13 Reasons Why Season1/2017~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:キャサリン・ラングフォード、ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、ブランドン・フリン、マイルズ・ハイザー他
「13の理由」のついて
いよいよ『13の理由』シーズン3が配信されました。
シーズン3第1話からの感想はコチラから・・
カリスマアイドルのセレーナ・ゴメスの製作総指揮のもと、世界中のティーンエイジャーに注目を集めている女子高生の衝撃的な自殺の原因を追究していくこのドラマですが、日本人の若者には、劇中の登場人物はどのように写っているのでしょうか?
今回はそんなシーズン1のあらすじと感想、細かい描写で描かれたアメリカの高校生活の実態を紹介していきます。
以下シーズン1までのネタバレを含んでいますので、まだ観てない方はご注意下さい。
シーズン1までのあらすじ
高1年からの転校生だったハンナ・ベイカーが自殺して数週間。。
表向きは平穏を取り戻していたリバティ高校で、ハンナに淡い恋心を抱いていたクレイは一人、漠然とその現実を受け止められずにいる。。。
そんなある日、彼の元へと届けられたカセットテープには、彼女が残した肉声でその自殺の原因が赤裸々に残されていた・・
動揺を隠し切れないクレイは、親友のトニーに見守られながらそのテープを聴き進めていくが、次第に明らかになっていく様々な彼女の周りの人間達の本性を知り、苦悩が広がっていく・・・
それは十代特有の些細な心のすれ違い。。。
ハンナの最初のミスは、ファーストキスの相手だったプレイボーイ・ジャスティンに携帯で撮られたちょっと恥ずかしいパンチラ写真が、SNSを通じて校内に拡散されてしまった事からだった。。
同じ転校生仲間だったジェシカとアレックスとは、交際を始めた二人のちょっとした悪ふざけから、ハンナに僅かなコンプレックスを抱いていたジェシカの嫉妬心に火が点いてしまい、結局、3人の友情はあえなく崩壊。
優等生のコートニーとは、二人が仲を深めていくその過程で、彼女の意外な性癖をカメラオタクのタイラーに盗撮されてしまった事により、疎遠になってゆく。
生徒会長のマーカスや新聞部のライアンからは、優等生男子ならではの、彼らの自己顕示欲に利用され、ハンナの心の瑕は更に深まる。
バスケのスタープレイヤーだったザックとは、その彼の幼い臆病さが原因で、徐々に距離が離れていってしまう。
映画館でバイト仲間だったクレイに、ハンナは一度は心を開きかけていた時期もあったが、初心で女子との会話経験すら少ないクレイには、彼女のその若く複雑な乙女心は上手く伝わらない。
夏休み(学期末)を迎え気分一新、髪をショートカットにして新しい人間関係の再構築にチャレンジしようとしていたハンナだったが、クレイに誘われたジェシカのホームパーティーで、彼女は衝撃的な現場に居合わせてしまう。。
それは酔いつぶれて眠るジェシカを、強姦する学園のスター・ブライスの姿。。。
彼に忠誠心の残るジャスティンは、当時自分のガールフレンドだったジェシカを守る事が出来ずに、それは、友人だったハンナもまたしかり。。
彼女の心はどん底まで深く傷つき、その傷心からくる純粋な正義は、新たな友情が芽生えそうだったシェリとの間にも、亀裂を生んでしまう。
孤独と絶望感に飲み込まれてくハンナは、勇気を振り絞り一度は親に助けを求めるが、新規事業の立ち上げで経済的に苦しい状況だった彼らにその声は届かず、彼女の闇は更に一層広がっていく。。
そんな自暴自棄になりかけたハンナが、あろうことか、最後に辿り着いてしまうのは、レイプ魔のブライスのホームパーティー。
孤独でナイーヴな彼女が、学園の強固なヒエラルキーに逆らえるはずもなく、ハンナもまたジェシカ同様、ブライスの女遊びの餌食に。。。
完全に心を壊されたハンナは、学園のスクールカウンセラー・ポーターにその最後の救いの手を求めるが、可視化されない十代の闇に大人は立ち入る事が出来すに、遂には、彼女は自殺の道を選んでしまう・・・
シーズン1の感想
このドラマの一番の衝撃は、あらすじにも書いたハンナに起きた出来事が全てが明らかになった後のクレイの心情。
・・想像してみて下さい。
大人になると忘れてしまいがちですが、まだ全てが未熟だった若い頃に、好きだった子の自殺を止められなかった経験を持つと、その子の未来はどう変化していくのでしょうか?
