Darkest Hour/2017(イギリス)/125分
監督: ジョー・ライト
主演:ゲイリー・オールドマン/ベン・メンデルソーン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ
ゲイリー・オールドマンの集大成
重厚で質感の高い映画でした。
『シェイプ・オブ・ウォーター』にまだ手が出せていない自分にとっては、この映画に前回のアカデミー賞を全て与えたい気がします。
だってゲイリー・オールドマンですから。
公言しますが、自分は彼が世界最高の俳優だと信じて疑いません。
公開直前!ゲイリー・オールドマン主演映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』 90秒で分かる特別映像解禁
カメレオン俳優の頂点。『シド・アンド・ナンシー』で衝撃が走った男。
もう殆どジャニーズの追っかけの様に、ゲイリーを愛してやみません。
そんな彼が・・、
ようやく、
遂に、
やっと、
主役として日の目を浴びた記念すべき作品です。
感慨深過ぎて、劇場では涙が止まりませんでした。
辻一弘じゃありませんが、彼は栄冠を手にするのがちょっと遅すぎでした。
今回はそんなゲイリー・オールドマン狂の、ゲイリー・オールドマン賛辞しかない大分偏った感想ですのでご了承ください。
―――第二次世界大戦初期の1940年、ナチス・ドイツの電撃作戦「西方戦役」により、ヨーロッパ全土には暗雲が立ち込めていた。
オランダ、ベルギーは彼らに侵攻を許し、フランスは陥落寸前。
ヒトラーのイギリス本土侵略はもう目前で、混迷を極めたイギリス国会は「ミュンヘン協定」の宥和政策により、ドイツに軍備を整える隙を与えてしまった弱腰なネヴィル・チェンバレン首相に代わる後任候補を探していた。
そんな折に白羽の矢が立ったのがウィンストン・チャーチル。
ダンケルクでは英仏軍が壊滅の窮地に追い込まれる中、野党も含めた政党一致を目指していた議会によって推挙されたこの"政界一の嫌われ者"に、全ての世界の運命をかけた判断が託される・・
ウィンストン・チャーチルとは?
まずゲイリー・オールドマンの名演を称える前に、日本人にはちょっと疎いこの”ウィンストン・チャーチル”自体の人となりをwikipediaからの抜粋の要約で紹介してみようかと。
ウィンストン・チャーチルは、イギリスの政治家ランドルフ・チャーチル卿の長男として、1874年にオックスフォードシャー州に生まれます。
幼少期から政界と社交界での活動が忙しかった彼の両親は、チャーチルの面倒の殆ど全てを乳母エリザベス・エヴェレストに任せます。
その後、アイルランド総督に任命された祖父らと共にダブリンに移住した彼はその地でも乳母の後をついて回る甘えっ子。
学校での成績は極めて悪く殆ど落第生だったチャーチルですが、18歳の時にサンドハースト王立陸軍士官学校の入試を三度目にようやく合格。
それまで悩まされていた数学や古典の教科が無くなったことにより、地形学、戦略、戦術、地図、戦史、軍法、軍政等に関心を強めていきます。
しかし父が45歳の時に梅毒にかかり死去。
後にチャーチルは「父と同志になりたいという夢、つまり議会入りして父の傍らで父を助けたいという夢は終わった。私に残された道は父の思い出を大切にし、父の意志を継ぐことだけだった」と書き記しています。
同年7月には敬愛していた乳母エヴェレストも死去し、その孤独は深まります。
21歳の時には軍人として初めてスペインに赴任し、その地で勇敢に立ち向かうスペイン軍人たちの姿に傾倒。
その後、インド、スーダン等にも赴任しますが、元々体が弱かったこともあり大した戦功はたてられないまま25歳の時に軍を除隊します。
武功は上げられなかったチャーチルですが、赴任先の地で小遣い稼ぎの為に書いた『マラカンド野戦軍物語』や『サヴロラ』等の小説は好評で、この事をキッカケに文筆で生計を立てるべく庶民院(下院)議員補欠選挙に保守党候補と立候補。
