マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

『ウォーキングデッド』シーズン10第12話の私的な感想―このドラマをダメにしたのは誰なのか?―(ネタバレあり)

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The Walking Dead Season10 Episode12/2019~(アメリカ)
脚本:イーライ・ジョン/ニコール・ミランテ=マシューズ
出演:ノーマン・リーダス、サマンサ・モートン、ソーラ・バーチ、ジェフリー・D・モーガン

 TWDへの苦言

・・ふざけ半分で『TWD』ブログを続けてきましたけど、そろそろ限界でしょうか。。

 

今までは、ここの前説でエピソードのネタバレになる内容は避けてきましたが、今回はあまりにショックな内容だった為、逆に筆が進んでしまいます。

 

なので今回はここから、、

 

『ウォーキングデッド』シーズン10第12話のネタバレを含みますので十分にご注意下さい。

 

・・いや、ショックと言っても、、

 

前々から視聴者の殆どが薄っすら感ずいていたニーガンによる暗殺作戦や、その裏でこっそり糸を引いていたキャロルの真相の事なんかじゃありません。

或いは、予算維持の難しくなったヒルトップのロケセットを、効率的に燃やすその崩壊劇や、著者が愛するコニーの行方不明話なんかでもなく・・

 

 

このドラマが、ライトな視聴者層に完全に照準を合わせた、単純なドラマ作り路線に移行し始めた事。

 

 

・・・あ、遂に言っちゃった。。。

もう、長年のTWDファンとして、怒りがMAXに到達したので勘弁してやってください。(というより、後半は語気がだいぶ強いので、流し見で読まれている方はココで退場して下さいm(__)m)

 

とりあえず、一呼吸おいて、、

今まで通り、あらすじから追って、その理由を細かく説明させてもらいます。

 

シーズン10第11話の感想はコチラ

 

 

 

 

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 由への道

火の手に包まれるヒルトップ。
崩れ落ちる壁から雪崩れ込むウォーカーを住民達は必死に撃退するも、あえなく陥落。
ユミコはそのウォーカーの群れの中に、マグナらしき人影を発見するも・・

 

失ったウォーカーの補充作業を、ベータから命令されたニーガンは森の中へ。
すると、生き延びていたリディアの姿を見つけ、彼はその後を追う。。

負傷をし意識のないルークを抱えたアーロンは、やがてニーガンと再会。
彼はその怒りを徐にニーガンにぶつけようとするが、やってきた数体のウォーカーに阻まれ、彼には近づけない。

ニーガンとの再会を喜ぶリディアも束の間、彼は言葉少なく彼女を取り押さえ・・

 

アダムを抱きかかえたアルデンは、ケリー、メアリー等と共に、合流地点へと急ぐ。
やがて、泣き止まないアダムの声に、ウォーカーが引き寄せられてくると・・
メアリーは二人と甥のアダムをバンの中に閉じ込め、ウォーカーの群れを誘導。
河原のほとり迄やってきてその全てを退治するも、音もなく近づいてきたベータによって、彼女は胸を切り裂かれ絶命。。

やがて転化をし、ウォーカーとして立ち上がる彼女を、アルデンの放つ矢が射抜く。
ベータはその様子を睨みつけながら、森の奥へと消えていく。

 

キャロル、ユージーン、ユミコの三人は、生き残っていたマグナと再会する。
コニーとは、はぐれてしまった事を知らされたユミコは、キャロルに怒りを露わにするが、マグナは彼女に一定の理解を示す。。

自責の念に晒されているキャロルに、ステファニーとの待ち合わせの件を語り出すユージーン。
キャロルはそんな彼を励まし快く送り出すと、ふとリディアの杖を見つける。。

 

ダリル、ロジータ、ジェリー等は、数人の仲間を連れ、子供達の隠れ家のあるあばら家へ向かう。
しかし、そこでナビラ達の子供の姿は見つけられず、焼け落ちたヒルトップに戻ると、瓦礫の下に埋もれていたエゼキエルと再会する。

 

アルに救出されていた子供達は、別の家で不安な時を過ごす。
顔面蒼白のまま彼らを気遣うアルは、ジュディスにだけ自分がウォーカーに噛まれていた事を明かし・・
やがて自らの手で死を選んだアルに、ジュディスが何気なく近づいていくと・・

 

エゼキエルの先導で、アル達の隠れ家へとやってくるダリル。
一抹の不安が過る中で、彼がその家の扉を開けると、駆け寄ってくる子供達。
しかし、ウォーカー化したアルの息の根を止めたジュディスは、呆然とその場に座り込んでいる。
無言のまま、その彼女を抱きしめるダリル。。

 

