13 Reasons Why Season2 Episode13/2018~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:キャサリン・ラングフォード、ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、ケイト・ウォルシュ他
助けを求める者
いよいよ最終話です。
近年稀に見るストレートな青春ドラマで、忘れていた自分の過去を振り返れました。
シーズン2はシーズン1に比べて小賢しいトリックが少なかった分、胸に染み入るエピソードが大分多かった気がします。
どうしても親目線でクレイたちのトラウマを想像してしまいがちでしたが、法廷劇の部分には中々骨太な現代社会に対するアンチテーゼを盛り込んでいます。
そして自殺者を決して美化することなく、きっぱり糾弾する様にも驚愕。
12話で幻覚のハンナが、自分の犯した若気のあやまりをクレイに対し許し求め続けますがはっきりと“決して許さない”と言い切る彼の姿勢に、製作者たちによる視聴者への熱いメッセージが伝わってきます。
裁判所の最終陳述で学校側の弁護士が「ハンナが誰にも助けを求めなかった」と言う台詞を吐きますが、ここにも、脚本家による逆説的な暗喩を感じます。
「助けを求めなかった」のではなく「助けを求められなかった」現実を視聴者はどう受け取めるのでしょうか?
チームにしか居場所がないモンティー、写真しか生き甲斐のないタイラー。
クロエの存在によって大分救われているブライスは、彼女を失わない限りは希望を持てそうですが、追い詰められた二人の若者が助けを求められる人間は果たして現れるのでしょうか?
シーズン2第12話の感想はコチラ
以下、『13の理由』シーズン2最終話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
さよなら
ハンナの裁判の判決から1ヶ月後。。
法廷で自分の犯した強姦の罪を認め、謝罪答弁を述べるブライス。
傍聴席でそれを聴いていたジェシカがその後に続く。。
判事にレイプ被害者の心境を切々と語るジェシカ。
溢れ出るブライスに対する憎しみに声を震わせる。
・・彼女の言葉はやがてハンナへと受け継がれ、更に、様々な登場人物達の女性蔑視を受けてきた過去にそのままオーバーラップ。
しかし、、
判事は論告求刑に移ると、ふたりの将来を加味し、州法に基づきブライスを3ヶ月間のみの保護観察処分にする。。
警察官のアレックスの父親による取り調べを受けるモンティー。
しかし彼にもまた脅迫した証拠がなく、モンティーは白を切り通す。。
保釈されたブライスと対照的に、3ヶ月間もの拘置所生活を送るジャスティンの弁護を引き受けたのはクレイの母親。
しかし保護者が見つからない彼の釈放を、判事は承諾出来ない。
クレイの母親はジャスティンを励ますが、彼は冷静に現実を受け止めている。。
校内のロッカールームでは、ブライスが私物を片付けている。
蟠りを残すザックに転校する事を告げるブライス。
更生プログラムが明けたタイラーはマッケンジーと寄りを戻そうとするが、彼女には新しい恋人が・・
娘の自殺に恥ずかしさを覚えていたオリヴィアたちは、ようやく自殺したハンナの葬儀を引き受けてくれる教会を見つける。。。
・・ジェシカ達の受けた恐怖が痛切に伝わります。。
更に『13の理由』の中では語られなかった様々な登場人物の女性たちの過去のエピソードにも、何か心に強く訴えてくるものがあります。
釈放されるブライスと拘留され続けるジャスティンの対比にも愕然。
貧富の差がそのまま引き継がれる州法の真実に、胸が抉られる思いになります。
ハンナとバイトをしていた映画館の前を通り過ぎるクレイ。
ふと彼女との思い出が蘇り、幻覚のハンナに自分が彼女の葬儀で弔辞を述べる事を告げる。
怒りを抑えられる自信がないクレイを励ますハンナ。。
そしてハンナの葬儀当日。
クレイはその自分の憤りを隠さず皆に伝え、そこにやって来る幻覚のハンナ。。
言えなかった愛の告白と別れを彼女に伝えるクレイ。
ハンナは嬉しそうに微笑み、そのまま教会から立ち去っていく・・・
偲ぶ会はハンナたちの行きつけのカフェ、モネで。
3人で座っていたテーブルで改めてジェシカに告白するアレックス。
6ヶ月ぶりに保釈されたばかりのジャスティンを抱きしめるザック。
ジェシカは全ての裁判や取り調べが終わった事をニナに告げる。
そして、母親からの提案でジャスティンを養子に迎え入れる決断をするクレイ。。
ジャスティンは嬉しさのあまり、涙を抑えきれない。。。
・・ セミコロンのタトゥを完成させたクレイがハンナと、街が見渡せる丘に座っているシーンはかなり胸が熱くなりました。。
数時間同じ態勢のままベンチに座り続けるふたりを、タイムラプスで表現するこの撮影手法はあまりに印象的。
