13 Reasons Why Season3 Episode3/2019~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他
信念を持って伝える理由
・・重いドラマからの現実逃避が、ちょっと過ぎてきたな。。。
中絶やレイプ犯への復讐等、いじめやスクールカーストの問題にだけ留まることなく、多角的に10代の抱える瑕に切り込み始めた『13の理由』。
そんな中、遂に恐れていたニュースが入ってきました。
みなさんはこれを受けてどう思うのでしょうか?
日本のBPO(放送倫理・番組向上機構)なんかじゃ、直ぐに卒倒してしまいそうなこのニュースは、VOD(動画配信サービス)市場で世界最大手の登録者数を誇るNetflixの倫理規定をも根っこから揺るがしました。
結論として、これまで頑なに表現の自由を貫いてきた彼らはその態度を軟化させ、シーズン1のハンナの直接的な自殺シーンは全面的にカット。
苛烈な描写を敢えて加える事で、自殺そのものの抑止効果を狙った製作側の意図に、とうとう暗雲が立ち込めてきました。
前回の聴覚的に見せる中絶シーン等、『13の理由』で描く心理描写はかなり生々しいものがあり、そこに批判や問題提起が上がるのはかなり納得できます。
けれど、それを日本の民放ドラマの様に、すべて包み隠す事は本当にいい事なのか?
この問題には様々な意見があるでしょう。
だけど、、
作り手側の一個人の立場から言わせてもらえば、、
そこに、信念を持って伝えるべき理由があるのなら、きちんと描くべき。
この一言に尽きます。
昨今、アンパンマンを暴力的と批判するネットの声等、あまりに保守的で教育をメディアに丸投げする風潮が横行する中、日本の連ドラ市場は停滞感でいっぱい。。
蟠りを抱えた大人達の背中を見過ぎた若手は、思う事を素直に伝えられないテレビ業界から、挙って姿を消していきます。
弱さを見せ始めたレイプ魔のブライスや、その息子への本音を漏らし始めたノラ等、自分達が見たくなかったもの、或いは収まらない憤りのあまり、目を背けてきた真実に直球で疑問を投げかけるこのドラマは、そんな一方的なモノの見方を根底から崩します。
ミステリー色やポリコレ臭があからさまに立ち込めてきた『13の理由』が、当初から潜めていた本当のコンセプトは、人が寄り添い合う事の大切さ。
双極性障害を抱え、ハンナの心情に深く共鳴を受けて、実際に自殺の道を選んでしまったエミリー・ブラッグさんに深く哀悼の意を捧げると共に、その過激な描写を目の当たりにする事によって、救われたであろう声なき多くのティーンの心の声にも、きちんと耳を傾けていきたい、そんな心境です。
以下、『13の理由』シーズン3第3話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
善人も悪人も大差はない
朝日と共に目覚めるタイラー。
ジャスティンの着替えの最中に、その背中に残された傷跡を見つめるクレイ。
彼が徐にシャワーを浴びに部屋を出ていくと、ジャスティンはクレイの目を盗み、自分の鞄の中に手を入れる・・
アニの迎えにやってきたクレイは、彼女からブライスの死体が発見された事を知る。
勃然と立ち尽くすザック。
激しい吐き気に見舞われるジャスティン。
ケイレブからその一報を受けたトニーは、真実を警察に報告しに行こうとするが・・
警察の取調室に通されたノラは、自殺の可能性を疑う保安官を真っ向から否定。
校内放送のアナウンスで彼の死を知ったジェシカ、タイラー、アレックス、それぞれにも動揺が広がる。
アニから、ブライスの残したジェシカへの手紙の存在を知らされたクレイは、彼女に向けられた疑心の念に捕らわれていく。。
新しい生徒会長に任命されるジェシカ。
ブライスへの怒りを声高に主張する彼女に、ケイシー等を含めた賛同者の声は次第に広がってゆき・・
老いた父と息子との生活を始めたノラは、ブライスへの監視の目を強化。
ジェシカの一件でブライスへの風潮を察したアリは、彼女を応援するとともに、ブライスから距離を置こうするが・・
単独でブライスの家へとやってくるジェシカ。。
自信を取り戻し始めた彼女は、激しくブライスを非難し、その様子を覗き見ていたアニには複雑な感情が芽生えていく・・・
アレックスのセックスに満足出来ない事を、アニに漏らすジェシカ。
