マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

日本サッカー史上初のベスト8を夢見た2週間。ロシアW杯で日本代表に足りなかったもの

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 ロシアワールドカップの日本代表を振り返って 

ワールドカップにかまけて映画の感想を書いている場合ではありませんでした。。


・・様々な思いが駆け巡ったこの2週間。。

絶対攻略不可能と思われた強豪コロンビアに競り勝ち、圧倒的な身体能力を誇るセネガルと引き分け、民族意識の強いポーランドの忖度のおかげでぎりぎりグループリーグ突破を果たした日本代表でしたが、ブンデスリーガのスター選手達を擁するレッドデビルズ・ベルギーの迫力の前には僅かあと一歩及ばず・・・

詳しいサッカー解説はテレビに任せて、自分は素人目線で見てきた外国と日本のスポーツの差を考察してみます。

    

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 サッカーの世界との差 

10年近く続いたスペインのポゼッションサッカーが陰りを見せ、堅守速攻のカウンター型が主流となった現代サッカー。

古くはヨハン・クライフの提唱したトータルフットボール等の魅せるサッカーから走るサッカーへと時流が変わり、日本は必死にそのグローバルスタンダードを追いかけてきた。

欧米等のチームにも多くの日本人選手が流入し、体格では劣っていても技術と雑草魂でその何人かは確かに栄光をもぎ取っている。

「どうせ日本人ごときがサッカーで世界に勝つなんて・・」

なんてサッカー未経験者の方は思うかもしれないが、それは違う。

むしろ、

「サッカーなら、もしかしたらありえるかも・・」

なのである。

チームスポーツとはよく言ったもので、サッカーはどれだけの強力なが集結していても、集団となると全く機能しなくなる事がよくある。

今回のロシア大会で言えば、メッシクリスティアーノ・ロナウド等が良い例で、日本が対戦したポーランドの英雄・レヴァンドフスキはドイツブンデスリーガで2度のリーグ得点王にも輝いている正に真のゴールゲッターだが、今大会では全くの不発。

日本はこのような世界の有名選手たちを緻密な計画と組織力で封じ込めてきた。

長友は言うに及ばず、本来攻撃的なポジションの乾、原口、大迫なども正にハンパない賢明な運動量でフィールドを駆け回り、ことごとくそれをカバー。

そして、彼らに疲れや苛立ちが見え始めたところの一瞬の隙をつき、ゴールをもぎ取る。

 

この狡猾だが死に物狂いの選手たちの姿が、人の胸を打った。

 

だからこそポーランド戦の見苦しいボール回しに非難も飛び交ったが、自分はやはり、ここに世界との大きな差があるように感じる。

 

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 日本人にあるもの、足りなかったもの 

日本人は一生懸命が好きだ。

それは日本固有の伝統的に受け継がれてきた文化であり美学

しかし西野ジャパンはその精神をも捨て去り、ハリルを解任した時からの日本サッカー界の至上命題でもあるグループリーグ突破への夢に思いを傾けた。

 

・・ここから、日本の慣れない即物主義への憧れが勢いを増してゆく。。

 

テレビのコメンテーターは口裏を合した様に西野の判断を擁護するが、自分はサッカーとは別のところでこの扇動的で盲目な日本人の危うさを感じた。

 

・・ひょっとしてあの時から、西野ジャパンはそれまで感じた事のない恐怖を背負って戦い始めたのではないだろうか?

