マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『レッド・スパロー』の私的な感想―最後の電話が物語る共産圏の女の実情―

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Red Sparrow/2018(アメリカ)/145分
監督:フランシス・ローレンス
出演:ジェニファー・ローレンス/ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ

 ジェニファー・ローレンスの究極の俳優魂 

ジェニファー・ローレンスってこんなに潔い芝居をする女優に成長してたんですね。

快活そうに見えてどこか幼気な雰囲気が魅力的だった彼女が、大人の女優として開花したその俳優魂をはっきり見せつけられたような気がします。

 

R15指定を受けたこの映画では彼女の大胆なフルヌードシーンでも話題を呼んでいますが、私的に一番驚いたのはまずその

『mother!』の時の印象的な困惑顔は殆ど冒頭にしかなく、画に写る彼女の顔はまるで心を奪われた人形の様に全くの無表情。

国家の思惑に全てを奪われた元バレリーナという悲劇のロシア美女の役柄が余りに良くハマっていて、終始見とれてしまいます。

 

監督のフランシス・ローレンスとは『ハンガー・ゲーム』以来からの付き合いの様で、少々過激過ぎるセクシーシーンに対しても彼女が躊躇なく体当たりで挑めたのは、この監督との深い信頼関係によるものでしょう。

私的には『早熟のアイオワ』の頃の初々しい儚さが印象的だったので、成長した娘を見る親のような感覚に襲われ、少し恥ずかしくなってきてしまいましたが。。

   

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―――ロシアのボリジョイバレエ団でプリマ・バレリーナだったドミニカは、演技中の事故が原因でその夢を絶たれてしまう。
途方に暮れていた彼女の元へやって来るのは、叔父のワーニャ。
ロシア諜報機関に勤める彼は、とあるスパイ活動をドミニカに手伝う様進言する。
病気の母親の薬代もままならなくなっていた彼女は渋々その任務を遂行するが、誘惑したターゲットの暗殺計画に巻き込まれてしまい万事休す。
やがて初めから彼女の才能を見初めていたワーニャによって、ドミニカはスパイ養成学校に送られててしまう。
赤い白鳥からレッド・スパローへ・・
CIAとの諜報合戦の中、ドミニカの運命が狂い始めていく・・・

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 共産圏の美女の実情 

ジェニファーが着こなす赤いバレリーナの衣装やドレスが、共産圏を暗喩した澱んだ深紅色なのが大分記憶に焼き付いていますが、ストーリー自体は大分勇み足なので、米露の対立構造とロシアスパイの実態にある程度イメージが沸かない方にはちょっとテンポが早過ぎる作品かもしれません。

ドミニカの心象風景やCIAの思惑等、隠喩的にでも感情描写をもうちょっと盛り込んでもらえたら、ジェニファーの演技ももっと観客に伝わりやすかったのかも。。

とは言え、そこが正にこの映画の狙いドコロの様で、ジョエル・エドガートン演じるCIAの諜報員・ネイトと接触していく過程でも、ジェニファーのあまりの感情を押し殺した演技に、彼女が2重スパイなのか3重スパイなのか或いはそのどちらでもないのか全く分からなくなります。

 

そしてそんな彼女の無機質な表情と洗礼された美貌に翻弄されていくのは、ネイトだけではありません。

それはロシア側の将校達も含め、叔父のワーニャや彼女の回りの女たちでさえも・・

 

更に彼女の妖艶な魅力と並行してサスペンスのトリックも中々のもの。

 

冒頭でマットが接触していた東西両方の諜報機関がその正体を探るロシアの裏切者“モグラ”の正体も、ストーリー中盤以降まで上手く謎に包まれています。

しかし、、

 

能面のようなドミニカの僅かな心の機微に集中して目を向けると、彼女の真意と謎の内通者の正体がうっすらと見えてくるかも・・

 

終盤の伏線の回収は少し辻褄合わせの様にも感じますが、ラストシーンでドミニカの電話口で鳴るメロディーが、この映画の中での彼女の心情をすべて物語ってくれています。

反米、或いは反共的な少し穿った見方をすると、自由主義なアメリカを手放しで礼賛している作品の様にも見えてしまうので、なるべくイデオロギーを持ち込まずに見た方がいいかもしれません。

 

寒々しい東欧の風景に溶け込んだ、妖艶で無機質なジェニファー・ローレンスの迫真の演技が、秘密主義のロシアの裏で健気に生き抜こうとする国民性を巧みに表した、彼らの儚い美しさそのものなのかも・・

 

「レッド・スパロー」
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