13 Reasons Why Season3 Episode13/2019~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他
シリアスな学園ドラマ
とうとう大詰めを迎えた『13の理由』、皆さん的にはどうでしたか?
いじめ問題から、レイプ、自殺、銃規制、青少年法、更には若者に蔓延するドラッグの実態から不法移民問題、性差別と、もうアメリカの底辺に蠢く社会悪がてんこ盛り過ぎて、なんだか気が重たくなっちゃう感じ?
それとも、そんな問題山積みの中、深まる友情や愛情、或いはそれをそっと見守り続ける家族の絆なんかに、少しはほっこりできたでしょうか?
当初のサスペンス色が若干薄れても、若さゆえの悩みをしっかり掘り下げた今回のシーズンは、私的には大満足してます。(もう、ウザ過ぎるアニの浅はかさも含めて♪w)
だって最近、こーゆーシリアスな学園ドラマって日本じゃ滅多になくないですか?
信仰心が何度も否定されてきた日本人は、その救いをアニメに求めます。
でも、所詮2次元の世界の夢物語じゃ、どうしても人の生死が若干伝わりにくい気がするんですよね。。
そんな中、悩みや不安を抱えるドンピシャの世代の若者達の様子を、リアルに捉えてきた『13の理由』は、何故人を傷つけちゃいけないかという素朴だけど、根本の問題にしっかり焦点を当ててる気がします。
更に、このドラマがそんな情操教育の為だけのものかと言えば、そうでもなく・・
そんな悩みを抱えた子供達と接する親世代、或いは年月が経ってもそのトラウマをずっと抱え続けて生きる病んだオトナ達にも通じる事のような・・
それをテレビの中だけの他人事ととるか、或いはしっかり向き合ってみるか。
先進国中最も自殺率の高い日本で、自分達はその不平不満をSNSやブログで顔の見えない不特定多数にぶつけるのみ。
そんな傷つく事を恐れまくる自分達が、もう一度現実世界の人間との体感温度を味わってみる為の、指針となるドラマになってほしい!
・・てゆー、完全な願望ですw
以下、『13の理由』シーズン3最終話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
死者をして死者を葬らしめよ
囚人服を着せられたモンティーが、刑務所の廊下を歩いている。。
面会に来た父親に、彼が自分がゲイである事をカミングアウトすると、父親はその顔に徐に唾を吐きかける。。。
GPSを付けられながらも、仮釈放されるクレイ。
殺害容疑のかかった彼の悲壮感に、ジャスティンはかける言葉もなく。。
警察署内では、アレックスの父親がブライスの殺害現場に残されていた足跡に気づき、そこにザック以外の人間の痕跡があるのを見つけてしまう・・
ブライスの死体が上がったふ頭に、花束を持って現れるノラ。
その悲しみを押し殺す表情。。
スクールカウンセラーに呼び出されるクレイ。
彼は学校と教師達の対応に、あからさまに絶望感を滲ませ・・
母親の心配をよそに、警察の呼び出しを受けるアニ。
彼女は、クレイを守る為の偽装工作を思いつき・・・
取調室で、事件の経緯を語り始めるアニ。
彼女はタイラーの襲撃未遂事件、トニーの親の強制送還、更にアレックスの売春やジャスティンの薬物使用についても、赤裸々に告白する。
そしてその全員がお互いを守る為に、秘密を共有している事も。。
・・モンティーから受けた暴行の後、その記録写真を撮っていた事をアレックスに打ち明けるタイラー。
・・・その癒えていく傷と共に、彼の表情にも変化の兆しが・・
アレックスの異常な兆しに気づき始めるクレイ。
彼が口実を見つけ、アレックスの告白を引き出そうとすると・・・
・・ホームカミングゲームの日の夜の真実を告白しはじめるアニ。。
彼女は、モンティーとブライスの確執を語りだすが、その証言とは裏腹の彼らの過去が彼女の言葉にシンクロしてゆき・・・
・・ゲーム中、ブライスを執拗に追いまわすモンティー。
しかし、ブライスはその敵意を見透かし、彼を見捨てる。
言い様のない虚しさに襲われたモンティーは、自分の写真を撮っていたウィンストンにその身を委ねる。。
