マリブのブログ

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Netflixドラマ『13の理由』シーズン2第5話の私的な感想―ライアンの告解―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Season2 Episode5/2018~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:キャサリン・ラングフォード、ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、ロス・バトラー、マイルズ・ハイザー

 『13の理由』が残すモノ

完全な被害者だったハンナの見方が少しずつ変わっていきます。


クレイは彼女を愛するがあまり、周りから見た彼女の実像に不安に陥っていきます。

しかしそこから、更に深くハンナの本心を追求しようとしていく彼の逞しさ。。

 

この人の成長記録をしっかり描いている点も、『13の理由』の秀逸なトコロの一つなのかもしれません。

 

シーズン2は配信錚々、アメリカで子どものためのメディア監視団体により正式にNetflixに対し配信を即時停止する様要請があったようですが、私的にはちょっと納得がいきません。

これはシーズンのラストに壮絶なシーンが含まれていた事に対する注意喚起のようですが、このドラマを最後までしっかり見れているような人間が、本当に自身のトラウマを想起させたりその真似事をするでしょうか?

激しい暴力シーンや性描写に対しこの手の批判はつきものですが、そんな世界から目を背け続けていても、実在する悲劇からは逃れられません。

 

トリュフォーの『大人は判ってくれない』でも描かれている様に、この手のガラスの十代に感じていた感受性は大人になると次第に薄れていきます。

そんな意味でもこの作品は、忙殺される日々で追い詰められた子供たちの残酷な実態に想像が至らない自分たち大人にとって今一度、自身の発想力の向上と若い感受性への許容を広げてくれる現代のドラマ版ヌーヴェルヴァーグ作品な気がしてきてしまいます。


シーズン2第4話の感想はコチラ
 

以下『13の理由』シーズン2第5話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。



 



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 ラインカー

パンクな精神に感化され、“Assholes”(サイテー野郎)と描かれたTシャツを製作し学校に着ていくサイラスとタイラー。
謎の人物からの脅迫はとうとうポーターの元へも。。

クスリを抜く為、クレイの部屋でもがき苦しんでいるジャスティン。
様子のおかしいクレイに父親は少しずつ違和感を感じ始める。
シェリの代わりに仕方なくジャスティンの世話にやってきたトニーは、彼にどこかエンパシーを感じてしまい、外に連れ出してしまう。。

クレイはアレックスとの会話の最中、2枚目に送られてきた写真に写っていたラインカーの存在を知りその撮影場所を探ろうとする。
ハンナのテープでジェシカの事件を知ったアレックスは、彼女が負担なく自分に接しられるよう再度努めていく。。。

 

 ・・辛さから逃れる為、安いヘロインに手を出したと言うジャスティンの台詞が忘れられません。。

貧困層に蔓延する闇の実態が、ティーンエイジャーにまで及ぼす影響をはっきり表しています。

ジャスティンに共感してしまうトニー、ジェシカを思い続けるアレックスの言い知れぬ儚さに、初々しさと共に自分にはもう失ってしまった謙虚な素直さ感じます。

そしてそんな思い悩む彼らとは対照的に、安易な社会への反発精神に依拠していくタイラーの変貌にはどうしても不安を覚えずにはいられません。

 

5番目に法廷に立ったライアンは、ハンナと詩を創作していた頃の事を追想。
学校側の弁護士にハンナの詩の真意を問われ、ライアンはハンナが当時未だジャスティンへの思いを捨てきれていなかった事を述懐してしまう。。

学校ではジャスティンを見かけたブライスの仲間、スコットがその不安を吐露し始める。
そんな彼を軽くいなすブライスの気概に少なからず恐怖心を感じ、ジョックスの集団から抜け出せられないでいるザック。
ジェシカは、クロエの的外れな気遣いにとうとう怒りを露わにする。

オリヴィアはハンナの心の機微に気付けなかった後悔から、謝罪に来たライアンからハンナの詩の真意を探ろうとする。
ハンナの捨てきれない恋心を、自分の夫への愛情に投射するオリヴィア。
共有できない自らの孤独から、誰かを見境なく求めてしまうその微妙な心理状態の末に、ハンナの孤独を増幅させていってしまった事に気付いていくライアン。。。

ポーターはジェシカとの面談で蒙昧な自分をさらけ出した事で、彼女からジャスティンの荒んだ家庭の状況を始めて知らされる。。。

 

 ・・子供と大人の気持ちが絶妙にリンクし、少しずつ近づいていきます。

どうしても大人の立場からすると、十代の世迷言など一笑に伏してしまいがちですが、ここがこのドラマのポイント

多感な時期の彼らと同じ目線で語り合う事によってはじめて、形成されていると信じ込んでいる自分の人格の幅も広がっていく気がします。

  

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自宅の夕食にクロエを招き、両親に見定めさせるブライス。
父親は彼女の上辺しか見ないが、母親はクロエの腕に残された小さな痣から、ブライスの不遜な一面を感じ取る。

プールでリハビリを続けているアレックスは、ザックにジェシカへ募る不安と勃起不全の自分の現状を吐露。
カフェで一人ゲイチャットの相手に待ちぼうけを喰らわされていたライアンには、トニーと、ジムで出逢ったその彼氏ケイレブが寄り添おうとする。
レイプ被害を受けた女性のグループカウンセリングに参加する事を決意したジェシカは、そこで遠巻きに彼女を見守っていたニナと再会。

タイラーの変わりゆく様子に彼の母親は、その不安な思い募らせていく。。

アレックスはザックに勧められたポルノチャンネルで自慰を試みるが失敗。
ジャスティンは、トニーから自分との再会を望んでいないジェシカの現状を知らされ自暴自棄になりかけるが、クレイは彼女の家で見つけたポストカードの存在を彼に伝えなんとか思い留まらせる。

ポーターはジャスティンの家の家庭訪問に向かい、ドラッグディーラーのジャスティンの母の彼氏にとうとう暴行を加えてしまう。。

 

 ・・それぞれの親が子供たちに対する接し方が、現実社会の家庭の実情を上手く表現している気がします。

ブライスの家庭も完全な放置主義というわけではなく、母親は子供の現状をしっかり見ていますし、タイラーの母親も彼の変わりゆく様子にきちんと警笛を鳴らしています。

 

それでも彼らの危うさを止められないのは、大人たちの根本的な弱さなのでしょうか?

 

ジェシカの父親が、彼女の自立を一歩踏み込んで手助けする様がやけに印象的です。

 

そして、、

「人の称賛を求めたくないのに、求めてしまう」

という回想の中でのハンナの台詞が、自我が芽生え始めた頃の思春期の自分をフィードバックさせ、何ともいえない懐かしい気持ちに戻させてくれた少し優しいエピソードでした。

シーズン2第6話の感想はコチラ

 

『13の理由』Netflixで観賞できます。 

www.netflix.com

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