しかし前のめり過ぎる性格が仇となり、数々の失言で”変節者”のレッテルを張られてあえなく落選。
その後、『モーニング・ポスト』の民間ジャーナリストとして第2次ボーア戦争に従軍し、その敵地からの脱出劇を成功させた事でようやく彼にも運が向き始めます。
戦勝ムードの中、保守党公認候補として庶民院議員でようやく次点当選を果たした彼は、その独特な文才と雄弁な演説で、異端児としてイギリス議会の中で徐々に頭角を現していきます。
wikipediaより抜粋
チャーチルの悲哀
ウィンストン・チャーチル自体の政治論はさておき、やっぱり一番に注目してもらいたいのは、、
ちょっと長めに紹介してしまったこの彼の半生が、ゲイリー・オールドマンの演技に全て表現されているというコト。。
もう天才という以外に言葉が見つかりません。
その後のチャーチルの議員人生も実は決して順風満帆だったわけではなく、むしろ無謀な政策と偏り過ぎた信念により糾弾と罷免の連続。
その原点が、少年期の彼の父親の死に結びついている事は否めませんが、ゲイリー演じるチャーチルにはそんな悲哀が満ち溢れています。
やがて年を追うごとにその偏屈度合いは増していき、そんな彼の象徴的な心理描写は冒頭に登場する秘書との辛辣な掛け合い。
回りを政敵に囲まれ孤独な議会との戦いを繰り広げていく様では、チャーチルのどもり癖をゲイリーが忠実に再現していて、彼の目線、表情、葉巻の吸い方一つにもその老害ぶりが滲み出ています。
けれど、それでいてチャーチルがどこか愛おしく感じられるのは、年老いた妻クレメンタインへの偏愛ぶり。
まるで幼少期の乳母、エヴェレストへの想いを投射しているかのような子犬の様なチャーチルの目は、もう正にゲイリーにしか出来ない芸当でしょう。
チャーチルの人間模様
映画としても非常にクオリティの高いこの作品の見所は、何と言ってもダンケルクの救出作戦に向けての彼の強固な意志決定。
戦時下に置いてチャーチルが非情ともいえるこの判断をしていく時には敢えてのサイレント描写を使い、気持ちを押し殺しながら長く秘書と対峙するシーンは見ている側の方が苦しくなってきます。
けれど、戦争モノだからといって全面的に重苦しいわけでもなく、チャーチルが車で街を走る際の人々の様子、記者団とのやりとりで登場するピースサインのエピソード等はけっこうポップでシニカル。(裏ピースは創作ですが)
後に友好を深めることになる、彼を首相に任命した国王ジョージ6世とのツーショットは、それまで全くの孤独だったチャーチルにとって少し心温まるシーンです。
チャーチルの判断
結局、戦勝国となった事で英雄として祭り上げられたチャーチルですが、彼の判断は本当に正しかったんでしょうか?
同じ世界大戦中、一億総玉砕を謳った日本の東条英機なんかは、敗戦後A級戦犯として絞首刑にされているのでこの答えはやっぱり紙一重な気がします。
しかし当時のヨーロッパ戦線において、この頑ななまでの彼の決断がタイトルにもある通り、ナチス・ヒトラーの脅威から世界を救った事もまた事実。
エンドロール前に流れるチャーチルの台詞、
「成功も失敗も終わりではない。肝心なのは続ける勇気だ。」
この言葉に、その後失脚することになる彼の危うさ、切なさ、実直さが全て詰まっています。
映画自体もこの皮肉を安易なヒロイズムとして描いているのではなく、チャーチルの人間性そのものに向き合っている事が一番の成功の原因でしょう。
そしてしつこい様ですが、、
そんな彼の内なる感情を全て表現したゲイリー・オールドマンの演技力は、本当に素晴らしい。
更に、その彼の迫真の名演技を支えたメイクアップが同じ日本人である事に、なんだか変な誇りを持てたとても感慨深い作品でした。
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