マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『ドント・ブリーズ』の私的な感想―侵入者を待ち受ける白濁した瞳の男―

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Don't Breathe/2016(アメリカ)/88分
監督/脚本:フェデ・アルバレス
出演:ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、ダニエル・ゾヴァット、スティーヴン・ラング

 フェデ・アルバレス監督の異才

ルーニー・マーラーの魅力を余すところなく解放したデビット・フィンチャー監督の前作には少々及ばなかったようだが、『蜘蛛の巣を払う女』を監督したフェデ・アルバレスの異才が十二分に発揮された代表作と言えばやっぱりこの作品。

タイトルだけ聴くとなんだか助け声を上げているような響きだけど、“プリーズ”ではなくて“ブリーズ”なので、つまりは“息を殺せ”という中々にアグレッシブなネーミングセンス。

 

執筆中のホラー脚本のネタ元にと様々な恐怖作品を見漁っている中、お気に入りの海外ドラマ『13の理由』で有名になったディラン・ミネットが出演している事もあってこの作品に手を出してみた。

冒頭の数秒で、登場人物たちのキャラクターを見事に表現してる監督のその腕前は実に鮮やか。

更に一辺倒なスリラー映画に見えてしまわない為の工夫も随所に盛り込んでいる。

主人公の女・ロッキーのバックグランドは『デトロイト』でも描かれていた貧しい白人層の実態そのままで、強盗生活の後に貧困生活から抜け出そうとする彼女らの擁護とは言えど、やっぱり憎めなくなってしまう。

そしてそんな彼女が忍び込もうとする家の主が、娘を失った盲目の退役軍人という設定も少々エッジが効いている。

察するに、戦争によるPTSDと失明までしてしまったその古傷も踏まえ、彼は一般人では想像もできない程の強いトラウマを抱えこんでいるわけだ。

更にそんな男が、冒頭から無言で女の髪を掴み上げながら道端を引きずってゆくシーンなんかから始まってしまえば、それはもう間違いなく恐怖心を煽られる。

クレイの頃の雰囲気と何一つ変わらないディラン・ミネットの相棒である主人公、ジェーン・レヴィには、どうしてもハンナの面影を捜してはしまったが・・

 

 

 

 

あらすじ
親と決別し街を出るため逃走資金が必要だったロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスと一緒に、大金を隠し持つと噂される盲目の老人宅に強盗に入る。
だが目は見えないが超人的な聴覚を持つ老人は、どんな“音”も逃さない<異常者>だった。
真っ暗闇の家の中で追い詰められた若者たちは、怪しげな地下室にたどり着く。
そこで目にした衝撃的な光景に、ロッキーの悲鳴が鳴り響く――。
彼らはここから無傷で《脱出》できるのか―。
Filmarksより抜粋

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 逆ホームインベージョン系スリラー

屋敷女』や『サプライズ』に代表されるホームインベージョン系スリラーの醍醐味は、やっぱりその侵入者との心理戦にあるのだが、この作品はそのシチュエーションを全く逆手に取った手法が実に興味深い。

つまり、侵入者ではなくそれと対峙する側の家主の方に狂気が宿っている。

その緊張感を高める演出効果も抜群で、狭い家屋の中を這いずり回るようなカメラワークやビビッドカラーのライティング、そして何と言っても盲目の老人を演じる男の一挙手一投足がかなり不気味。。

いくら慣れ親しんだ自宅とは言えど、白濁した瞳で全くの失明状態にある彼が縦横無尽に家の中を平気で歩き回る様はちょっとツッコミたくなるけど、そこは愛嬌で。。

 

なぜなら彼は失った視覚の代わりに、研ぎ澄まされた嗅覚の持ち主だからだ。

 

ここでようやくタイトルの意味が分かってくるのだが、つまり彼からは正に息を殺さない限り逃げのびる事ができない。。

その銃を片手に迫ってくる常人離れした男の様子はあまりに異形で、さしづめ知性と腕力を兼ねそろえた『ウォーキング・デッド』のウォーカー以上の怖さと言えるだろう。

 

ラストで明らかになる男の秘密には少々納得がいかないものの、地獄の果てまで追ってきそうな彼の愛犬のしつこさも合わせた上で、そのエンドロールが流れる瞬間までビビりっぱなしになってしまうシュールなスリラー映画である事は、まず間違いない。

 

『ドント・ブリーズ』
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