Fear the Walking Dead Season4 Episode.10/2018~(アメリカ)
製作総指揮 :ロバート・カークマン/脚本:シモサワ・シンタロウ
出演:アリシア・デブナム=ケアリー、アレクサ・ニッセンソン
テキサスの嵐
厭世観たっぷりに描かれ始めた『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』。
新キャラとオリジナルメンバーとの融合がこれからの焦点になってきましたが、テキサスが舞台の今回のシーズンでは、その地形を生かした設定がストーリーにもしっかり盛り込まれるようになってきました。
銃とカウボーイのイメージの強いテキサスは、そのワイルドな荒野に時たまやってくるハリケーンも意外と有名。
中でも4月から6月にやってくる竜巻はかなりの猛威を振るい、1900年代には州南東部の町・ガルベストンで死者8000人以上を出す合衆国史上最大規模の自然災害にまでなった程。
ついでに、超保守派の共和党支持者を根強く支持するこの州の典型的ともいえるレッド・ステイツな住民の登場にも密かに期待を膨らましています。
ナイーヴなモーガンが、果たしてイケイケのテキサス人と折が合うのかどうかw
シーズン4第9話の感想はコチラ
以下、『フィアー・ザ・ウォーキングデッド』シーズン4第10話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
目を閉じて
嵐の中民家に避難するアリシア。
彼女はその家の住民であったであろう4人のウォーカーを始末すると、庭先に彼らを並べる。
無力感に苛まれていた彼女は一人孤独に自分を見つめ直そうとしている。
しかし二階のポーチにかかる木に吹き飛ばされているウォーカーを見つけたアリシアは、それ以外にも家にヒトの気配を感じる。
彼女が勢いよくクローゼットを開け放つと、そこにいるのはニックを殺したチャーリーの姿。。
苛立ちの中、アリシアは彼女を置いて家を飛び出すが、嵐の中、車のサイドドアに頭を打ち付け気を失ってしまう。
彼女が目を覚ますと、再び自分が民家に引き戻されている事に戸惑いを覚え始める。
2階の部屋に閉じこもり続けているチャーリーに対し、ドア越しにありったけの憎しみをぶつけるアリシア。
彼女はその憎悪がやがて自分自身さえをも蝕み、人助けをしようとしていた母マディソンへの裏切りに繋がってしまう可能性に怯える。
無言のまま拳銃を取り出し、ドア越しのアリシアに対峙するチャーリー。。
彼女に思いつく限りの罵詈雑言を浴びせたアリシアが玄関で嵐からの補強工事を行っていると、自分が外に運び出したはずのウォーカーに白い布が被せられているのを見つける。
チャーリーにその真意を問い詰めるアリシアだが、彼女は尚も押し黙ったまま。
やがて彼女を階下に呼び寄せると、アリシアは一人で手間取っていた窓の補強工事の手伝いをする様に促す。
その音に集まって来たウォーカーのおかげで再び家に閉じ込められたアリシアが、雨に濡れたチャーリーの上着を乾かそうとすると、そのポケットから拳銃を見つける。
やがてチャーリーの額にその銃口を向け、彼女を脅すが・・
暖炉の中に燃えカスとなった死体を見つけたアリシアは、母への告解を始める。
その家の住民だった人間達の写真を見詰めていたチャーリーは、やがてポーチにかかる木に串刺しのままのウォーカーにゆっくり近づいていく。。
その気配を察したアリシアは、チャーリーを寸前のトコロで止む無く助け出す。
ウォーカーに転化しようとしていたチャーリーに、その思いの丈をぶつけるアリシア。
彼女は生きる希望を持てない自分に苛立ちを募らせながらも、チャーリーにも同じ絶望が襲っている事を察し始める。
無言のまま夕食を取る二人。
ようやく口をきき始めたチャーリーは、カリフォルニアでのアリシアの身の上を聴こうとする。
彼女がその質問を遮ると、家族とガルベストンのビーチに行く約束をしていた事を語り始めるチャーリー。。
夜中にアリシアが目を覚ますと、カウチで寝ていた筈のチャーリーの姿が見当たらない。
やがて二階でその家の家族の写真を集めている彼女の姿を見つけるアリシア。
チャーリーが贖罪の意識から思い出をかき集めている事を察し、アリシアがその無意味さを説き始めようとしていると、不意に窓ガラスが割れる。
中に押し入ってくるウォーカーから逃れ、地下室に逃げ込むふたり。
しかし彼女達が階段を駆け下りると、その入り口は崩壊。
二人は浸水した地下室に閉じ込められる。
迫る水位に恐れをなしたチャーリーは、思わず死への恐怖を口にし始める。
そして自分の目の前で転化した両親の顔が、未だに思い出せない事も・・
やがて涙ながらに自分を殺害する様懇願しだすチャーリー。
アリシアは彼女の額に再び銃口をつきつけるが・・
マディソンやニックの顔が脳裏に霞むアリシアはその引き金を引けない。
やがて二階から落ちてきたウォーカーのおかげで地下室のドアの鍵が壊され、二人は脱出に成功。
翌朝、運び出した死体を庭に埋めたアリシアは、その上にチャーリーが集めていた彼らの生前の写真を瓶に詰めて添える。
車で帰路に着こうとしているアリシアとチャーリー。
アリシアはチャーリーに目を閉じるように告げると、彼女が未だ見たことのなかったビーチの様子を語り始める。
その青く、何処までも続く浜辺の様子。
チャーリーはその想像の世界で、両親の顔をようやく思い出し始める。。
二人がストランドの家へと戻ってくると、そこはもぬけの殻。
ジョン達のスクールバスも横転しており、アリシアは彼らとの再会を諦めようとする。
そして二人は連れ立って歩き出す。。。
・・あまりに上手い脚本で終始感心させられました。
視聴者の大多数が疑問に思っていたであろうチャーリーの仲間入りを、ここまで見事に納得させるとは。。
全体のトーンもすっかり落ち着いて、正に本家のシーズン4の後半の頃のようなロードムービーチックな静謐な仕上がり。
アリシアとチャーリーの葛藤を一話丸ごとかけて説明してくれたおかげで、ふたりにも大分感情移入しやすくなりました。
・・やっぱり登場人物が増えすぎるとどうしても派手なシーンが多くなっていくので、この手のエピソードは人物関係と心象風景をキッチリ伝える為にもある程度必要になってくるでしょう。
それにしても、すっかりモーガンとの親交を深めるかに見えたアリシアがまさかニック殺害犯のチャーリーとの間に絆を作るとは・・
一番憎しみ合いそうだった彼女達がその軋轢を埋めてしまった事で、視聴者はもうぐうの音も出ませんw
・・ただ、こういう事なんですよね。人間て。。
憎しみ合いの対角線にいる人物の互いにあるのは、不安からくる苛立ち。
やがてそれが恐怖へと変わり、自己防衛からの敵対心を生み出してゆく・・
しかし、その根本的な不安を互いが認め合ってしまうと、案外うまく行ったりもします。
ましてやそんな二人を救い出すのが木に突き刺さっていたウォーカーだなんてあまりに出来過ぎな気もしますが、ゾンビな世界を描くドラマとしては文句のつけようのない着地点でした。
・・とすると、
次は、アルとジューン?それともジョンとストランド?
一躍主役に躍り出てきそうなモーガンにはそこまで不安は感じませんが、ちょっとこれまでとトーンの変わってきたルシアナは単独のエピソードで見せていくんでしょうか?
どちらにしろ人間臭さがより一層増してきた彼らの物語には、今後も大きな期待が持てそうです。
シーズン4第11話の感想はコチラ
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