Game of Thrones The Final Season Episode.4/2019~(アメリカ)
製作総指揮:デイヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス
出演:ショーン・ビーン、レナ・ヘディ、ニコライ・コスター=ワルドー、キット・ハリントン、エミリア・クラーク、ピーター・ディンクレイジ他
歴史を揺るがすテレビドラマ
前回のバトルシーンの興奮が未だに冷めやらない。。
シーズン6の9話「落とし子の戦い」で見せてくれた圧巻のバトルシーンの、優に倍以上の期間をかけて臨んだ前回のエピソードは、ゲースロ史上だけでなくテレビドラマ史の歴史を変えたといっても過言ではない。
一部の視聴者からは、この壮絶なバトルの全体像があまりにトーンが暗すぎた為に批判を浴びているようだが、これまでのエピソードで照明を担当した撮影技師ロバート・マクラクラン氏は、米Insiderのインタビューに対しこんな発言をしている。
「可能な限り自然なライティングを演出したかったから」
このコメントから滲み出るのは、フィルムの質感に限界まで拘る映画人の主張と大差はないが、同業者から鑑みるとこれは、ブラウン管の前にすがりついてみんなでテレビを見ていたあの頃の興奮を再び思い出させてくれる。
アメリカのシカゴにあるburlington barで、前回のエピソードを視聴していた人々の賑わいを見ていただければ、それは一目瞭然。
その光景は正に、スーパーボールやワールドカップに熱狂する観戦者の姿そのまま。
つまりこのテレビドラマは、動画視聴が手軽に身近な端末で見られる時代にあっても未だ尚、万人の大衆が肩を寄せ合ってその緊張感を共に味わえるエンターテインメントである事を改めて証明してくれた作品でもあるような気がしている。
撮影の終了と共に自滅するデジタルな脚本の導入や、サンサ役のソフィ・ターナーが漏らしてしまったプロットを、外部に絶対に漏れない様、その相手の人物を翌日までに特定し血で署名をさせる等、一見行き過ぎの様にも見える緘口令を敷くのも、そんな視聴者の楽しみを損なわない為の製作側の苦肉の策と言えるだろう。
ネットでのリーク情報が世界中に瞬時に拡散されてしまう現代の中、このオールドタイプな大衆娯楽のシステムを頑なに貫くHBO側の姿勢には大いに好感が持てる。
視聴者が憶測や予想を立てる事に全く異論はないが、それはあくまでも共に共感を得れる仲間との間だけに留め、ゆっくりと熟成させていけたら・・なんて・・・
何故なら自分も含めた映像に携わる者の大半は、映画やドラマを通じてまだ見ぬ誰かに思いが届く事だけに希望を持ち続ける不器用な夢追い人ばかりだから。。
以下、『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第4話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
最後のスターク達
ジョラーの亡骸に優しくキスをするデナーリス。
シオンの亡骸には、サンサが泣きながら縋りついている。
やがて自分の胸元のスターク家の櫛を、彼の骸に添えるサンサ。
ジョンはリアナへ、サンサはシオンへ、アリアはべリックへ、デナーリスはジョラーの亡骸にそれぞれ火をくべる。
膨大に並べれられた戦死者達の骸が荼毘にふされる中、そこから立ち昇る煙の先を見つめている、ジョン、アリア、そしてデナーリス。。。
ウィンターフェル城内で開かれている厳かな祝宴の様子。
ジェンドリーが徐に立ち上がりアリアを探しに行こうとすると、それを呼び止めるデナーリス。
彼女はジェンドリーの出生の秘密を語り、彼にバラシオン家の嫡男として、主の居なくなったストームズエンドの領主に就任する事を要請する。
メリサンドルが勝手に命を絶った事に遺恨を残すダヴォス。
ティリオンはそんな彼を宥めながらも、差し迫る次の戦いを見据えている。
スターク家の跡取りの座を望まぬ姿勢を貫くブランに、羨望の眼差しを送るティリオン。
やがて彼はブライエニー、ポドリック、ジェイミー等の席に落ち着くと、悪酔いからブライエニーの貞操に言及してしまう。
徐に席を立つブライエニーの後を追ってゆくジェイミー。
ジョンを取り囲むトアマンド達は、彼がドラゴンを乗り回す武勇伝を語りだす。
その匹儔する様を眺め、複雑な心境がデナーリスの胸を霞める。。
ブライエニーへの恋心がジェイミーによって打ち砕かれたトアマンドは、ハウンドを誘い酌取りの女を抱こうとするが、彼は興味を示さず。
