You Were Never Really Here/2018(イギリス・フランス・アメリカ)/90分
監督・脚本:リン・ラムジー
主演:ホアキン・フェニックス/エカテリーナ・サムソーノフ、アレックス・マネット
ホアキン・フェニックスの瞳
・・腹を据えて観ないとちょっとシンドイ映画かもしれません。。
90分という割り合い短い映画でしたが、どうも3時間くらいの体感速度を感じてしまうのは、劇中永遠に続きそうな孤独感。
戦争で癒えない瑕を負った男のカタルシスをこれでもかという程詰め込み、観賞後の一服がこんなにも心休まった作品も久々です。
原題の『You Were Never Really Here』を『ビューティフル・デイ』に変更した事がこの映画の唯一の救いと言えるでしょう。
『万引き家族』に触発され、アート過ぎる傾向の強いカンヌでそれなりの評価を得た作品を少し観てみようと思い手を出してみましたが、そのあまりにも訝しい主人公の澱み具合に一瞬、眉を顰めてしまいます。
第70回のカンヌ国際映画祭でフェニックス(男優賞)とラムジー(脚本賞)を受賞したこの作品の主人公は、アラフォーにとってはもはや伝説の俳優・リバー・フェニックスの実弟・ホアキン・フェニックス。
自分が疎かっただけかもしれませんが、彼はラッセル・クロウ主演の『グラディエーター』を始め、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』や『ザ・マスター』等で骨太の個性派俳優に成長を遂げているんですね。
それでも瞳の奥に常に寂しさを抱いている表情には、どこか兄の面影を漂わせています。
この映画はそんな哀愁と絶望に満ちた彼の髭面が、ラスト5分でようやく愛おしく思えてくる少し狂逸した作品です。
―――ホアキン・フェニックス演じる退役軍人のジョーは、言い知れぬ孤独を抱え日々を暮らしている。
少し痴呆症が入った老母の面倒を看ながら、彼が生活の為に引き受けるのはエンジェルという仲介役を通して知り合ったマクリアリーからの依頼。
それはヴォット上院議員の妻の死後、行方不明になった娘・ニーナの救出作戦。
彼女は闇の少女売春組織の手に堕ちており、ジョーは自身のトラウマからの脱却を仄かに感じその仕事を引き受けるが・・
男の絶望感
叙情的なカンヌ出品作品らしく、ジョーのトラウマを説明する台詞は一切ありません。
無駄な会話シーンを徹底的に省いた分、この作品で強調されているのは物憂げな静物描写。
観客はそんなジョーの心象を描いた暗喩と、劇中に散りばめられた彼のモザイクの記憶を手繰り、けたたましく流れ続ける音楽を背景にジョーの秘めた闇を咀嚼していく作風。
クライムサスペンスやスリラー映画のようなイメージで見ると、あまりに口重なストーリー展開にちょっと辟易してしまうかも・・
なのでこの映画はヨリで観るより、ヒキで観るコトをまずはおすすめします。
それは例えば美術館で絵画等を見る時の様に、ただ彼の孤独を感じる事。。
wikipediaを読むと、FBI捜査官だった彼がPTSDを患っているバックグラウンド等が記されていますが、劇中では一切その顛末は描かれず彼は只管に闇に魅せられています。
そんな彼の唯一の救いは、彼が組織から奪還する少女ニーナとの関係性なんですが、これも中々にシュール。
侘しい男の半生が少女との出逢いによって微かな希望を持てる『レオン』のような展開を最初は期待して観ていましたが、その絶望感はちょっと独特。
アクションや殺害シーンの描写はよりリアルさを追求する為端的に、救出された後のニーナが一貫して終始無表情のままの演技も作品全体のダークな質感を保っています。
男女の孤独の表し方の違いなんでしょうか?
雄弁な女の孤独を描く映画『女神の見えざる手』の正に対局のような男の絶望感。
ふたりが去った後のダイナーのテーブルに被せ流れるエンドロールが、この作品の重苦しい余韻を更に膨らませ、観客にその後の彼らの結末を思い描かせてきます。
見ている側の体力と精神状態によって様々なストーリーが創り上げられるテイストなので、やっぱりこの手の作品は側で中和してくれる人でもいない限り、劇場で独りで見るのはあまりお勧めできない映画かもしれません。。。w
「ビューティフル・デイ」は
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