300/2006(アメリカ)/117分
監督:ザック・スナイダー 原作:フランク・ミラー
主演:ジェラルド・バトラー/レナ・ヘディ、ドミニク・ウェスト、デビッド・ウェナム、マイケル・ファスベンダー
アーティスティックな創作歴史ファンタジー巨編
珠にはこの手の映画で気分転換が必要です。。
アクション系ゲームが苦手な自分としては、コントローラーを持たずともPS4ばりの爽快な戦闘シーンをたっぷりと見せつけてくれるこの手の映画には頭が下がります。
Marvel系映画が苦手な方でも、アメコミ原作ですがこの映画の登場人物達は一応歴史上の人物をベースに描かれているので、ヴィジュアルのみを追求した『ゲーム・オブ・スローンズ』的な創作歴史ファンタジーとしても十分に楽しむ事が出来ます。
批評家の間では相当叩かれたこの映画ですが、『CASSHERN』の感想にも書いたとおり、映画はまずその作品に興味を持たれる事が一番大切。
『アベンジャーズ』あたりの全くの架空のアメコミヒーローに夢を膨らますよりよっぽど、実際の歴史との相違点に興味を持てるいいキッカケになる気がするんですが。。
更に現実社会の大人の関係に疲れたアラフォー世代が、頭を空っぽにして少年に戻れる映画としては正にうってつけな気がします。
―――紀元前480年、古代ギリシア時代の都市国家、スパルタにペルシア帝国からの使者が訪れる。
不服従をモットーに当時世界最強の重装歩兵軍を有していた彼らの王レオニダスは、使者の要求を一蹴。
しかしデルポイの神託によってペルシア軍との対立を回避させられてしまった彼らは、愛する妻を、そして祖国を守り抜く為、300人の親衛隊を率いてペルシア王クセルクセス率いる100万の軍隊との壮絶な死闘、テルモピュライの戦いへと身を投じていく。
筋肉美とアート
この作品においてまず誰もが注目してしまうのは、俳優陣の彫刻のようなその筋肉美。
主演のレオニダス演じるジェラルド・バトラーはもちろんの事、『アフェア 情事の行方』で第72回ゴールデングローブ賞にノミネートされたドミニク・ウェスト、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで有名なデビッド・ウェナム、『それでも夜は明ける』で第86回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされたマイケル・ファスベンダーと錚々たる名優たちが古代ギリシャの屈強な戦士達の芸術的肉体美を再現しています。
更に王妃ゴルゴ役には『ゲーム・オブ・スローンズ』の暗黒女王で一躍人気を博したレナ・ヘディ、敵役クセルクセスには『LOST』でパウロ役を演じたロドリゴ・サントロが圧倒的な異彩を放っており、アートな側面から見ても見応え十分。
歴史的な背景は一旦無視してでも、情熱的な古のマチズモな世界を体現させてくれる彼らの熱演には見事としか言い様がありません。
撮影はその殆どをスタジオ内でのグリーンバック処理で行われている為、映画評論家達からはCG合成技術の過多をよく批評の対象に上げられていますが、注目してもらいたいのは彼らのその世界観。
映像技法的なツッコミを入れる前に、スパルタ=ギリシャと聴いて人が想像する事は何でしょうか?
彫刻、芸術、文化、神話。
ドキュメンタリーや古代史の授業ではないので、まずエンターテイメントととしてのマジョリティのギリシャに対するイメージを正確に捉えている時点でこの作品は優秀と言えます。
この映画をキッカケに古代ギリシア人的ヘレニズム文化に興味を抱いた方も決して少なくないと思うんですが。。
史実との相違
とは言え、少々無理のある時代考証が多分に散見するので、誤解の無い様、主だった史実との相違点を調べてみましたの参考までにどうぞ。
①“アゴべ”と呼ばれる教育方法
日本人にはスパルタ教育と言った方が伝わりやすいかもしれません。
劇中、冒頭から過酷な試練を課されたレオニダスの少年期の描写は、実際にあった“アゴべ”と呼ばれる当時の男子の教育方針です。
質実剛健と忍耐と服従を身につける為、盗みや殺害、猛獣たちとの戦闘等も当時では本当に奨励されていました。
②デルフォイの神託と巫女の存在
これも少々誇張されてはいますが、実際の描写です。
エフォロイの神官たちは当時都市国家の王たちと同等の権力を持ち、各ポリスの政策決定にも絶大な影響を与えていました。
神官たちを汚れたブタに例え重度の障害者に見立てた彼らの風貌には、その末期頃の汚職によって汚れ始めた権力者たちへの誹謗と中傷の意味合いが感じられます。
エロティックで幻想的な儀式によって神託を授かる巫女たちの存在も、蒸気(プネウマ)を吸って恍惚状態に陥る様子をそのまま再現しています。
③テルモピュライの戦い
戦い自体は史実ですが、ヘロドトスやシケリアのディオドロス等の資料によれば、スパルタの軍勢は周辺都市国家からの義勇軍等も合わせると5千人から8千人弱はいた様です。
対するペルシアの軍勢は15万から30万まで諸説ありますが、100万の軍勢というのはちょっとオーバー過ぎるようですね。
クセルクセス演じるロドリゴ・サントロが一見エジプト系の黒人に見えるのも、現在のイランを中心としたペルシア帝国の人間としてはあまりに不自然ですし、不死隊と呼ばれる遊撃隊等が殆ど怪物の様な造形で描かれているのには、原作者らキリスト教圏の人間達が描く異端者的なペルシア人に対する強い悪意と差別意識を感じざるをえません。
とは言え、現代の宗教的見地と学術的観点からで殆ど伝説上の戦いに近い地中海古代史を紐解いてみても限界があります。
圧倒的な戦闘シーンの迫力と造形美だけで映画は語りつくせませんが、少なくとも古代史の歴史ロマンに夢を馳せ、5月病の憂鬱を吹き飛ばす爽快感と、古代人の芸術的な肉体美に触発され、夏に向けての弛んだ自分の肉体改造を始めるキッカケになった作品である事は間違いありませんw
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