マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第5話の私的な感想―狂王の再来―(ネタバレあり)

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Game of Thrones The Final Season Episode.5/2019~(アメリカ)
製作総指揮:デイヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス
出演:ショーン・ビーン、レナ・ヘディ、ニコライ・コスター=ワルドー、キット・ハリントン、エミリア・クラーク、ピーター・ディンクレイジ他

 未完の原作

甘い夢を見る男と、現実を見据える女。。

長かったGOTの旅路が間もなく終焉を迎えるに従い、人の闇深い本性が次々と露わになっていく。。。

 

米ケーブルテレビ視聴率ランキングでは、国民的人気のアメフトなんかも大きく突き放し、初回から3週連続でダントツ1位の座をキープしてるニュースなんかを見ていると、どうしても後ろ髪を引かれる思いにかられてしまって。。

いきなりゲスキャラ丸出しで登場してきたブロンも、久方の再開を果たしたジョンとトアマンドやサムとの突然の別れも、視聴者からはだいぶ納得がいかない意見も多い中、やっぱりそのすべては、ジョージ・R・R・マーティンが手掛ける原作に対する配慮な気がしている。

 

ウォーキング・デッド』シリーズなんかの場合だと、元々ある原作の設定を尊重した上で、映像化にあたってのパラレルワールドが描けるのだが、91年から執筆を開始しているこの『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作は、そのストーリーラインだけが実写化で先行し、2019年現在、実は未だに未完のまま。。

派生の漫画やゲームの影響で日本では少々誤解を受けやすいが、ファンフィクションを強く毛嫌いする立場を貫く彼のオリジナリティを、いくら製作側が鑑みていたとしても、そろそろ限界なのだろう。

 

けれど、それは逆に考えれば、、、

デイヴィッド・ベニオフ等の製作陣が、如何に原作の世界観を最大限に尊重してきたかの証でもある。

そんな彼らに託したジョージの原案が、このままおざなりにされていくとは到底思えず。。(というか、思いたくない。。)

 

そう考えていくと、一見尺のない中、強引にフェードアウト、或いは雑に描かれたそれぞれのキャラクターにも、まだまだ奥行きが残されているような・・・

 

ヴァリスにまであっという間に広まってしまったジョンの秘密も、裏を読めば、ベイリッシュの教えを忠実に受け継いだサンサの計略。

無慈悲なサーセイにマッドクウィーンの本性をさらけ出し始めたデナーリスも、死亡フラグというよりは、ジョンとの悲哀に満ちたラブストーリーの終焉を予期させてくる。

ユーロン操るスコーピオンによってあっけなく殺されてしまったレイガルも、ちょっとひいき目で観れば、新世紀の栄枯盛衰を表す時代の勃興史とでも言うべきか。。

 

サーセイの影に憑りつかれ続けるジェイミーだけはちょっとストレート過ぎたが、ブライエニーとの間に本当の恋愛が生まれていなければ、視聴者の受けるその侘しさは、或いは半減していたのかもしれない。。

何はともあれ、莫大な予算をかけても、人間の本能が巻き起こす悲劇をここまで追求し続けてきたこのドラマが、このまま中途半端にしてきたキャラをそのまま放置するとはあまり思えない。

スターク家の紋章まで背負い、ジョンと同じように群れから外れて生き延びてきたダイアウルフのゴーストは、その寂し気な背中で最期に誰の元に寄り添っているのだろう・・?