そんな彼の様子を伺うサンサに、ハウンドは彼女が受けてきた数多の試練を問い始める。
やがて臆することなく自分と向き合うサンサの姿に、成長を感じ始めるハウンド。。
ようやくアリアを見つけたジェンドリーは、領主の座を得た事を手土産に彼女に求婚。
アリアはそんな彼に優しく口づけを交わすも、公女の座を断り、自分の道をゆく思いをジェンドリーに打ち明ける。
ブライエニーの寝室へとやってきたジェイミーは、慣れない様子でトアマンドに対する嫉妬を口にする。
ジェイミーの本心を察したブライエニーは、おぼつかない手つきで服を脱ごうとする彼を手伝い、二人はきつく抱きしめ合う。。
酔いのまわったジョンの寝床に訪れるのはデナーリス。
しかし互いの血脈を知ってしまったジョンは、彼女を抱く事にさえも戸惑いを感じ始めてしまう。
出生の秘密を外部に漏らさぬ様、ジョンに固く誓約を求めるデナーリス。
けれど不器用な彼は、アリアとサンサにだけは真実を告げたい旨を打ち明ける。。
明くる日の作戦会議。
サーセイとの決戦を間近に控え、デナーリス側の戦力が著しく減少している事が明るみになり、皆は知恵を絞るが解決策は見つからない。
やがてジョンは、王都を孤立させる作戦を提案。
物資の補給路である海路をドラゴンで封鎖し、残りの彼らの全ての兵力を注ぎ込み、ゴールデンカンパニーに応戦しようとする。
サンサは疲弊した兵達の休息を提案するも、サーセイが軍を整える事を恐れるデナーリスは、進軍を決断。
サンサとデナーリスのわだかまりが広がりを見せる中、アリアはジョンを引き留め・・
アリアとサンサはデナーリスへの不信感を露わにし、ジョンを説得。
しかし家族の絆を信じるジョンは、ブランに自分の出生の秘密を二人に伝える事を託し・・・
ブライエニーと結ばれた事に、心底喜びを噛みしめ合っているジェイミーとティリオンの元へとやってくるのはブロン。
彼は、二人に下ったサーセイからの暗殺計画を打ち明け、報酬として得るリバーランドの倍の要求をクロスボウと共に突きつける。
ティリオンは止む無くハイガーデンの領主にする約束をブロンに提案し・・
出征の日の朝。
独り王都へと向かおうとするハウンドの後を着いてくるのはアリア。
ハウンドは兄であるマウンテンと、アリアはサーセイとの決着をつける為、旅路を共にする。
傷ついたレイガルの様子を気にかけながらも、ドロゴンに跨り戦線へと向かうデナーリス。
サンサはその様子を眺めながら、ティリオンにスターク家の抱える不安を打ち明ける。
ティリオンはそんな彼女を諭そうとするも、ジョンの出生の秘密を知り・・・
壁の北に戻る決心を固めたトアマンドにゴーストを託すジョン。
サム達との別れには、ジリのお腹に子供がいる事も彼は悟る。
か細く鳴くゴースト達を尻目に、ダヴォスと共にウィンターフェルから出征していくジョン。。
ジョンの血筋を知ったティリオンは、ヴァリスに相談を持ち掛ける。
北部では認められない二人の関係に、彼はデナーリスの治世に不安を抱き始め・・
ドラゴンを従え王都へ迫る洋上では、ユーロンの艦隊が彼らに迫る。
改良型のスコーピオンによって、呆気なく狙撃され海へ落とされるレイガル。
その魔の手はグレイワームとミッサンディ等が乗り込む船にも襲いかかる。。
ティリオン等は船を放棄し窮地を脱するも、小舟に乗り込み脱出を図ろうとしていたミッサンディはユーロン等に捕縛され・・
王都ではサーセイの計画通り、レッド・キープ(赤の王城)に群衆が雪崩れ込む。
ジェイミーとの関係を隠しながらも、腹に赤子を宿している事をユーロンに伝えるサーセイは、民衆の盾を使ってデナーリス等の持つドラゴンとの徹底抗戦を画策。
レイガルとミッサンディを奪われたデナーリスは、王都での大量虐殺に反論を唱えるヴァリスらの進言にも耳を傾けられず。。
やがてそれでもデナーリスの信念を信じ貫こうとする、ティリオンと合理的な案を唱えるヴァリスとの間にも確執が広がってゆく。。。
ウィンターフェルへその情報が伝わると、サンサはジェイミーに怨嗟の声を上げる。
やがて贖罪の意識に囚われていくジェイミーは、懇願するブライエニーの制止も振り切り、王都へと馬を走らせてゆく。
キングスランディングの城門で、いよいよ対峙するデナーリスとサーセイ。
城門の上に捕らわれているミッサンディの姿を目にしたデナーリスは、その憎悪を隠し切れない。
ティリオンとクァイバーンは王の手同士としての最期の会見の場を持つが、お互いの主張は相容れず。。
