなんですが、自分にとってこの作品がちょっと他とは別格に感じてしまったのは、まだどこかで純潔で凛とした健気な昭和の女性像を夢描いてしまっているからなんでしょうか・・?

 

『花様年華』は以下のVODで観賞できます。

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