アルファの元に、リディアを見つけ出した事を報告にやってくるニーガン。
彼女はニーガンに感謝の意を伝えるも、彼に自分達から離れる事を遠回しに示唆し・・

椅子に縛られた小屋の中で、狼狽えているリディア。

ニーガンはアルファに、自分の娘を傷つけないように進言するも、彼女の決意は変わらず。。
その思い出を永遠にする為に、アルファはリディアを抹殺すべく小屋へと近づき・・

 

もぬけの殻の小屋の扉を開け、呆然とするアルファ。
振り返る彼女の首を、ニーガンは躊躇なく掻き切る。。

 

その血の滴る生首を、彼がある人物の元へと運ぶと、

遅かったわね

とニーガンを労うキャロル。。。。 


 

 

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 ・・グレゴリー・ニコテロ(TWDの特殊効果担当兼製作総指揮)が監督の時って、こーゆーいらんトリックするんだよな。。。

・・・これを神回と呼ぶヒト達のキモチが、サッパリわからない。。。

 

以下、ウォーキング・デッド、ウィスパラーズ戦終了迄の、原作のネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

意味深にベータの過去を匂わせるフックや、実質的なウィスパラーズの最大の被害者だったヒルトップの鍛冶屋爺さんアルの、非業の死なんかはひとまず置いといて、、

 

結局ウィスパラーズって何だったんでしょうか?

 

もう、闇の女帝として君臨したアルファもあっさりと生首にされちゃったので早速ネタバレしちゃうと、原作の彼らの物語と今回のドラマ版とでは、その死の意味自体が、実はだいぶ違います。

ウィスパラーズの本当のコワさの秘密は、ワケノワカラナイ呪文を唱えるからでも、ゾンビマスクを被っているからでも、更に言えば、歪んだ新興宗教団体もどきに人を洗脳するからでもなく、実は究極のナチュラリストであるという事。

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わかります?この意味?

つまり、原作で描かれている彼らは、動物や自然、更に言えばウォーカーにさえも寄り添って生きる道を選んだエコテロリストの様な武装集団なわけです。

なので、、

親であるアルファが、子供のリディアを愛するのも自然。

それが、例え歪んだ愛情であったとしても。。

 

そんな、唯一の弱い人間味を残してしまったアルファの感情を必死に食い止め、グループを維持する為の汚れ仕事を一手に引き受けていたのがベータの存在であって、ドラマ版の様な、ただの図体のデカい用心棒なわけじゃ全然ありません。

要するに、ちょっと不自然なまでに今は亡き純情少年ヘンリーとの想い出に、憑りつかれまくるキャロルと、しつこくリディアを忘れられないアルファは、実は同じ穴の狢。

全てを犠牲にしても執拗な行動をとる二人は、皮肉にも、子供に異常な執着心を燃やす点では全くおんなじで、その似た者同士でいがみ合う母親の戦いというのが、今回のドラマ版ウィスパラーズ編のコンセプトのはずでした。。

 

そして一番の問題は、今回の影の主役と言ってもいー存在のニーガンですが、、

 

皆さん、なんか、妙な違和感を感じませんでしたか?

・・まるで、昔のカッコよかったはずの彼が、どこかへ行ってしまったような・・・

 

ニーガンも原作では、アルファを殺害するのはおんなじですが、その動機は、ドラマ版と実は正反対。

無鉄砲な親をリックに殺されたブランドンドラマ版では5話に出てきたアタマワルイキャラの少年によってアレキサンドリアの牢獄から脱出し、その復讐の為、ウィスパラーズの領地に彼は送られた後、ニーガンはブランドンをあっさり抹殺します。

その理由は、、

ニーガンは完全な合理主義者であって、私怨に捕らわれたバカが嫌いなんです。

彼の右腕だった脳筋サイモンが、あっさり絞め殺されたのを覚えてるでしょうか?

 

つまり、彼が“救世主”軍団を作り出して世界を救おうとしたのも、様々な計略でリック達を屈服させようとしたのも、嫌みな台詞で感情をコントロールする究極の悲観論者だからこその成せる業・・(そんな彼が、ジュディス等の純真無垢な感情に触れる時、ちょっぴり切なくなりませんでしたか?)