 

シーズン8第4話の感想はコチラ

 

以下、『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第5話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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諸侯に向け、ジョンの持つ王位継承権を支持する手紙をしたためているヴァリス。
ようやくドラゴンストーンへとたどり着いたジョンは、そんなヴァリスからの鉄の玉座に就く事を強く要請されるが・・
ティリオンはそんな二人を悲し気に見つめている。。

やせこけた頬で窓辺に佇むデナーリス。
やがてティリオンがやってきてヴァリスの裏切りを告白すると、彼女はその言葉を遮り、忠誠を誓ったジョンの純粋さに恨みを零す。。
ヴァリスの暗躍を見据え、大本の原因がジョンである事を究明するデナーリス。
そしてその秘密の伝達が、ティリオンの善意を利用したサンサの計略である事も・・・
ティリオンは自分の落ち度を素直に認め、謝罪の言葉を口にするが、二人の空ろな目線は共に宙を舞う・・

数人のアンサリードを連れ、ヴァリスの部屋へとやってくるグレイワーム。
全てを察した彼は、指輪を外し、そのまま何も言わずに付き従ってゆく。。

デナーリスの前に連行されたヴァリスは、自分の謀が危惧である事をティリオンに切に祈りながら、ドロゴンの炎によってあっさりと処刑される。。

ミッサンディの遺品をグレイワームに手渡すデナーリス。
彼は悔しさを滲ませながら、それを暖炉に投げ捨ててしまう。。

ジョンにサンサの真意を告げるデナーリス。
しかし、それでもジョンは女王として彼女を敬おうとするが・・
熱く口づけようとする彼女に、恐れを抱き始めるジョン。
デナーリスはジョンのそんな気持ちを敏感に感じ取り・・・

デナーリスへ、レッドキープへの進軍を尚も思い留まらせようと進言するティリオン。
しかし彼女は人民を盾にしたサーセイの計略に反発。
総攻撃を仕掛ける判断を下すデナーリスは、ティリオンの説く慈悲の姿勢にも僅かに理解を示そうとするが・・
やがてティリオンはデナーリスから、ジェイミーを捕縛した事実を知らされる。。

 

王都へと雪崩れ込んでいく住民達の様子。
ティリオンはダヴォスに取り入って、ジェイミーの居場所を聴きだす。
やがてやってきたアリアとハウンドは、城門の警備をすり抜け・・

ジェイミーにサーセイを説得し、二人で脱出を図るように促すティリオン。
そして彼は王都の降伏の合図として、鐘の音を鳴らし門を開けるようにジェイミーに告げるが。。。

 

決戦の朝。
スコーピオンを構え、戦闘準備を進めるラニスターの兵達。
王都の住民が家に閉じこもろうとする中、アリア、ハウンド、ジェイミー等はそれぞれにサーセイの元を目指す。
城門の前に集結しているゴールデンカンパニー。
対峙するターガリエン軍を率いているのはジョン、ダヴォス、ティリオン。
レッドキープでは、サーセイが腹を据えて戦況を見据えている。。

やがて駆け抜ける風。。

天空から垂直に舞い降りてくるドロゴンに乗るデナーリスは、ユーロンの艦隊に突進してゆく。。。

次々と業火で鉄水軍を沈めてゆくドロゴン。
スコーピオンの矢は成すすべなく次々と炎に包まれてゆく。
やがてレッドキープの城門はドロゴンによって内側から破られ、ゴールデンカンパニーは一瞬で壊滅。
グレイワームを先頭にしたアンサリード、ドスラクの騎馬隊は、一気に王都へと攻め込んでゆく。。

レッドキープでクァイバーンからの報告を受けるサーセイ。
彼女は戦況が一変した中でも、頑なにその場を離れようとはしない。

街中で対峙するラニスター軍とジョン達の義勇軍。
逃げ惑う住民達の目前でドロゴンの低い雄たけびが木霊する。。
敗戦を悟ったラニスターの兵達は、やがて剣を捨て降伏の合図となる鐘を鳴らすが・・

呆然と目を閉じてゆくサーセイ。ジョンは深いため息をつく。
しかし、瓦礫の山と化した王都を歩くティリオンを尻目に、鐘の音が鳴り響く中、ドロゴンに乗るデナーリスはレッドキープへ向け飛び立ち・・・