やがてティリオンは彼の脅しを無視し、サーセイに直接懇願。
彼女の内に宿る僅かな優しさに痛切に訴えかけるが、その言葉は覚悟を決めている彼女の耳には届かない。。
そしてサーセイの合図と共に、マウンテンの剣が振り下ろされると・・
城門の前に落ちる首をはねられたミッサンディの亡骸。。。
苦悶の表情を浮かべるグレイワーム達を残し、デナーリスは踵を返し、その復讐の炎をたぎらせてゆく・・・
・・脱力感がハンパなく、正直、ブログを書く気力さえ絞り出すのがやっとの状態・・・
お気に入りのジョラー亡き後、唯一希望を託していたミッサンディの処刑は、冒頭の甘酸っぱくて微笑ましいジェイミー、トアマンド、ブライエニー等の三角関係から急転直下、ゲースロの世界から今生の世の儚さを再びしっかり突きつけられたような気がした。。
少々急ピッチで尺を繋いだ感はあるが、デナーリスへの不信感を募らせるサンサ達の思惑は妥当にも見える。
ラニスター、アリン、ボルトン家と倒錯した名家ばかりを渡り歩いてきた彼女にしてみれば、信じられるのは血筋を交えたスターク家のみ。。
一見バラシオン家の公女になるかのように思えたアリアが、その婚姻自体を断ったのも、純潔な愛情をジェンドリーに貫く為だろう。
とは言え、ゲースロの世界ではここから悲劇が生まれる。
ましてや、ジョンの出生の秘密を知った上なら尚更。。
そこでタイミング悪く、頑なに血族の絆を信じようとするジョンには、やっぱり、`イーグリッドの台詞通り、「You Know Nothing!」と言わざるを得ないけど。。。
対して、デナーリスの心情は察するに余りある。
ジョラーやヴァセーリオンまでをも失い、彼女に残された忠臣はもはやティリオンのみの状態で、自分の入り込めない兄弟の仲睦まじい様子なんかを見せつけられてしまい、更に今まで受け続けてきた賛美の声が、愛する男の元へ移っていってしまったら・・・
ここで、グレイワームとミッサンディーを側に置かず孤独を引き立たせる演出は、ちょっと意図的過ぎて強引な気もするけど。。。
権威の中でしか友愛の情を表す事を知らない彼女にしてみれば、積年の恨みのある筈のバラシオン家のジェンドリーに領地を与える決断は、タイミングが悪かったと言えど、十二分に考慮して絞り出した精一杯の女王としての計らい。
つまり両者共に正論があるとは言えど、やっぱり、デナーリスの立場を察してやれないサンサには、あどけないからこその保守的な恐怖を感じずにはいられない。。
・・或いは、自ら抹殺しながらも、彼女の心の奥底に深く刻まれたリトルフィンガー譲りの歪んだ疑念なのか・・・
不意に登場したブロンとラニスター兄弟との駆け引きは、ちょっと雑な様な気もするが、ストークワーク家からジェイミーによって連れ出されなければ、サーセイによる暗殺計画のプロットまであった彼の役柄をここまで残してきた事を鑑みれば、もうひと捻り、彼の活躍の場があるのかもしれない。
大方の予想通り、悲劇が繰り返され続けるこの世界の中、ミッサンディの死から始まる復讐の連鎖によって、サーセイはおろか、そこに共依存を抱き駆けつけるジェイミー、無鉄砲なアリアを守ろうとするであろうジョン(或いはハウンド)、更にはジョンが向かえる事になるかもしれない悲劇に巻き込まれ、デナーリス自身の身にさえも危険が及ばない事を切に祈りたいが、それは人の世の性を描いたこの作品では、中々難しい展開かもしれない。。
そうすると・・・
シーズン8のPV通り、誰もいないウィンターフェル城の現実がもうすぐ側にまで迫ってきているのだろうか・・・?
Fight for the living. #GameofThrones pic.twitter.com/GpG7m53Nqg
— Game of Thrones (@GameOfThrones) April 2, 2019
せめてそんな世界に復活するホワイトキングの姿だけは、もう見たくないけど。。。
ため息と絶望感に打ちひしがれる中、冒頭でジョラーの亡骸に何かを囁いていてくれたデナーリスと、バッチリの立ち位置で人間顔負けの哀愁をたっぷり披露してくれたゴーストだけが、僅かな温もりを感じさせてくれるエピソードだった。
・・因みにデナーリスのサービスwによって今回映り込んだスタバのコーヒーカップの無料宣伝効果は、総額200億円の価値をもたらしたようだ。。
恐るべしゲースロの経済効果。。。
シーズン8第5話の感想はコチラ
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