Searching/2018(アメリカ)/102分
監督/脚本: アニーシュ・チャガンティ
出演:ジョン・チョー、ミシェル・ラー、デブラ・メッシング、サラ・ソーン
想像力を研ぎ澄ます新時代のサスペンスドラマ
この作品は映画館で観れて本当に正解だったと思う。
全編をPC画面上で完結させるという荒業をやってのけたこのサスペンスは、アラフォー世代の自分たちにとっては、コンパクトな画面で観てしまうときっと大いに混乱しただろう。
全米中のたった9館とインドネシアでのみという異例の限定公開形態で上映されたこの作品は、そのストーリー構成の巧みさにおいては近年でも群を抜いて秀逸。
行方不明になった娘をネット上で探し回る父親の話なんて聞いてしまうとどうもありきたりなような気もするが、こちらが感傷的になっているワケでもないのに、この作品はウィンドウズ画面から始まる最初のたった10分間で観客のココロをガッツリ捉えてくる。
つまり、一見無機的なスリラーのようで、この映画が本当に描こうと目指しているトコロは、仮想現実空間の裏にある人の温もりだ。
そして一つの画面上で展開するという構成上、どうしても単調になりやすい作品のスピード感も、あらゆるメディアを駆使した他画面世界を駆使し、驚くほどの躍動感を伝えてくる。
劇場では若干若者の驚嘆する声が多かった気もするが、自己表現の仕方が分からず蒙昧しているイメージが付きまとう彼らとの接し方に戸惑っているオトナたちには、一度はこの作品の世界観を通じて見えてくる彼らの感情の奥行を察してみてもらいたい。
―――PCの画面上に流れる家族の風景。。
妻のパメラを亡くしたデヴィッドは、在りし日の彼女の姿を薄暗い部屋の中で一人鑑賞している。
ホームビデオに映るピアノを弾く娘の脇には、いつも笑顔の彼女がいた。。。
やがて高校生に成長した娘のマーゴットは、父親との関係は疎遠になる一方。
小言を述べながらもそんな彼女と必死にコミュニケーションをとろうとデヴィッドは気をもむが、娘との距離は一向に縮まらない。
そんなある日、友人との勉強会に出かけたのを最後に、彼女は忽然と姿を消す。
不安に襲われながらも、マーゴットのタブレットからその消息を追うデヴィッド。
彼はそこで、ようやく自分の娘に秘められた世界がある事に気づく。。
そして安否不明のまま時間だけが悪戯に過ぎていき、デヴィッドが等々彼女の車の行方を見つけだした事で、いよいよ警察の手による本格的な捜索が開始されていくが・・・
リアルな質感と緊張感
「監督の意図がなんか透けて見えちゃって・・」
映画を観ていてそんな風な感覚に陥った事はないだろうか?
映画は通常、とうしても様々なカットやカメラサイズ、或いはそのアングルなどにも監督の意思が滲み出てしまうものだが、この作品はそういった主観をごっそり排除した事によって、ダイレクトに主人公の心情のみをクローズアップさせ観客に伝えてくる。
それは、例えば画面上でフリーズするカーソルキーだったり、入力されては消されていく文字やメッセージの数々なのだが、その画面の奥で躊躇しているであろう人為的に作り上げられた間の見せ方がとてつもなく上手い。
やがてそんな主人公の目線にいつの間にか溶け込んでいってしまうと、そこから始まるバーチャルな体験映像は、あたかも観客自身に起こった現象の様に錯覚させられてしまう。
とは言え、そのディティールやつじつまが多少なりとも雑に感じてしまうと、こちら側は一瞬にして温度が下がってしまうのだが、この映画のスクリプトには抜け目がない。
テレビ電話映像はもちろんの事、FacebookやInstagram、更にYouCastやネットニュース、監視カメラ映像等に至るまで、ネット上に溢れている様々なメディアツールを取り入れて、リアルな質感と緊張感を保ち続ける。
ジョン・チョー演じる父親のデヴィッドと若干世代が近い事もあり感情移入しやすかった点は否めないが、娘の安否を探る為、必死になってティーンエイジャーの世界の感覚に追いつこうとしている彼の様子はなんとも微笑ましく見えてくる。
更にその展開が二転三転していく内で、彼がバーチャルな空間の中からリアルな娘の質感を感じていく様は、これまでの映画を観るという既成概念をもすっかり取り払ってしまった上で伝えてくる全く新しいカタチでの映像表現の在り方を提示してくれた。
そしてどうしても気になってしまうのは、行方不明になった娘の安否なのだが、、
これはやっぱり皆さんの眼できっちり確認してもらいたい。
そこには、只のミステリーの謎解きだけではなく、ネットの世界から現実へと繋がる本当の人間の情動がしっかり映し出されているはずだから・・・
『search/サーチ』は
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