マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『愛の渦』の私的な感想―裏風俗の闇の中で蠢くヒトのホンネ―

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愛の渦/2014(日本)/123分
監督/脚本:三浦 大輔
出演:池松 壮亮、門脇 麦、滝藤 賢一、新井 浩文、三津谷 葉子、赤澤 ムック、窪塚 洋介、田中 哲司

 曝け出した性欲

・・あまりにも情けない新井浩文の逮捕に動揺が隠し切れないでいる今日この頃。。

彼の悪癖を擁護するつもりは更々無いが、それでもあそこまでピュアな悪意を見事に発せられる俳優を、ベタな悪役ばかりが目立つ現在の日本映画界から追放してしまうのはあまりに惜しい。

そんな彼が深く慚愧に耐え、何時の日か必ず業界に復帰してくる事を切に祈って。。。

 

監督自身が主催する劇団「ポツドール」で、2006年演劇界の芥川賞と謳われる岸田國士戯曲賞を受賞した同作の戯曲を映像化したこの作品のテーマは、ずばり性欲

更にその恥部や醜態までをも赤裸々に描いてみせた監督の度量も素晴らしいが、豪華俳優陣が挙って裸の演技を見せつけてくれた事には感動すら覚えてしまう。

乱交パーティーの主催者側を演じる田中哲司、窪塚洋介以外は、全キャストほぼラストまでバスタオル一枚で過ごすという空間は、まるで白昼夢を見ている様な異様な感覚。

 

・・そしてあの死んだ目つきをした男だけが、そんな異空間の中で唯一リアルな悪態を終始つき続けてくれていたのだが・・・

 

 

 

 

―――その日暮らしのフリーター、派遣OL、妻子を持つ営業サラリーマン、ストレスフルな保育士、童貞の巨漢労働者、アバズレの常連ビッチ等が集まるそのマンションの一室では、夜な夜な怪しい乱交パーティーが繰り広げられている。
行き場のない性欲にかられたニートのイサムは親からの仕送りにまで手をつけ、その甘美な世界に引き寄せられるように迷い込んでくる・・
やがて清楚な女子大に通うサトミも、おしとやかな仮面の裏で湧き上がってくる衝動を抑える事ができず、その奇妙な空間に足を踏み入れてくるのだが・・・

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 欠如する感覚と露わになる本能

前もって言っておくと、この映画にエロを期待するとだいぶ痛いしっぺ返しを食らう。

それは、文字通り名優たちの体当たりの演技で暴かれていく人の深層心理。。

平凡な日常の中で誰もが一度は夢想するであろうその淫靡な妄想は、いざ本当にその扉を開けてみると、そこにはあまりにもイタイタシイ現実が待ち構えている。

それを真正面から伝えてくるのが冒頭でのあまりにも長い沈黙シーンなのだけれど、劇中の台詞で容赦なく心を切り刻まれたくなければ、ここでリタイアしておくのが賢明なのかもしれない。

互いの名前も知らずに集まってきた彼らが性欲のみを満たしていく過程で、徐に露わになっていくそのホンネは、あまりに無神経で剛速球な痛みであるからだ。

それでも登場人物たちは、誰も傷つかないし響かない。

それはまるで、剥き出しになった自分の本能を何処か遠い異次元に追いやっているかの様に・・

 

つまり淡白に性処理だけを求めやってくる彼らには、初めから情という感情が欠如している事を示唆している。

 

中盤からはもうスポーツ感覚の様にセックスを楽しみ始める彼らの様子には、滑稽でもあるが、オペラ調のサントラとも混ざり合い何故か微笑ましく感じてしまう程。

 

しかし、初心な若者にとってはそうはいかない。

割り切った身体だけの関係から始まったとしても、無垢な童心を秘めた男は、大抵その相手に少なからず恋心を抱いてしまう。。。

 

そんな折にやってくるスワッピング希望のヘタレカップルなんかは、まさしく歪んだ男の独占欲の象徴なのだが、そんな潔い彼女らの脱ぎっぷりに苦笑なんかしていると、新井浩文演じるフリーターの鋭いナイフの様な台詞に、再び心をグッサリやられてしまう。

つまりこの映画は、ある程度心の予防線を張って見ていかないと、あまりに辛辣で無機質なコトバの数々に卒倒してしまいそうになる程の怪作なのだが、一見心のない人間を完全に演じきっている窪塚洋介から零れ落ちる情動が、“愛の渦”の中心に添えた裏のテーマでもある。

そんな風俗壊乱の宴の夜は、やがて窓から差し込む朝日によって終わりを告げるが、欲望を曝け出した先に見えてくる男と女の差異は、劇中の池松、門脇両名のセンシティブな演技同様、きっと心の強さの違いなんだろう。

 

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