マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『Love Letter』の私的な感想―青春の一ページに刻まれた記憶―

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Love Letter/1995(日本)/117分
監督:岩井 俊二
主演:中山 美穂/豊川 悦司、酒井 美紀、柏原 崇

 岩井俊二の長編映画処女作

近年大ヒットした映画『君の名は。』を観ていて、周りと同じようには感動出来なかった今日この頃。。

自分が年をとったのか、感受性のベクトルが変化してきたのか分からず悶々と悩んでいましたが、きっとその答えは、あの儚げでミステリアスなノスタルジーワールドは、自分にとってはこの作品が原点にあるからなような気がします。

言わずと知れた「岩井美学」の代表作。

この映画をきっかけに彼の作品にハマったヒトも多いんじゃないでしょうか?

ほろ苦いエピソードに情緒的でノスタルジックな映像描写を織り交ぜ、90年代の日本映画界を席巻したこの作品は、自分にとってもやはり思い出の名作です。

青春時代の切ない想い出の1ページを、優しく指でなぞるようなあの感覚。。

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―――主人公の博子は山で遭難した婚約者が忘れられず、ある日ふとしたきっかけで彼が昔住んでいた街へと想いの詰まった手紙を送る。
しかしそんな届くはずのない住所から、彼女の元へと返事が届き困惑する博子。
やがてその手紙の主は、博子の婚約者だった彼と同姓同名だった同級生の女性からのものだとわかり、二人は奇妙な文通を始めるが・・ 

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 劇中に出てくる主人公の中学時代のエピソードは、当時帰国子女で日本での学生生活を経験していなかった思春期こじらせ系の自分にとって、憧れの幻想そのもの。

同姓同名の男女というちょっと無理のある設定ではなくても、学生時代に抱いた淡い恋心が報われなかった経験は、きっと万人に共通するのではないでしょうか?

そして何よりも自分を虜にしたのは、岩井作品の真骨頂とも言うべき手持ちでのゆったりとしたカメラワークとこの繊細な光源の取り入れ方。 

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 ぬくもりのある優しい空間を見事に描写したこの映像技法は、当時としては正に革新的でその後の映像業界に多大な影響を与えました。

 岩井俊二を知らないヒトたちへ

この作品をきっかけに『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』、『花とアリス』等、数々の独特で斜光的な映像作品を創り上げてきた岩井は俊二ですが、ネットで色々調べていくと、どうも最近彼を知らない世代が随分多くなってきたみたい。。

・・それもそうか、この作品が公開されてからもう20年以上も経っているのか・・

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中山美穂ばりに感慨深い想いに捕らわれながらも、この稀代の名監督を知らない方の為に少し彼の紹介をしてみます。

岩井俊二は1963年生まれの仙台出身の監督で、通称ヨココク(横浜国立大学)の美術学科を卒業し、PVやミュージックビデオのディレクターとして映像デビュー。
その後CXドラマ『if もしも~打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の演出で、異例の日本映画監督協会新人賞を受賞。
更にこの映画は昨今のアニメブームの波に乗り、2017年、22年の時を経て、広瀬すず、菅田将暉等の豪華声優陣を迎えてアニメ映画化が実現しました。

後に『世界の中心で、愛をさけぶ』等で有名になった行定勲監督は元々彼の助監督で、その映像のタッチ、独特で繊細な人物描写等は岩井監督から継承したものと思われます。

記事の冒頭でも触れた『君の名は。』の新海誠監督は2016年に特集された『EYESCREAM増刊 新海誠、その作品と人。』の中で、同作品の様々な描写において、岩井俊二監督へのオマージュを散りばめていた事を明かしています。

そしてエンドロールには、スペシャルサンクスとして岩井俊二の名前が。。

と、ここまで書いて思ったのは・・

そうか、時代は繰り返しているのかというコト。。

何時の時代もヒトは、甘酸っぱい青春時代の思い出を夢見ていて、その映像作品の第一人者が自分達の世代が岩井俊二だったように、50代以上の人達には大林宣彦がいて、現代には新海誠がいる。。。。

劇中の最後に出てくるマルセル・プルースト作の『失われた時を求めて』の本が出てくる描写は、正にそんな淡い記憶のメタファそのもの。

そうして脈々と受け継がれている切なさいっぱいの青春映画は、何時の世も自分達に普遍的なノスタルジーな世界を提供してくれている気がします。

 

『Love Letter』
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