実写化もされた日本のアニメ『寄生獣』内での台詞を借りれば、

愚民を統率し間引きする為の力」を理想に掲げた、コワすぎる超現実主義者なんです。

 

そんなニーガンにも、原作では様々な葛藤や邪心、それに、ほんの少しの後ろめたさもありました。

彼が原作でアルファを手にかける理由は、ただの残虐行為でも、リックのグループに入る為の単純な計算でも、ましてや誰かの復讐の為であるはずもなく、純粋にアルファのつく嘘が嫌いだったから。。

 

それは、リディアも含めたウィスパラーズの女性に対する男達の夜這い行為を黙認していた事にも繋がりますが、(ドラマ版でも少しは触りましたが)アルファが成り行きに任せていた動物的な人の本能を、否定してきたからこそニーガンは強いわけです。

それはアポカリプス前に彼が妻のルシールを失って得た、自分の無力さからくる信念。


そんな切ないダークヒーローだからこそ、彼をカッコよく感じ、悩み続ける男リックの後釜になれる気がしてたんだけど・・

 

この深い裏テーマを今回のエピソードでバッサリ削ぎ落したのは、ライト感覚で観る一般視聴者には、それよりも戦闘シーンを工夫するだけの単純なアクションやミスリードの暗殺トリックの方が需要があると、製作側が判断したからでしょう。(・・なんだか、製作側が本物の“ニーガン”みたい・・)

ウィスパラーズによるレイプシーンを見せずに、9話のエピソードでアルファとニーガンの性的なカットを盛り込んだのも、単純なポリコレ批判を受けるよりは、失笑を買う方を選ばざるを得なかったテレビドラマの悲しい性。。

 

そんな彼らが求めるクソつまんないサスペンス要素に巻き込まれ、今回のエピソードで切ないキャロルと、かっこいいニーガンは同時に死んだ気がしています。

 

だって、キャロルに今後どんなフォローを入れたとしても、彼女は仲間を危険に巻き込んだだけで、自分の手は一切汚さない、ただの悪女ですから。。

ついでに頑なだったはずの信念をすっかり変え、そんなキャロルの私怨の手先に落ちぶれたニーガンも、そこにどんな理由を取って付け加えても、後の祭り。

一見狂人の様で、クールで切れ者のカッコよさを併せ持つ救世主だった頃の彼には、もう決して二度と戻れないでしょう。。。

 

これじゃ、『ゴーストワールド』でゴールデングローブ賞候補にも上ったガンマ事ソーラ・バーチも、降板を理由にあっさりと逃げ出すよねえ。。。。

 

原作のかっこいいニーガンの秘密は、以下の日本語版コミックに収録されています。

 

ウォーキング・デッドの深刻な視聴者離れの原因は、需要と供給が著しく食い違ってる気がしてるんですけど、皆さん、どーでしょうか?

 

ウチのブログじゃ、何度も言い返してますが、、

この海外ドラマは、崩壊した社会秩序の中で、人間性を改めて見つめ直すドラマです。

www.mariblog.jp

 

平たく言えば、、

正義と生き残る事の矛盾点を突く事が本懐の、壮大なヒューマンドラマだったはず。。

 

更にリミッターを外して、スナックの酔っぱらいオヤジ風に叫ばせてもらうと、、、

 

ハナからアクションもサスペンスも、もーどーでもいーんだよ!!もっと青臭い友情とか家族愛とか、ゾンビ世界のような現実から逃避できる夢がほしーんだよ!!!

・・あ、血圧が上がってきちゃった。。。

 

今から考えれば、ゾンビドラマなのに不倫モノってゆー最初のコンセプトから、お茶の間の主婦層を念頭からターゲットに置いた、あざとさがこのドラマにはあったのかもしれない。。

 

ついでに原作では、放浪者がグループ内で共存する事の難しさを描いていたはずの、マグナ&ユミコ達の新参キャラも、その生き残った術を説明するディテールがびっくりするほど雑で、著者のお気に入りだったはずのコニーへの心配心も全く動きませんでした。

 

・・もう、ドラマを観る事自体、やめちゃおーかな。

作り手側が、訴えかける様に一生懸命作ったモノを一生懸命に見てもらえるのが、視聴者に選んでもらう有料コンテンツならではの、面白さの筈だったのにな。。

 

元々ゾンビ好きの視聴者って、のめり込みやすくて現実に不満のあるちょっとイタイタイプじゃないですか?(←完全に偏見(^^;)

だから、いーんだよ!横目で楽しむ日本の民放ドラマのように、軽い感覚で観てるヒトの文句とか全然気にしなくて!(こちとら年度末で資金繰りに忙しーんだから、hulu解約するぞ!)

 

ウォーカーを倒す事に息巻いていたジュディスが初めて突き当たった試練と、その横にひっそり寄り添うダリルの様子だけには、少しじんわりときましたが、映画版への期待値を無理やり盛り上げようとするミショーン最期の次回エピなんかよりも、原作と乖離すればするほど、単純な視聴者目線に媚びざるを得ない今後の『TWD』シリーズ全体に不安が募りまくった、あまりに複雑な感情の込み上げるエピソードでした。

 

シーズン10第13話の感想はコチラ

www.mariblog.jp

 

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