マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第2話の私的な感想―騎士の誇り―(ネタバレあり)

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Game of Thrones The Final Season Episode.2/2019~(アメリカ)
製作総指揮:デイヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス
出演:ショーン・ビーン、レナ・ヘディ、ニコライ・コスター=ワルドー、キット・ハリントン、エミリア・クラーク、ピーター・ディンクレイジ他

 ゲースロの過去と未来

久しぶりの再開にすっかり見入ってしまっていた前回だが、これまでの最高視聴者数を塗り替え1740万人にまで上ったその中には、数々の既視感がたっぷり潜められていた。

 

ジョンとデナーリスのウィンターフェル城への凱旋シーンは、シーズン1の初回でロバート王がサーセイと共に入場するシーンへのオマージュ。

更にジョンとブラン、アリア等との再会シーンもそれぞれの過去を想起させてくる。

 

しかしそんな中でも、今後の運命を占う一番の伏線は、やっぱり夜の王によってラストハース城に少年の死体で描かれたターガリエン家の紋章ではないだろうか?

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これが示唆するものは、やっぱりその血族の滅亡のような予感がしてきてしまう中、ジョンとデナーリスが互いの過去を知った上でも、今後幸せな顛末を迎えられるとはどうしても思えない。

 

すると、鉄の玉座に執着するデナーリスの運命は自ずと・・

 

血筋を絶やさぬ為近親者婚を繰り返す権力主義の成り行きは、倒錯していくサーセイの運命でもはや十二分に描かれているので、これ以上の蟠りはあまり見せてほしくはない。

なので道徳的な概念を取っ払ったとしても、ここはこの戦いを通じて王政支配を廃止する展開に持っていくのはどうだろうか?

 

GOT』シリーズには、今後スターク家の伝説を紐解く5千年以上歴史を遡った壮大なスピンオフ・サーガも検討されているようだが、その続編や二人の顛末に希望を持たせる余韻を残す為にも、二人がシェイクスピア的な非業の死を迎えるより、或いは駆け落ち恋愛的な逃避行の果てにエッソスあたりに旅立っていってもらっても、全く異論はないのだけど。。 

 

シーズン8第1話の感想はコチラ

 

以下、『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第2話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 七王国の騎士

デナーリスからの糾弾を受けているジェイミー。
彼女はラニスターの軍隊がやってこない事を知り、サーセイの嘘に疑心を募らせる。
ジェイミーは彼女がユーロンの手引きで、エッソスの黄金兵団を手に入れた事を暴露。
ティリオンもジェイミーの事を必死に弁明するが、デナーリスの耳には届かない。
それはジェイミーと敵対関係にあった母を持つサンサも同様。
しかしそこに割って入ってくるのはブライエニー。
彼女は忠誠心を超えたジェイミーの騎士としての誇りを感じ取り、彼の弁明を述べる。
それに感じ入ったサンサは、ジェイミーの戦線復帰を了承。
グレイワームから剣を授かるジェイミーを横目に、デナーリスは自分達の結束力に僅かな違和感を抱き始める。

ジェンドリーの元へ武器の催促にやってくるアリア。
彼はアリアの逸る気持ちを察しながらも、ホワイトウォーカーの真の恐怖を彼女に語る。

ウィアウッドの木の下でブランに告解を始めるジェイミー。
ジェイミーはブランが真実を明かさない事に戸惑いを覚えるが、彼はその全てが必然であった事を告げ、恨みを持ってない事を明かす。

ティリオンはジェイミーがサーセイの本性を知りながら、愛し続けていた事を指摘。
それでも彼女の手を逃れ死ねる事を誇りに思うティリオンに対し、ジェイミーは自分を受け入れてくれたブライエニーの後を目で追っている。

やがてブライエニーの元へやってきたジェイミーは、一人の騎士として彼女に忠誠を誓う事を明かす。。

 

孤立感を募らすデナーリスの元へとやってくるのはジョラー。
彼は女王の側近の座を奪われた事に嫉妬を覚えつつも、ティリオンに不信感を募らせるデナーリスに懸命な判断を下すように促す。。

ヨーン・ロイスと会談しているサンサの元へやってくるデナーリス。
彼女はサンサに自分の本音を吐露すると共に、欺瞞に満ちた世界での女同士の健闘ぶりを称え合う。
やがてサンサの口からも、デナーリスへ猜疑心を募らせていた事に対する謝罪の言葉が漏れる。
しかし、鉄の玉座を強く求めるデナーリスに対し、度重なる略奪の末、独立を固く誓った北部の意思をサンサが彼女に伝えると・・