抽象的な台詞でクレイを見守り続けてきた彼女がようやく、光の中へ消えていく描写には思わず涙が込み上げてきました。
更に自殺をテーマに扱っているこのドラマの性質上、教会の見せ方にも十分気を配っている様子が伺えます。
アメリカでは主流派である質素なプロテスタント風の礼拝堂は、カトリックよりも自殺者が多いこの宗派の特徴。
そして、、、
今回のシーズンで最も衝撃的だったのが、偲ぶ会でオリヴィアがクレイに手渡すハンナが生きる為に残した「11の死なない理由」のメモ・・・
ハンナの女性らしい現実的な一面と幼気な少女との戸惑いの中で、自殺に踏み切るまでに葛藤し続けていたであろう彼女の揺れ動く心を想像するだけでもう、涙が止まりません。。。
学校ではブライスに救いを求めるモンティー。
スポーツ推薦を失い、縋れるものがなくなった彼はブライスにタイラーへの復讐を持ち掛けるが、ブライスはモンティーを冷たく突き放す。。
タイラーは、せめてサイラスとの友情を取り戻そうとするが、彼もまたタイラーを寄せ付けない。。。
男子トイレでタイラーを見つけたモンティーはとうとう暴走。
彼はタイラーのアナルにモップを押し込み、集団で陵辱する。。。
ケイレブの存在を未だ両親に紹介出来ずにいるトニー。
ジェシカをダンスパーティーに誘ったアレックスは、ザックから手解きを受ける。
ジャスティンは久方ぶりに感じる安息感の中、再びヘロインに手を出してしまう。。
・・ポラロイド写真を箱から取り出し、燃やし始めるニナ。。。
親に打ち明けることが出来ない苦しみを抱え、一人自宅のトイレで泣き出すタイラー。
数週間が経ち、ジャスティンに促されるまま進級を祝うダンスパーティーにやって来るクレイたち。
それぞれの生徒が少しずつ闇を解き放ち、新しい学期を迎えようとしている中、タイラーは暗い自宅の地下室から、マシンガンを取り出す。。。
パーティーも終盤に差し掛かり、流れ出すチークタイムのあの曲。。
サイラス達と記念写真を撮っていたクレイの顔つきが一瞬で曇る。
・・ハンナと一度だけ一緒に踊った夜に流れていたスローバラードがかかり、クレイはステージの中央で立ち止まる。
クレイの元へ近づいていくトニー。
動けずにいるクレイを抱きしめるジェシカ。
やがて、アレックス、ザック、コートニー、ライアンもクレイの側へとやってきて、7人は今は亡きハンナを偲び寄り添い合う。。。
会場の外に車でやってきたタイラーは徐に武装を始める。
マッケンジーに届いたメールで、狂気に憑りつかれたタイラーの到着を知ったクレイは
、見当たらないジェシカ達と共に会場を中から封鎖するようジャスティンに指示する。
・・銃口を突きつけるタイラーと、会場の外で対峙するクレイ。
彼はタイラーを説得しようとするが、覚悟を決めたタイラーの決心は揺るがない。
・・ハンナの死によって気付かされた思いを頭の中で反芻させるクレイ。
彼はタイラーの絶望を必死に取り除こうと説き続ける。。
やがて何処からか聴こえるパトカーのサイレン音。
タイラーの表情に薄っすらと戸惑いを感じ取ったクレイは、彼が向ける銃口を掴みゆっくりとおろす。
そして、そのままやってきたトニーの車にタイラーを乗せ、彼らは急発進。
駆けつけてくるジャスティンとジェシカ。
徐々に近づいてくるパトカーのサイレンを聴きながら、クレイはタイラーから取り上げたマシンガンを手に途方に暮れる。。。
・・完全に次のシーズンへのクリフハンガーを狙ったラストシーンには、ちょっと冷めてしまいましたが、全体を通してみれば十分秀逸なエピソードでした。
モンティーとタイラーの暴走も、ハンナの自殺同様、若者の不安に目を瞑り続けた人間の弱さが原因です。
・・問題のシーンに直面し、賛否が別れるところですが、、
自分はこのクレイの最後の判断を全面的に支持します。
むしろ、現実的にはあり得ない危険な事だからこそ、セレーナ・ゴメスを含めたこのドラマの全ての製作陣が、フィクションを通じてどうしても伝えたかったこのシーズン2全体に込められた強いメッセージだった気がします。
・・迷い続ける若者の苦悩を正面から受け止める本物の愛情。。
ダンスの終盤、ロッカールームで再会したジャスティンとジェシカがやっぱり一線を越えてしまう辺りにも、そんな若者達の揺らぎを強く感じます。
ドラマに込められた意思が余りに強く、まだちょっと漠然としていますが・・
そして、女子トイレでクロエがジェシカに妊娠を告げる描写にも、シーズン3に引き継がれるであろう彼らを待ち受ける過酷な現実に不安が過ります。
それでも、、
ハンナの死から始まり、根強く残るスクールカーストの実態から、孤立主義な大人のペルソナまで、一つのドラマでここまで多くの社会悪をストレートに言及したこのドラマは、不安を抱き続ける全ての若者たちに是非見てもらいたい傑作でした。
『13の理由』シーズン3はNetflixで見れます。