激しく求めあう二人。。
しかし、ゲイである自分を認められないモンティーは、その苛立ちを募らせ・・
タイラーをレイプしたモンティーの秘密を、ブライスが知っていた事を供述するアニ。
・・そして、そのモンティーの裏切りと怒りが、ブライスの殺害動機に繋がる事も。。
密売人から買ったヘロインでハイになっていたジャスティン、親の不法入国の為ギャングとの密会をしていたトニー、更に怯えるタイラーに寄り添っていたアレックスの事等、彼女は嘘と真実との入り混じった彼らのアリバイを、次々と赤裸々に語りだす。
そして、状況証拠の出揃っていたクレイを守る為、自分がクレイと一晩中いたという嘘も・・
・・ザックに殴られ、地面に倒れているブライスの前にやってくるのは、ジェシカとアレックス。
ブライスは血の付いた手で、胸元からテープを取り出す。。
それを拾い上げ、そのまま立ち去ろうとするジェシカに、ブライスは必死に温情を求めるが・・
・・見かねたアレックスは、動けないブライスに肩をかす。
しかし、その傷の痛さから、ブライスの目に宿る憎しみを感じ取ったアレックスは・・
突き飛ばされたブライスは、海の中へと沈んでいく。。
その様子を呆然と眺め、見つめ合う二人。。。
アレックスの過失を知り、クレイはタイラー、ザック、トニー等と口裏を合わせる。
やがてモンティーのアリバイだったチャーリーまでもが、ジャスティンを経由して、ブライスがジェシカに手渡したテープをモンティーのロッカーに潜ませる。。
・・アレックスの父親は、録音していたテープを止める。。。
彼は息子の犯した罪に薄っすらと気づきつつも、そこを支え合ってくれた仲間達の存在に涙を浮かべる。。
強い決意を胸に、偽証する事をも恐れずやってきたアニの健気さにうたれ、彼はモンティーが獄中で殺された事を告げる。。
アニは言葉を失いかけるも、ブライスとモンティーに苦しめられてきた仲間達の心情を必死に伝え・・・
クレイの部屋に集まる一同。。
彼らは、ジェシカの持っていたブライスのテープの複製に耳を傾ける。。。
薄暗い部屋で告解を始めるブライス。
彼は、ジェシカやハンナ、他にも数名をレイプしていた事をありのままに告白。。
その全校集会でジェシカのしたスピーチのニュアンスそのままに、彼は壊れた自分の欠片を拾い集めながら、贖罪の道を探している事を語り始める。。
・・何時になく真剣なブライスの肉声に、集まった仲間達は誰も言葉を発する事が出来ない・・・
・・真夜中にふ頭にやってくるアレックスの父親。
その空ろな表情で証拠になる息子の服を燃やしている様子。。
それぞれの家族の食卓の風景。
アレックスの家にはジェシカ、クレイとジャスティンの家にはトニーとケイレブが集まっている。
自らの過失と、悩みを抱える全ての子供達の将来に、祈りを捧げるアレックスの父親。
ケイレブはトニーの存在を、ジャスティンは家族の大切さを、クレイは生の尊さをそれぞれに告げる。
ブライスの家へやってくるクレイ。
彼は、ノラへ心からの悔やみの言葉を彼女に伝え、アニの母親と対面する。
やがてアニが、クレイと真剣に交際している事を打ち明けると・・
モネでは、タイラーの撮り貯めていた写真の個展が開催されている。
その彼等のはにかんだ表情。
ザックはタイラーに、アレックスはジェシカに、そのそれぞれが抱えこんだ苦しみに理解が及ばなかった事を、改めて謝罪する。
人影に気づきアニが外に飛び出すと、そこにやってきていたのはウィンストン。。
彼は愛するモンティーに罪を着せた彼女に、酷く冷たい視線を送る。。。
クレイ達は自分達の犯した冤罪に頭を悩ませる。。
苦しみを抜け、希望を求めるジェシカ。
それを只、支えようとするジャスティン。
苦悩するクレイは、それでも生き抜く事を心に決め・・・・
・・ちょっと、大人目線過ぎるかもしれないけど、、
「お前にはいい人生を与えたかったが、私は他の方法を知らなかった。。」
とブライスの祖父ハリソンが、ノラに嘯く台詞が頭から離れません。。