言葉を詰まらせているデナーリスの元へ、シオンの帰還の報告にやってくるダヴォス。
忠誠を誓い、ヤーラとも離れ戻ってきた彼をサンサは無言できつく抱きしめる。

 

ダヴォスが城に避難して来る者達へ炊き出しをしていると、そこへ顔に傷を持つ少女がやってくる。。
ダヴォスは彼女の持つ勇敢さにシリーンの面影を重ね合わせ・・

トアマンド、べリック、そしてナイツウォッチを率いたトレット達も、ようやくウィンターフェル城でジョン達と合流。
しかしアンバー家も陥落し、翌日の朝には死の軍団が近づいてくる事をトアマンドから知らされると・・・

 

ジョンは首脳陣を全て集めた緊急作戦会議を開く。
疲れを見せる事のないホワイトウォーカーへの対策に彼らが苦悩していると、ジョンはそれを率いる夜の王のみを退ける事を提案。
ブランは彼に印を付けられた自分が優先的に狙われるであろう事を皆に伝え、自らが神々の森でその囮になる事を告げる。
シオンは鉄の民を率いて、そんな彼を死守する事を決意。
ティリオンはダヴォスと共に火計の準備にとりかかろうとするが、デナーリスはそんな彼に地下へ避難するよう命令を下す。
渋りながらもそれを受け入れたティリオンは、ブランのそれまでの旅路に耳を傾け始める。。

 

ミッサンディと愛の契りを交わすグレイワーム。
彼は女王への忠誠を改めて誓いながらも、戦いが終わった後の世界ではミッサンディをその故郷に連れていく事を決意する。

失くしていったナイツウォッチの仲間達の事を思うジョン、サム、トレットの三人。。

暖炉の前ではジェイミーとティリオンが、お互いの過去の因果を振り返っている。
すると暖を取る為、そこへやってくるブライエニーとポドリック。
やがてダヴォスとトアマンドも交え、彼らは戦いの前の束の間の時を共に過ごす。

城壁の上で独り夜を迎えているハウンドの元へとやってくるアリア。
彼女がハウンドとの数奇な運命に思いを巡らしていると、そこへべリックもやってくる。
・・少しの気まずさを感じ始めたアリアは、徐に彼らの元をさり、城内で弓矢の練習をしていると・・
そこにやってくるのはジェンドリー。
彼はアリアに急かされていたドラゴングラス製の槍を彼女に託す。
やがてメルサンドルに弄ばれた過去を吐露し、秘められた自分の血筋の経緯をアリアに明かすと・・・
ジェンドリーの口を閉ざすように口づけを交わすアリア。
戸惑うジェンドリーを気にも留めず、アリアはそのまま彼に覆いかぶさる。。

 

ティリオンの口が滑る。

不思議に思わないか? ここにいる者全員がスターク家と一度は剣を交えたが、今我々は、そのウィンターフェル城を守る為に集っている・・」と・・。

やがてそれぞれの武勇伝を語り始めるティリオン。
しかし酔いのまわっていた彼は、ブライエニーの呼称を間違えてしまう。
そんな騎士の伝統に疑問を感じ、文句を吐き出すトアマンド。
するとジェイミーが徐に剣を抜き、戸惑うブライエニーを跪かせ・・

改めて彼女にナイトとしての叙勲を授けるジェイミー。

集まった仲間からは割れんばかりの拍手が沸き起こる。。

 

血気盛んなリアナ・モーモントを鎮めようとしているジョラー。
そこへやってくるサムは、彼の父であり、ナイツウォッチの総帥だったジオーの教えを胸に、ヴァリリア鋼で作られたターリー家の宝刀“ハーツベイン”をジョラーに託す。

 

・・夜明け前、それぞれが決戦の時を待つ城内に、ポドリックの歌声が響き渡る。

 

やがてジョンは、スターク家の墓所にデナーリスを連れていくと・・

彼の口から知らされるターガリエン家の秘密に、言葉を失うデナーリス。。
そしてジョン自身も、自分と同じターガリエン家の血筋を引く者である事を知らされた彼女は・・

角笛が鳴り響く城内。。

暗闇の中、城門の先には、夜の王達に率いられた無数のホワイトウォーカーの軍勢がウィンターフェル城を見つめている・・・

 

