The Endless/2017(アメリカ)/111分
脚本/監督/撮影/編集:ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド
主演:ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド/キャリー・ヘルナンデス、テイト・エリントン
複雑な感情の兄弟が迷い込む異世界
原題と冒頭のインタータイトルでその世界観を殆ど説明してしまっている感は否めないが、それでもこの手の映画は割と嫌いじゃない。
複数のファンタスティック系の映画祭で賞を取った作品なんて聴くと、どうもメランコリックなイメージが先行してしまうが、序盤からの作風は随分シリアスで感情的なシーンも飛び交う。
脚本から監督、撮影、編集までをも二人で手掛けるジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッドのコンビは『モンスター 変身する美女』、『キャビン・イン・ザ・ウッズ』等のオカルトチックな作品が得意分野みたいだが、満を持して主演まで熟した作品はこれがはじめてのようだ。
それもそのはず。。
作品のベースには複雑な兄弟愛が見え隠れしているので、これを表現するには長年の心憂さの溜まった自分たちがもってこいだったのだろう。
説明が大分端折られている部分も多いので、年末の忙しい時期に気もそぞろで観てしまうと、一気にストーリーについていけなくなるのでご注意を。
あらすじ
この村は、全てが狂ってる。
カルト集団とも言われる自給自足の村“アルカディア”を10年前に脱走し、今は街で暮らしているジャスティスとアーロンの兄弟。
しかし幼い頃から特殊な生活をしていた2人は、世間にうまく馴染めず、友人も恋人も居ない。。
そんなある日、兄弟はアルカディアから送られてきた一本のビデオテープをきっかけに、再び村を訪れる決心をする。
逃げ出したはずの2人を、かつての“家族”=アルカディアの住人たちは優しく迎え入れる。
不思議なことに、彼らの外見は10年前とまるで変わらないように見えた。やがて2人は次々と村で起こる超自然的な出来事を目の当たりにする。
それは全てカルト集団によるトリックなのか?
果たして、 この村では何が起こっているのか?Filmarksより抜粋
カルト集団の中で見つける本物の幸福
ヴィンセント・ギャロの『ブラウン・バニー』を意識したかのようなオープニングはちょっとあからさまな気もするが、そこは愛嬌で。
流行りの周辺減光を使ってのカメラワーク、真上から全体をみせる定点ショットは、辛い現実を生きる兄弟の厭世観をたっぷり伝えたかっただけなのだろう。
それでも、、
ステレオタイプのファンタジー映画には感じないのは、彼らを取り巻く環境にカルト教団で生まれ育ったが故の苦悩をきちんと内包しているから。。
オウムを始めとするこの手の団体に共通している事は、血の繋がり以上の関係性を築ける家族愛。
希薄な人間関係の中で生きていると、劇中の主人公の弟の様に、この手の感覚に時折無性に愛おしさを感じてしまう錯覚はなんとなく理解ができる。
そしてそんな弟を必死に導こうとする兄が、二人だけが本物の兄弟だからこそ、強くあろうとしていたことも。。
ストーリーはこの辺の感情のすれ違いを軸に、一見のどかに見える二人が育った教団へ一時帰省するところから始まるが・・
ネタバレの無い様、その教団が崇める何かの存在はここでは伏せるが、弟がその正体を知った上でもその場に残ろうとしたのは、正に現実世界との対比だ。
貴方にもありませんか?
シンドイ毎日を繰り返すだけなら、死によって解放された異世界を覗いてみたくなってしまったコトは・・
この映画はそんな無限ループする苦海の有様と、異次元への憧れを絶妙なバランスで天秤にかけ見せてくる。
なので自分の様に、今の現実に満足できていない人達は、弟と同じように元の世界に戻る事を一瞬躊躇ってしまうかもしれない。。
ラストの顛末はそんな恐怖と甘美な存在の持つ魔力を越えた、兄がそれまで持てなかった勇気が生んだ結果だろうが、劇中の兄弟同様、監督たちがこれまでの映画作りの距離感の中で悶々と不満を募らせていたのだとすれば、若干笑いが込み上げてきてしまうのだが・・
『アルカディア』は
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