 

それでもベルギー戦は西野の巧みな分析力と、彼がもたらした協調性の輪の中で育まれた団結力が功を奏し、後半開始7分で2点をリード。

 

この誰もが予想だにしなかった奮闘ぶりに、日本国中が一瞬、日本サッカー界前人未到の16強の壁を打ち破る夢を見たはずだ。

 

しかしこの2-0という日本が強豪国を相手にして見たことがないスコアで、自分も含め次の瞬間、国民全員も初めて怖さを体感した。

NHKの解説者も見事にこの洗脳を受け、その後やたらにベルギーの反撃の怖さを煽り始める。。

そしてこの国中の主観が選手達にまで伝わってしまったのか、焦燥していた様子のキャプテン長谷部たちにも感染。

猛追するベルギーは後半24分、DFフェルトンゲンの巧みなヘディングシュートを皮切りに、194㎝のボンバーヘッド・MFフェライニにあっさり頭で押し込まれ同点。

やがて日本は運動量の落ちてきた柴崎、原口に代え、本田を投入。

蛍の巧みな追いまわしと絶対的な存在感を誇る本田の迫力で、一度は息を吹き返したかのように見えたが、そこで逆に一瞬安堵した日本の隙を世界は見逃さない。

本田の思いが先走ってしまったコーナーからの高いボールを、GKクルトワがキャッチしてからわずか9秒後。。

キーパーから起点となったカウンターで、デ・ブライネが脅威的なドリブルを見せ一気にボールを川島の前まで運び、連なる赤い津波の様な鮮やかな連携で残された後半ロスタイムきっちり4分で逆転ゴール。。。

 

もう殆どドラマのようで、言葉が出ない。

 

倒れ込む乾。宙を仰ぐ香川。

大奮闘を見せてきた昌子がグラウンドを叩き続ける仕草が強烈に胸に焼き付いているが、この慣れない戦い方を強いられてきた彼らに酷く同情すると共に、日本人が目を背け続けてきた必死さの裏側にある恐怖の輪郭が垣間見えていた気がする。

 

守られた社会で暮らす自分たち日本人は、世界に比べ圧倒的に怖さに対する免疫力が薄いのだ

 

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 ホンダの意思を受け継ぐ者 

それでも、彼らの最後の奮闘ぶりは本当に感動的だった。

ラスト10分で投入された本田のゴール正面からの超ロングフリーキックは、8年前の南アフリカW杯デンマーク戦で見せてくれたあの伝説的な無回転シュートの弾道を彷彿とさせてくれる。

W杯のピッチ上でここまで日本代表をけん引してきた本田と香川のツーショットは、もう二度と観ることはないだろうが、決して忘れない。

まずはそんな彼らが残してくれた雄姿に改めて深く敬意を表する。

 

次のW杯には本田世代の功労者たちは誰一人残っていないだろうが、個人的にはこの大会で大いに飛躍してくれた鹿島のストッパー・昌子源が、キャプテンマークを巻いている事を強く望みたい。


・・その上で、

 

今回の大会で露呈した日本と海外の大きな差は「怖さ」への耐久度

これは想像力がないまま、安易に物事を解決しようとする日本社会の脆弱性にも比例している気がする。

 

個でも組織力でも世界に勝てなかった日本が、次に取るべき道はなんなのだろうか?

 

東欧からサッカーの怖さを教えに来たハリルを見切ってまで日本人らしさを追求し始めたのであれば、まずはその世界の迫力の裏にあるものを次世代の代表選手たちはいち早く感じ取れるようになってほしい。

 

スポーツ全般で圧倒的な強さを誇るアメリカが、何故サッカーでは強豪国になれないのだろうか?

何故、南米の選手は、貧困からサッカーを始めるのだろうか?

何故、あの中田英寿は現役引退後、旅人になったのだろうか?

それは、怖さを肌で感じ取ってきた事がある人間達にしかわからない、人のむきだしの本能を察する想像力

この感覚に日本人がしっかりと向き合い実感出来始めた時に初めて、日本のサッカー界の新しい未来が見えてくるような気がする。

自身の集大成として最後のワールドカップに望んでいた本田が、批判から守ってきた若い連中とその彼らに伝えたかった事を何度もアタマの中で反芻しながら、2022年のカタール大会でピッチに立つ新たな代表選手たちの姿を妄想し続ける。

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