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ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『13の理由』シーズン4第6話の私的な感想―タイラーの流す涙―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Final Season Episode6/2020~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他

 我慢する背中

昔の大人は、我慢する背中を見せながら子供を育ててきた。

それによって培われる向上心や忍耐力を信じて。。

 

舶来する文化によって、幾度も価値観を狂わされてきた自分達日本人の間では、それは唯一守り抜く事のできた美徳にもなった。

 

だけど、力で押さえつける文化の発達した欧米では、その事情はちょっと複雑になる。

彼らの作り出した規制や法律、或いはその哲学の中に、他者との共存理由はない。

言い換えれば、自分達の価値観と違う文化によって強いられる苦役があっては、その過酷な生存競争に打ち勝つ事ができなかったからだ。

それが、幸福の対となる資本主義の限界に繋がるとは気づかずに・・

 

ようやく中盤に差しかった今回の『13の理由』は、これまでのシーズンでもそうだった様に、ちょうどここら辺から大きな転換期を迎える。

青春グラフィティドラマから少し毛色を変え、欧米社会に渦巻く憂鬱の正体を、このエピソードを皮切りに、ゆっくりと浮き彫りにしていく。。

その最たる矛盾は銃規制の問題

数多くの悲劇を生み出してきたこの諸刃の刃は、我慢を強いられてきた反動によって鬱屈した思春期を迎える少年少女の心を、露悪的に切り刻んでいく。。。

シーズン4第5話の感想はコチラ

 

以下、『13の理由』シーズン4第6話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 木曜日(あらすじ)

救命救急の授業を受けているクレイとジャスティン。
ザックの事故現場の残像が頭にこびりついて離れないクレイをよそに、その人形の銃撃痕に、迅速な応急処置を施すタイラー。
そしてその様子を、トニーは訝し気に見詰める。。

自らの無力感に苛まれるクレイは、改めてカウンセラーの元へ。
やがて彼は、救えなかった相手に対し、自罰的な兆候のあるクレイの本質を見極める。

 

銃の売人とタイラーが密会していた現場を目撃した事を、ジャスティンに告げるトニー。
エステラに近づき始めたウィンストンは、モンティーのイヤーブックを入手。
動転して事故現場から逃走していたクレイは、ザックから絶交を告げられ・・

やがて新任の学長から、校内に非常事態を告げるアナウンスが流れる。。
動揺する生徒達を尻目に、タイラーが姿を消した事を察知したトニーは、アレックスとチャーリーにその懸念を打ち明け・・・

コーチの引率で、部室に籠るアメフト部の生徒達。
エステラはトイレへ、ジェシカはサークルの部室へ、タイラーへの疑念が晴れないクレイは、彼に無事を確認するメールを打ちながら、理科室に閉じ籠る。
やがて、クレイの元へやってくる幻覚のモンティー。。
彼は怯えるクレイに寄り添い、自分が刑務所で体験した恐怖を伝える。。

写真部の部室に閉じこもっていたザックに、その傷の痛み止めとして、強力な鎮痛剤を手渡すウィンストン。
不安に駆られたトニーは、物色したタイラーの鞄からマシンガンの写真を見つけ出す。

恐怖心が広がってゆくクレイの元には、やがてブライスの幻覚も。
クレイの自我は、その二人の言葉に惑わされる様に、徐々に崩壊を始める。。

トイレの個室に閉じ籠っていたタイラーを見つけるエステラ。
彼女は、その兄から受けたレイプの残像に怯えるタイラーに、そっと励ましの言葉を投げかける。

アニの留守電に、ふと懺悔の気持ちを吐き出すジェシカ。
ハイになったザックとウィンストンは、アレックスへの感情を本音で語り合う。。

 

やがて校内に、どこからともなく銃声が響き渡る。。。

過呼吸を起こすアレックスの両手を握り締めるチャーリー。
銃撃犯の心理を語り合うタイラーとアステラ。
シアトルにいる母親と電話で会話するジェシカは、精一杯の作り笑いで、その不安を打ち消す。