 

 

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 ・・やはり、ゲースロの脚本は頗る上手い。

人数の多いそれぞれのキャラクターの個性を、少しずつだが確実に深く掘り下げてくる。

 

デナーリスの凱旋にわだかまりを見せるウィンターフェルの面々は、その全員にしっかりとした矜持が感じられ、そんな無骨な彼らの筆頭株はやっぱりサンサ。

彼女はその波乱万丈に満ちた政略結婚の果てに、ジョフリー、ティリオン、ラムジーと婚約者を次々に挿げ替えられていった過去から、男を見る目が大分歪んでしまっている。

そんな彼女の元に、兄が異国の美女をいきなり連れ帰り、母親との遺恨を残すジェイミーがその身一つで忠誠を誓うなどほざいたとしても、信用できないのも無理もない。

しかしここでサンサの猜疑心を解すのが、同じように男達が張り巡らせた策略の中を生き延びてきたブライエニー。

二人の信頼関係には、既に母親からの忠誠心というより、戦時を生き延びてきた互いだからこそ分かり合える感覚が芽生えているのだろう。

そこに、サンサを尊重し、デナーリスを表向きには女王として認める谷間の騎士ヨーン・ロイスの我慢と、デナーリスの戸惑いを察知しながらも、ジェイミーに剣を乱暴に手渡すグレイワーム等の対比的な演出も中々にニクイ。

更にこの手の緊張感を、一言の台詞で和ますトアマンドのユーモアさ。。

そして街角の少女にシリーンの面影を見るダヴォス、逞しい剣士に成長し始めたポドリック、更にジョラーとモーモント家との間に僅かに残る繋がりに、公女リアナがしっかり答えてみせている様子なんかにも、思わずため息が漏れてしまう。

 

シオンを何も言わず抱きしめるサンサ、ミッサンディに愛を誓うグレイワームの様子等には、陰謀と略奪に満ちたゲースロの主旋律とは外れながらも、その脇でひっそりと育まれていった真実のラブストーリーがしっかり描かれている。

 

この辺の脇役のキャラクターの心情を端的に垣間見せる演出は、あまりに見事としか言い様がないが、ホワイトウォーカーとの決戦を前夜に控えた今回のエピソードで、一番二人の関係性の奥行きを広げてくれたのはジェイミーとブライエニー

 

ラニスター家から単身離脱したジェイミーまでが、彼女に心底忠誠を誓うとまでは思わなかったのだけど、この二人がツーショットで写るだけで様々な過去の因縁が蘇る。

ラストにジェイミーが、レディーとしての称号しか持たない彼女に、ナイトとしての受勲を与えるシーンには、最早、男女の垣根を遥かに超越した深い友情が垣間見えると共に、中世の歴史の中で懸命に生きそして散っていった女剣士達への畏敬の念さえ伺える。

 

そして、、

 

とうとうジェンドリーとベッドインを果たしたアリアには、視聴者全員が目を丸くしてしまっただろうが、ここで思い返してもらいたいのは二人の血筋

決死の覚悟を決めたアリアの偶発的な事故の様にも見えるシーンだが・・

ジェンドリーは、既に滅びたかのように見えるバラシオン家ただ独りの生き残り。。

とすると、滅亡しかけたターガリエン家の王位奪還を願うデナーリスよりも、ラニスター家の濃すぎる遺伝子を持つサーセイの子よりも、ウェスタロスの治安をこれまでのまま維持するのであれば、スターク家とバラシオン家の血を唯一受け継ぐアリアの子が鉄の玉座に就くのが万人にとって極めて懸命な判断の様な気がしてきてしまうのだが・・・

・・剣士と鍛冶屋の子供が国を統治するなんて、なんだか平和的な夢を感じられるのだけど・・・

 

これまでゲームオブスローンズ(王位継承権争い)に全く絡まず、己の復讐の為だけにその身を捧げてきたアリアが、ここにきていきなりその中心に立つ展開もかなり興味をそそられるが、そんなすっかり大人になった彼女が初めに操を捧げるつもりだったのが、べリックの邪魔さえ入らなければ、苦楽を共にしいがみ合い続けてきたハウンドだった気がしてしまうのは、やさぐれた男の姿に自分を重ねあわせてしまっているただの妄想なんだろうか?

シーズン8第3話の感想はコチラ

www.mariblog.jp

 

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