マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『アイデンティティー』の私的な感想―振り止まない雨の日の夜の出来事―

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Identity/2003(アメリカ)/90分
監督:ジェームズ・マンゴールド
主演:ジョン・キューザック/レイ・リオッタ、アマンダ・ピート、レベッカ・デモーネイ

 多彩な俳優陣が集結したクローズドサークルミステリー

雨の日の夜に見るサスペンスと言えば、まず初めに思い浮かぶのがこの作品。

閉じ込められたモーテルで一晩中止まない激しい雨がとても印象的です。

叙述トリックが散りばめられいる作品というよりは、このストーリー構成自体がかなり巧妙に仕組まれていて、視聴者は最後にその全てを覆されてしまいます。。

 

クローズド・サークル系のミステリーとしてはほとんどルール違反スレスレですが、私的にはかなり楽しんで見ることが出来ました。

それはこの登場人物たちの個性豊かな面々。


主演のジョン・キューザックは『マルコヴィッチの穴』『2012』あたりが有名ですが、若い頃は『スタンド・バイ・ミー』のゴーディーの死んだ兄役も演じています。

近年はあまりにトラブルばかり発生する映画への出演が多いので、彼の顔を見るともう条件反射の様に必ず何か事件が起こりそうな気配。

レイ・リオッタは『ハンニバル』でレクター博士に脳を開けられてしまうあの役人役が衝撃的。

『フィールド・オブ・ドリームス』で往年の名野球選手ジョー・ジャクソンを演じていた頃は、吸い込まれそうな彼のその瞳に随分魅力を感じていたんですが・・w

更に『ウィンターズ・ボーン』の“ティアドロップ”ことジョン・ホークスや『パラサイト』で寄生されるゴズを演じたクレア・デュヴァル、『ゆりかごを揺らす手』の怪演が記憶に残るレベッカ・デモーネイ等、典型的な白人系ハリウッド俳優が男女共に勢ぞろい。

そして忘れちゃいけないのがこの人。

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海外ドラマ好きなヒトなら見覚えありませんか・・?

『ウォーキング・デッド』のシーズン2で少しだけ登場していた、ショーンにウォーカーの餌にされたあのオーティスです!

本名はプルイット・テイラー・ヴィンスといってジム・ジャームッシュ作品の『ダウン・バイ・ロー』でスクリーンデビューを果たしたのに、その出演シーンが全てカットされてしまったという苦労人。

彼は30代の頃から眼振を患っているらしいんですが、この作品ではその稀な症状が逆に個性的なキャラに深みを与えています。

 

・・でも、

 

何故か黒人が一人もいませんよね・・?

 

更にコンパクトなアメリカを描く上で必要不可欠なはずのヒスパニックやアジア系の俳優もこの映画には一人も登場しません。

 

実は、、、

 

これがこの映画の謎を解き明かす最大のポイント。。

 

今回はそんな一風変わったおすすめのミステリーのヒントを、ネタバレなしで紹介していきます。

   

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―――死刑判決を受けたマルコムは解離性同一性障害を持つ殺人鬼。
しかしその死刑執行の前夜、弁護士らによって彼の日記が発見されたことにより事態は急変する。。
ジョン・キューザック演じるエドはレベッカ・デモーネイ演じる女優・キャロラインの運転手だが、豪雨の為見通しの悪かった国道でジョージの妻・アリスを轢いてしまう。
瀕死の彼女とその息子ティミーを連れ、ジョン・ホークス演じるラリーが営む寂れたモーテルへとやってくる彼らたち。。
娼婦のパリスは水没した国道でエンストを起こし立ち往生。
クレア・デュヴァル演じるジニーは夫のルーに言われるまま彼女達を車へと乗せる。
大雨で電話も遮断された中、そこへやってくるのは護送中の囚人・ロバートを連れたレイ・リオッタ演じるロード。。。
集まった11人
は同じ宿で一晩を越そうとするが、正体不明の何者かの手によって彼らは次々と抹殺されていく・・・

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 3つのヒント 

この映画は、嵐の夜に閉じ込められたモーテルで起こる連続殺人の犯人を追っていくストーリーですが、そのあまりに難解なサスペンスを読み解く為にはまず、それぞれの登場人物を把握しておく事が必須になります。

①11人の登場人物

あらすじに書いた登場人物は12人ですが、モーテルに集まるのは管理人のラリーを含め11人

しかし、冒頭に出てきたマルコムを含めると1人多くなりますよね?

これがまず最初で最大のヒントです。

②全員に共通点がある

バラバラに集まって来たかのように見える彼らですが、実はその全員に共通点があります。

そのヒントは冒頭2分で出てくるマルコムの記憶。。

自分の殺害自体を全く覚えていない彼の最初のそれは、

「コロンビアがノースキャロライナの州都である」事のみです。。。

 

③殺人犯の真相

このサスペンスの一番素晴らしい点は、上述したトリックのみではありません。

実はこの二つの秘密は物語の中盤以降で明かされてしまいますが、それでもこの映画が興趣を削がれないのは、練り上げられた出演者たちのキャラクター設定

11人の共通点は意外に単純な事に隠されていて、それぞれが明かすバックグラウンドを整理して紐解いていく事で次第に意外な殺人犯の真相に近づいていきます。

 

多重人格者と密室殺人というキャッチーな二つの要素で織り成すこのミステリーは、梅雨時の夜に見ると格別。

マルコムとモーテルのバックで窓打つ雨音を現実世界でシンクロさせれば、気付かない間に見ている貴方も彼らの世界に引きずり込まれていくかも・・・

 

『アイデンティティー』
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