ましてや、、
その彼女も、自分にまた、微かな恋心を抱いていたのだとしたら・・
そのトラウマは正に想像を絶する悲劇。
不意に広がってゆくクレイの妄想世界の中で、彼がハンナに伝えられなかった愛の告白をした後の、
「生きてる時にゆってよ・・」
という彼女の台詞には、久々に全身に鳥肌が立ってしまいました。。。
このドラマはそんな十代の心の機微をまっすぐに捉え、更にそこから必死に立ち直ろうとする若者たちの姿をしっかり描写していきます。
登場する若者たちには全て生々しい存在感があり、その彼らに共通するのは、未だ成長過程にある未熟な精神状態の中での微かな心の揺らぎ。。
運が悪かったといってしまえばそれまでかもしれませんが、ドミノの様に連鎖していくそれぞれの弱さが、一人の少女をゆっくりと死に追い詰めていく過程は余りに痛々しく、そしてリアル。
・・思い返せば、誰もが背負っていたはずの青春の瑕。。。
そんな儚い彼らの日常を通し、蹂躙されていく若者たちの性の実態と、現代社会の象徴とも言えるSNSの危険性を痛切に実感出来るドラマでした。
シーズン1で描かれていたアメリカのハイスクールライフ
『13の理由』の中に登場するアメリカの高校生活には、実体験のある方でないと少し理解しずらい描写が数多くあります。
なのでこのドラマを見るに当たって、日本の高校生活を送られてきた方には馴染みの薄いその生活を、著者の実体験をもとに、少し説明してみます。
①アメリカの高校
アメリカの高校は基本的に4年制で、日本の中学3年生から高校生として認知されるようになります。
それぞれを1年生はフレッシュマン(Freshman)、2年生をソフモア(Sophomore)
3年生をジュニア(Junior)、4年生をシニア(Senior)と呼称し、当たり前ですが日本のような厳しい上下関係は殆ど存在しません。
下級生からすれば先輩はいい兄貴や姉貴のような存在で、劇中ソフモアのクレイの心情を気にかけるジュニアだったジェフに、その様子が見て取れます。
②開きにくいロッカー
アメリカの高校の殆どでは、廊下に各自のロッカーが用意されます。
日本で言えば自分の教室の机の中のような感覚で、生徒によって入れているモノも様々。
コツを覚えないと中々空きにくいこのダイアル式のロッカーには往々にして持ち主の性格が色濃く反映され、勉強嫌いだった自分は殆ど教科書も入れず友人たちの写真を張りまくっていましたw
③車での通学
日本人にはちょっと違和感を感じるかもしれませんが、アメリカの多くの州では16歳から運転免許の取得が可能です。
車での通学を許可されている生徒は大抵自立した教育方針の家庭が多く、経済的、地理的な状況にもよりますが、シニアまで親の送迎や自転車等で高校に通う生徒はかなり稀。
ソフモアあたりで免許を取れるようになるまでは、友人や恋人にその送迎を頼むのが一般的ですが、これが続き過ぎると、妙な上下関係が生まれてしまうのもまた事実です。
④新学期、ホームパーティー、マリファナの感覚
アメリカの高校の殆どは9月から新学期が始まる為、日本人の春から始まる感覚とは少し異なっています。
夏休みは6月から3ヵ月近くもあり、この期間に家族での長期旅行やサマーキャンプと呼ばれる合宿に参加する生徒もいます。
ホームパーティーの感覚は日本で言えば合コンやBBQの感覚に近いのでしょうか?
大体が親が留守の家に集まるので、万国共通で若者が羽目を外し過ぎる事もしばしば。
日本では完全にタブー視されているマリファナも、安い煙草感覚で吸っているアメリカの高校生も結構実在します。(裕福で放任主義な家庭の子の家では、質の低いコカインが出てくる場合も・・)
⑤スクールカーストの実態
『13の理由』の中核にある関係性です。
これが理解できていないと、ストーリー上の若者たちの心情がちょっと察しづらいかもしれません。
日本の学校でも感覚的に残る“足の速い子はカッコイイ”的な上下関係が、アメリカの高校には如実に存在します。
一般的には主にアメフト、バスケ、野球部等の体育会系の生徒はジョックス(Jocks)と呼ばれ、それ以外の文化系生徒はナード(Nerd)と侮蔑を込めて呼ばれます。
一方女子の花形はチアリーダーで、学園のクウィーンになるにはここの出身が必須。
その取り巻きは総称してワナビー(Wannabe)等とも呼ばれ、学園生活がここで大きく左右されます。
ジョックスが牛耳るスクールカーストの関係性の中では、その最下層に必ずターゲット(Target)と呼ばれるいじめられっ子が存在し、彼らの貯め込んだフラストレーションがコロンバイン高校銃乱射事件 等に見られる凄惨な校内での殺人事件に繋がっていく事例も報告されています。
十代の目線からだけでなく、その世代の親の視点からも社会問題のいじめの実態を繊細に描写したこのドラマは、Netflixにてシーズン3が全13話配信されています。
『13の理由』はNetflixで観賞できます。