臆病で不器用な大人の代弁者の様な彼が、その死の迫った間際に彼女に告げるこの言葉が、『13の理由』の中で起こってきた、全ての悲劇の源のような気がしています。。。
思い返せば、ハンナの自殺も、ブライスの性癖も、アレックスやタイラーの秘めた瑕疵ですら、結局、きちんと子供に正義の定義を伝えられなかったオトナの過失というか・・・
いまいち辻褄の合わないアニの偽証言や、そのまどろっこしいミステリー、更に彼女がクレイに心を開くようになった経緯等等、問題点を上げればきりがありませんが、秘密を抱えた子供達が、その傷を癒す為に寄り添い合う様子は、どうしても胸にくるものがあります。
更にその様子に胸をうたれ、息子の犯した罪を闇に封じ込めようとするアレックスの父親の顔は、もうたまんなくなる・・・
・・思えば、実社会の生活においても、互いの本音を吐き出す事がどんどん難しくなって久しい今日、その弱さを互いに克服し合って、少しでも相手の不安に気付けていたら・・なんて・・・
結局、子供達は、そんな臆病な大人の背中を見て育ち、些細なわだかまりをこっそりしまいこみます。
・・まるで、どんな時も警戒心を全く解かない超現実思考の母親を見て育った、アニの様に。。
けれど、そんな妥協と強い精神力を持ち合わせているのは、歪んだ社会の真実に晒され続けてきたオトナ達だけ。。。
社会経験の浅い子供達が、それが衝動的な感情である事をどこかで知りつつも、夢を求めようとする姿は、あまりにやるせない。。。。
そんな彼等が、大人達の決めたあいまいな世界に反旗を翻す様に、友情でそれを乗り越えようとする様子は、例えそれが現実にはありえない妄想世界であったとしても、やっぱり希望が湧いてきます。
・・・だけど、、
アレックスがブライス殺しの犯人という筋書きは、多少その強引さを受け入れたとしても、結局、クレイを含めた全ての仲間達を、もう一度闇に突き落とすんじゃないでしょうか?
ギリギリのトコロで本音が漏れてしまったとはいえ、そのブライスの贖罪の人生を奪う権利は、誰にもないはず。。
更に、そんな結託した子供達のまさしくターゲットにされ罪を着せられたまま獄死したモンティーにも、或いはやり直せる可能性や、愛する者の存在があったのなら尚更。。
ここをきちんと大人側から伝える為には、互いを思いやるだけでは解決できない大きな障壁がある事を、今後は描いていきそう。。
例えるなら、現代版ドストエフスキーの『罪と罰』みたいな。。
テーマがだいぶ壮大に広がってきましたが、、
次のシーズンでファイナルを迎えるこのドラマは、その完結編で間違いなく命の尊さに焦点を絞ってくるでしょう。
じゃないと、ハンナやブライスの死さえも無駄になっちゃうので。。
あまりにもタイミングよく獄中で殺されたモンティーの死の真相、意味深な台詞を残しアニの元を去って行ったウィンストンの告白、更には、河から引き上げられたタイラーの銃に纏わるクレイ達の隠ぺい工作なんかも、ファイナルシーズンで生き伸びる事の意味を問う若者達のテーマに繋がっていきそう。
そうすると、、
どうしても断罪されてしまいそうな、ザックやアレックス、更に憎しみから溺れるブライスを見殺しにしたジェシカ、或いはその冤罪の意識に耐えられそうにもないクレイにも、かなり大きな変化が起きてくるんじゃないでしょうか?
ハンナの自殺から始まったこの学園サスペンスドラマが、その様相を社会派ドラマに変えていくにせよ、最期に生き抜く事の難しさを説くカタストロフィみたいにだけはならない事を切に願いつつ、次回の配信を首を長くして待ってみます。
エンディングに流れたDuran Duranの名曲『Ordinary World』の様に、クレイ達が普通の世界に戻れる日を祈って・・・
最期にひとつだけ付け加えると、、
前回のレイプ被害者の心を掴んだジェシカのスピーチが、ブライスの告白テープの台詞を引用していた事で、その贖罪の道半ばで死んでしまった彼も、きっとほんの少しくらいは、報われていた気がしてます。。。
『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。