ラニスターの兵達は住民もろとも焼き尽くされてゆく。。。。

グレイワームの槍を合図に、敗走兵にさえも襲い掛かってゆくデナーリスの軍勢。

ジョンは呆然と立ち尽くす事しかできない。。

ミッサンディを失った悲しみを怒りへと転化させ、鬼神の如く敵を血祭りにあげてゆくグレイワーム。
それに続くアンサリード、ドスラクの騎兵達にも、もはや秩序はない。
街中が火の海に飲み込まれてゆく様子を、固唾を飲み眺めているサーセイ。

レッドキープの入り江に辿り着いたジェイミーを待ち受けていたのは、沈没した鉄水軍から逃げ延びていたユーロン。
彼はジェイミーの怒りを煽り、縺れ合ったまま泥沼の殺し合いへ。。
やがてジェイミーは脇腹を刺されつつも、拾い上げた剣でユーロンの胸を貫く。。

崩れゆく王都を眺めるサーセイの頬を、自然と涙が伝う。
やがてクァイバーンの進言に耳を傾け、マウンテン率いるキングスガードに守られながら彼女は落城を始めてゆく。。

レッドキープの中庭にまで辿り着いていたアリアとハウンドは、崩れてくる王城の様子を眺め、サーセイの敗北を確信する。
それでも彼女への憎しみの炎を消せないアリアに、ハウンドは自分の怒りに満ちたこれまでの半生を曝け出す。。
・・ハウンドに諭され、マウンテンの元へと向かうその彼の背中に、礼を述べるアリア。。

ハウンドとマウンテンの対峙。
心を失くした筈のマウンテンは、サーセイの言葉さえも無視し弟の元へと向かってゆく。
そんな彼を制止しようとして、呆気なく血祭りにあげられるクァイバーン。
サーセイは二人を残し逃げ出してゆく。

ウェスタロス大陸の地図が描かれた中庭で、再会を果たすジェイミーとサーセイ。
少女の様に狼狽えるサーセイを見つけた瞬間に、ジェイミーの殺気は消し飛んでゆく。

崩れゆく王都の中で逃げ惑うアリア。
地面に倒れこんだ彼女に、名もなき住民が手を差し伸べるが・・

マウンテンの怪力によって、次第に追い詰められていくハウンド。
やがてオベリンが受けたように頭蓋骨を粉砕されそうになると、彼は短剣でマウンテンの顔面を貫く。
そのひるんだ瞬間、ハウンドは最期の力を振り絞り・・
彼はマウンテンを道連れに、炎の海と化した王城の下へと落ちてゆく。。

業火に焼き尽くされた街並みを眺め、遂に剣を鞘に戻すジョン・スノウ。
戸惑うダヴォスと二人で彼らは、残った北部同盟の兵を引き連れ退却を始める。

粉塵に塗れ、気を失っているアリア。
彼女は意識を取り戻すと、自分に手を差し伸べた住民達を救い出そうと王都からの脱出を試みるが・・
ドロゴンが迫りくる中、思わず手を放してしまった彼らは、そのまま爆炎に飲み込まれてゆく・・・

 

レッドキープの地下までやってきたサーセイとジェイミー。
しかし二人が逃げ出そうとしていた抜け道は、瓦礫の山に閉ざされそれ以上進めない。
やがて半狂乱になるサーセイをきつく抱きしめるジェイミーは、崩れゆく王城の真下で彼女と再び永遠の愛を誓いあい、そのまま埋もれてゆく・・・・

 

粉雪の様に舞い散る粉塵の中で、アリアは再び立ち上がる。
その目前に広がるのは、焼死体の散らばった凄惨な光景。
彼女は救えなかった少女の手に握られていた馬の玩具そのままの様な白馬を見つけると、それに跨り、荒廃した王都から駆け出してゆく。。。

 

 

 

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 ・・言葉が出ない程に、全ての登場人物に絶望が訪れたエピソードだった。

アリアがハウンドを本名で呼び、礼を述べた事だけが唯一の救いか。。。

ヴァリス、ユーロン、クァイバーン、マウンテン、ハウンド、サーセイ、ジェイミー七人ものメインキャラの死傷者をだした今回は、ゲースロ史上最高記録だったのではないだろうか?

