マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『レイク・マンゴー』の私的な感想―トラウマ必至の最恐心理ホラー―

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LAKE MUNGO/2008(オーストラリア)/87分
監督:ジョエル・アンダーソン
主演:タリア・ザッカー

 洗練されたモキュメンタリーホラー

怖かったです。久々に。。

ハリウッド系絶叫ホラー作品が世間の話題をさらう中、最近のホラー映画の定義がちょっと曖昧になってきている気がしてます。。

霊的、ゾンビ的なモノ、スプラッター的に視覚に訴えるモノがホラーなのか、それとも心理的に恐怖を与えるのがホラーなのか・・

この作品は間違いなく後者なのですが、分かりやすい心霊現象やおばけ、ゾンビといった類のモノは一切出てきません。

不気味な映像やショッキングな描写も多少は出てきますが、視覚的な恐怖は最低限に抑え、じわじわと鳥肌がたっていく感覚の恐怖・・

洋画にしては珍しく、どちらかというと日本人向けな静かな恐ろしさを増幅させていくタイプのテイスト。

そして何よりも感心した点は、、

全編を通じて主役のはずのアリスが殆ど映像に出てこないという・・

それでも見終わった後に、主人公に対しての強烈な印象が残ります。

邦画で言えば『桐島、部活やめるってよ』的な、軸になる人間のエピソードを周りが語る事で主人公の物理的な映像描写がなくても、その存在をクローズアップしていくという表現方法。(哲学的には実存主義に基づいている)

この作品はそれを更にドキュメンタリータッチに加工し、死んでしまったアリスの回想をその家族や友人達が時間軸に沿って振り返っていきます。

しかし『ブレアウィッチプロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』の様に、全編徹底したモキュメンタリーとして描くのではなく、随所に広大なオーストラリアの自然風景や、人間たちの移りゆく心理描写を散りばめる演出で、ホラーだと分かっていてもついその映像美に見入ってしまう巧妙な仕上がり。

正直POV(人物からの主観ショット)方式で撮られている映画って、ちょっと観にくいんですよね。。

しかしこの映画ではインタビュー映像や定点カメラ映像等を駆使し、丁寧に主人公に対する周りの想いを描いている為、よくある人物の激しい動きによって起こるカメラブレで酔ってしまうこともなく、随所にイメージショット的な暗く淀んだ空気感満載です。
 

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 アリスに何が起こったか

この作品は軸であるこの事件の原因を、あえてはっきり明示していません

アリスが自殺なのか、他殺なのか、もしくは霊的な何かに取り殺されてしまったのか・・ 

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これからこの映画を観るヒト達の為に、今回はあえてあらすじを書きませんが、逆にそこがポイント

見方によっては幾通りにも考えられるこの映画の作風は、その謎を謎のまま終わらせることによってあえて、この作品の暗く寒々しい恐怖が増大していきます。

 

それでも、一つだけ気になるコトは・・

 

邦題のサブタイトルの意味がさっぱりわかりません。。

アリスの死から逆算して始まるこの物語は、その死後から半年以上にかけての親類や友人達らの心証を描いていて、彼女自身の過去の映像等も含めると3日どころか4,5年の期間の映像記録になってしまいます。

更に、どうもサスペンスかミステリー的なニュアンスのあるこの副題によって、この作品がヒトの心に訴えかける心理ホラー映画である事がボケてしまっています。

なのでパッケージの画像はあえて洋画版のモノを使用しました。

物理的なおばけ、ゾンビ等が登場する作品自体はむしろ大好きですが、やはり自分にとってのホラーはそのダークな映像手段、人物の表情、精神的な苦悩等を全て含めて見る側に恐怖を与える作品こそが本当のホラー映画なような気がします。

もう一つの隠れた心理ホラー映画はコチラから。。
www.mariblog.jp

 

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