アニが性具を使った自慰行為をジェシカに提案すると、彼女はその快感に耽る様に、アレックスとは別の男を想像してしまう事を打ち明け・・
アニの回想から、ジェシカとブライスの関係に疑いの目を向けていくクレイ。
やがて、アニとのデート中にタイラーと遭遇したクレイは、ジャスティンを乗せ闇夜に消えていくジェシカの車を二人で追ってゆき・・
ジムのスパーリングで爽快感を味わうタイラーは、トニーの元へ。
彼はプロムの未遂事件の際に、他にも用意していた銃がある事を打ち明ける。。
ブライスに呼ばれやってくるジャスティン。
友情を取り戻そうと苦慮するブライスに対し、ジャスティンは痛烈な非難を浴びせる。
やがて、彼とジェシカとの関係にブライスに言及されると、ジャスティンは強く自分達に関わらない事を忠告をし、その場を立ち去っていゆく。
孤独の中、一人取り残されるブライスの、そのいつになく寂し気な表情。。
・・アニの妄想から、ジェシカ達を疑った事を謝罪する二人。。
やがてジェシカは、その後もブライスが謝罪にきていた事を告白するが・・
ブライスの訪問によって、ジャスティンの男気とその胸の内を知ったジェシカは、その複雑な感情を吐き出すかの様に、ジャスティンと熱く唇を重ね合わせる。。。
ジャスティンへの感情をアニに打ち明けたジェシカは、止まらない。
アレックスとの関係を即座に解消し、ジャスティンとの快楽を追求するセックスにのめり込んでいく。。
ジャスティンに謝罪しながらも、彼の秘密に疑念を募らすクレイ。
やがてジャスティンは、闇夜の中、義理の父のセスの待つ車へと近づいていく。。
トニーに見守れたタイラーの部屋の中では、彼が黒光りする拳銃の横で、水死体となったブライスの写真を無表情のまま見つめている。。。
・・いるんだよな。。この手の風見鶏的な早とちり少女。。。
いつの間にか、妄想好きなクレイをすっかりコントロールし尽くしているアニには、もう恐怖しか感じません。
何?詮索好きな女には気をつけろってエピソード?
なんて苦笑いしか浮かびませんが、自分の様な馬鹿じゃない限り、皆さんはもう、この手の教訓はウザイくらい知ってますよね・・・www
新たな性の目覚めを開花させてゆくジェシカの様子は、ティーンの青春ドラマっぽくていいっちゃいいんだけど、レイプと結びつけてくるのはどうかな。。
・・僅かな経験値の男の立場から言わせてもらえば、、
この手の被害経験を持つ女性は、そんなに荒々しいセックスを求めてくるだろうか・・?・・・なんて。。。
・・・まあ、泣き寝入りしやすい日本人には分り難い、自己主張の激しい欧米文化と人種の違いなのかもしれませんが・・(^^;
アニのナレーションとは裏腹に、正反対の行動をとるクレイ達の描写は、その脆く疑心暗鬼に陥りやすいティーンの複雑な感情とのギャップを見せたかったんでしょうが、何かが腑に落ちない。。
きっと英国訛りのアニのアクセントが、自分が過ごしてきた中部の方の高校じゃ、ちょっと嫌われてたからだな。。(標準語のイントネーションが、田舎じゃ疎まれる様な感じで・・)
ブライスがやけにしおらしく見えるのは、やっぱりちょっとキモチワルイけど。。
これが『13の理由』の醍醐味でしょう。
差別と偏見に満ちた文化大国の現状、更には、人権もあっさり無視される性犯罪者の実態。
これをアンニュイな視点で描くのは、偏ったフェミニストの批判を浴びやすい映像業界の中で、中々に出来ない事。
しいて言えば、、
そこに同情心をくすぐらず、生きたままの姿で贖罪を続けてく様子を見せてほしかったけど。。
タイトル通り、善人な人の持つ弱い心と、悪人な人の持つ純粋な感情との対比をテーマにした今回は、私的には、まだ疑う事を知らない若者達への、サービス的なフィラーエピソードな気がしています。
なので、、
またまたセスの影に怯え始めたジャスティンも、隠し持っていた拳銃を見せるタイラーも、ブライスの直接的な死因にはきっと関係ないでしょう。
・・てゆーか、毎回さわりしか見せないジャスティンの鞄の中には、性欲旺盛なジェシカとのコンドーム以外にも何かありそうな気がしてるんだけど・・・
ハンナのバイト先だった映画館で働くジェシカは、それが彼女への僅かな哀悼の意だったとしても、あまりにその制服姿が似合わなさ過ぎて少し笑えてきちゃいましたw
シーズン3第4話の感想はコチラ
『13の理由』はNetflixで観賞できます。