ラストに流れるオーケストラバージョンの「キャスタミアの雨」は、そんな悲しみに満ちた詩情を更に盛り上げる。。

 

細部を辿っていくと少々強引な展開ではあるが、争いの中で生まれた人の狂気は、言葉通り、全てのものを飲み込んでいってしまった。

ヴァリス、或いはサンサの予感通り、デナーリスの怒りはもう誰にも止められない。。

とは言え、その予兆はこれまでのエピソードでも、だいぶ仄めかされていたのだろう。

彼女が執着する鉄の玉座に対する執念は、エッソスの地で苦渋をなめ続けていた迄にまで遡る。

今となって思えば、カール・ドロゴに犯された時から、彼女はその自分の憤りを全て怒りに変え、戦乱の世を生き延びてきた。

 

つまり彼女は、元々感情を制御する事ができない無垢で残忍なドラゴンそのもの。。

 

それをジョラーが支え、ミッサンディが寄り添い、ダーリオが息抜きをさせる事でなんとか成立させてきた。

臣下とは言え、どこか彼女の琴線に触れてきた仲間達をすべて失った女の脆さが、あまりあるほどに描かれていた。

 

私的に思うのは、そんな彼女はジョンと出逢った時から、玉座に座る信念も実は揺らいでいたのかもしれない。。

けれど、最愛の仲間達が戦火に消えゆく中、彼女はその死に報いる為にも、信念を曲げる事ができなくなっていってしまったのだろう。

 

そんな中、自分の手に入れようとしていたものが、信頼や尊敬からくるものではなく、畏怖の念の元でしか得られない究極の恐怖政治である事を、誰あろう愛するジョンから気付かされてしまったら・・・

素直な愛情表現が苦手なジョンの不器用さが、見事に裏目に出た瞬間だった。。

 

その彼女の憤りに飲み込まれていくグレイワームの様子は、あまりに儚い。

純粋な彼からしてみても、唯一人生で愛情を覚え始めたミッサンディの死は、億兆の人の死に値する。

そんな彼らの倒錯ぶりを憂うティリオンの儚さ。。

大局の混乱の中で埋もれる人の優しさが、あまりにやるせなかった。

 

ジェイミーとサーセイの死は、出来過ぎだが、その僅かな希望を残した余韻は十分に納得がいく。

サーセイのマッドクウィーンへの変貌ぶりも、元をただせばまっすぐな愛情を受ける事さえ敵わなかったラニスター家、引いていえば戦乱の世の歪んだ伝統文化に起因する。

そんな時勢の中、ただ子供だけを愛し抜こうとした彼女の信念に、強くエンパシーを感じた母親世代の女性達も、決して少なくなかっただろう。

 

ここにきて、ようやく憎しみから解放されたアリアにも、その憤りを諭せるハウンドはもういない。

そしてまるで、現代の中東の地の混乱を彷彿とさせるかのような戦火の中に晒され、怒りが次の怒りを生み出していく現実。。

この恐れから自制心を失い悲劇を繰り返していくゲースロの世界は、自分が愛されている事を見失いがちな現代社会とも、しっかりリンクする。

 

大分主要人物が減ってきたラストに向けて、あわよくば、狂王の再来になりかねないデナーリスを引き留めるジョンの勇気、或いはデナーリスへの憎悪を滾らせるアリアを、サンサごと受け止めるティリオンの愛情に唯一の望みを託したいトコロだが、ここは絶望感に打ちひしがれている二人だけの力では、止める事はきっと不可能だろう。

 

・・そうすると、自ずと鉄の玉座に君臨する者は誰もいなくなり・・・


・・今さらだが、前回のエピソードで、デナーリスを敬愛するミッサンディの最期の言葉が、サーセイの憤りをそれでも赦す台詞だったとしたら、或いは、この世界の中で生まれる悲劇は回避できていたのかもしれない。。

 

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