戦闘準備の体制を整えるディエゴは、銃撃犯を捕まえる事をコーチに提案。
しかし、その奮起しようとする決意をコーチにたしなめられた彼は、その怒りの矛先をやがてジャスティンに向け・・

死を覚悟したザックは、ブライスを痛めつけた事の告解をウィンストンに語る。
トニーは、学長にタイラーの銃の写真を届けるも、彼はその対応を直ぐに始めようとはせずに・・

悩みから救われなかった者の言葉を、代弁するブライスとモンティーの幻覚。
やがて、その妄想に追い詰められていくクレイは、表に出る扉の鍵を開ける。。

恐る恐る廊下を歩くクレイの前に立ち塞がるもう一人のクレイ。。
その襲撃犯の恰好をした彼の手にするマシンガンで、クレイは撃ち抜かれる。。。

妄想に戸惑うクレイを、自分の部屋に連れ戻す校長。
彼はその全てが訓練だった事を明かし、昂ったクレイのその感情を鎮めようとする。

ジェシカが閉じこもる部室へとやってきていたジャスティンは、封じ込めてきた彼女への思いを遂に告白。
やがて二人はその究極の緊張感の中、久方ぶりの口づけを交わす。。

後遺症に悩まされるアレックスに寄り添おうとするチャーリー。
そして彼らもまた、深い安堵の中、初めての熱い口づけを交わし・・

 

封鎖が解除された学校の廊下で、激しい剣幕で校長に詰め寄るクレイ。
やがて、激昂する彼を取り押さえようとした保安官から、彼が銃を取り上げ声高にその矛盾を叫び始めると・・

呆気なく取り押さえられ、混濁する意識の中を彷徨うクレイ。。
彼はストレッチャーに縛り付けられ、全校生徒が無言で見守る中、そのまま外へ運び出されていく。。。 

 

 

 

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・・・今回のシーズンで、まさにベストエピソードと言える程の衝撃でした。。

人を救う事で自分も救われたいと願う彼らの切実な願望は、やさぐれた自分の心理とまるっきりおんなじで、ちょっぴりこっ恥ずかしくなってきた。。。

 

・・コレ、本家の銃問題で苦しむアメリカの若者達の間では、どんな受け止められ方をするんだろう?


40分以上の尺を使って、学校での銃乱射事件の真相を掘り下げる内容は、シーズン1の自殺する過程を克明に描いた時と全くおんなじに、ちょっとした波紋を広げそう。。

僕らは危機の中にいる!」と声高に叫ぶクレイの台詞は、多分今回のファイナルシーズン全編を通じて、製作者達が必死に訴えたい心の叫び声にも聴こえてきました。。。

 

・・期待を裏切られる事を極度に恐れる十代の若者は、やっぱりクレイやトニーの様に、どうしても過ちを起こしかけたタイラーの事を、信じ貫く事は出来ないのかな。。

 

そんなタイラーのトイレの個室での独白は、心の痛みを止めたいあまりに、実際の銃撃犯にならざるを得なくなってしまった同じ犠牲者の悲痛な叫びそのまま・・・

 

ビッチ化してきたジェシカにはほとほと愛想が付きそうだったけど、死を間際にしても、親に助けを求めないいじらしさのせいで、あまりにも可愛く見えてきちゃうじゃないか!

・・でもこれが、本当に追い込まれた時の子供のホンネだとすると、ちょっとトラウマに感じてしまいそう。。。

 

それでも、、

幻覚というよりは、もうはっきりとクレイのソウルメイトの様に、彼のメンタルを追い込むメタファ的に登場するモンティーとブライスがお互いの顔を見つめう瞬間に、どうしても吹き出してしまいそうな衝動に駆られたのは、自分だけでしょうか・・?

ファイナルシーズン第7話の感想はコチラ

www.mariblog.jp

 

『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。

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