マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『孤独なふりした世界で』の私的な感想―世紀末に本当の愛はあるのか?―

I Think We're Alone Now01

I Think We're Alone Now/2019(アメリカ)/93分
監督:リード・モラーノ
主演:ピーター・ディンクレイジ/エル・ファニング

 世界の終わりで黙々と・・

ここまで徹底的に説明が省かれた映画も珍しい。

 

最近自分の嗜好の映画は、大抵テアトルシネマ系で上映されている事が分かってきたのでとりあえず会員になってみたが、ここはポイントが溜まらない代わりに、入会時に一度だけ何時でも映画が1000円になるというちょっと変わったサービス券が付いてくる。

大抵は人気のない作品であろうが、事前予約をして鑑賞するのが日課となっていた自分にとっては、もともと割引のある日に映画館に行くのでこのチケットの使い方がイマイチよく分からなかった。

 

そんな中、繰り返し見せられる劇場版のスポットで、この映画の邦題はだいぶ心をくすぐってくる。

ああそうか、このチケットは衝動的に観たくなった映画の時に使うのか。。

なんてやっと理解し、鑑賞させてもらったのがこの作品だった。

 

けれど、、

小人症のピーター・ディンクレイジが、冒頭に登場してきてから15分近く何もしゃべらない。。

彼は世界が崩壊した中でも黙々と作業を熟し、食べて寝るだけ。。

それが、タイトル通りの孤独なふりなのかどうなのかはそのうちわかっていくのだけれど、未体験ゾーンの映画たちというくくり通り、彼の単調な日常風景と自分の代わり映えのない毎日とが、いつの間にかすっかりリンクして物語にのめり込んでいってしまった感は否めない。。。

 

 

 

 

 

あらすじ
デル(ピーター・ディンクレイジ)は、この地球上で一人だけ。
人類がすべて死に、誰もいなくなった町で、死体を弔い、空き家を整理しながら回るデル。
小さいけれど自分だけの楽園を細々と作り上げる事に喜びを感じていた。
何もないこの世界が気に入っていたデルは地球が“普通”だった時から、ひとりが好きだった。
だがデルの平穏な日常は、風変わりな女の子グレース(エル・ファニング)の介入によって、掻きまわされていく…
もう一人の生存者であるグレースは、どこから来て、どうして生きているのか。
自分以外に生きている人がいた事に歓喜するグレースは、デルの世界に入ってこようとする。
拒絶するデル。
だけど彼女はいう、“ここにいさせて”、と。
Filmarksより抜粋

I Think We're Alone Now02

 世紀末で巡りあう愛

GOT』のティリオン役でも有名になったピーター・ディンクレイジは、何よりもその小さな背中から嫌みのない強烈な男の哀愁を感じさせてくれる。

それが『ハンドメイズ・テイルズ』でディストピアな世界を描く事に定評のある監督作品でなら尚更だが、これがノーライトで流れるようなドリーショットの中の彼になんかも遺憾なく発揮されていた。


カフカ的ともシュルレアリスムを追求しようとした作風にもとれるこの映画では、世紀末モノでお決まりの、その始まりや終わり、或いはそこからどうしていくかなんて説明を求めるのはちょっと野暮な気もしてくる。

街角に散らばる死体を淡々と片付けていく様子、サバイバルな生活の中でもしっかりと文明的なディナーをとっているシルエット風景等、何の説明もなく普段通りの生活を熟している彼は、きっとこの世界が終わる前から続けていた日常の延長線上にいるのだろう。

 

つまり彼の孤独は、世界が終ってから始まったものではなく、それ以前から矜恃を持って続けていた事。

 

ここにいきなり割り込んでくるエル・ファニングのあどけなさに、正直、かなり鬱陶しいものを感じてしまう彼のたじろぎは、とても納得がいく。

彼女が大切にしていた犬を放してしまうのも、それは嫌がらせでも悪意でもなく、ただ彼の辞書に相手を尊重する気持ちが元々載っていないからだ。

 

これを個人主義に走る現代人に置き換えてみると、実に分かりやすい。

刹那的に芽生える醜い下心さえなければ、自分もきっと彼と同じ行動にでるだろう。

 

しかし、彼女がいなくなった瞬間に突如として沸き立つ割り切れない感情は、まさに実存主義に晒される人間の性。

 

実存主義とは
実存主義は、普遍的・必然的な本質存在に相対する、個別的・偶然的な現実存在の優越を本来性として主張、もしくは優越となっている現実の世界を肯定してそれとのかかわりについて考察する思想。
本質をないがしろにするような思想的なものから、本質はこうだが現実はこうであり、本質優位を積極的に肯定せずに、現在の現実をもってそれをどう解決していくべきなのかを思索的に考えたもの。
本質を積極的に認めない傾向があるため、唯物的、もしくは即物的になり、本質がみえなくなってしまう極端な思想も生まれる土壌にもなる。
また悲観的な発想にもなりがちとなっている。

wikipediaより抜粋

 

小難しい理論を取っ払って言ってしまえば、

人は、好きとか嫌いとかの前に、相手の存在がまずは一番重要

 

という概念に辿り着くのだけれど、結局はその相手がもしサーセイだったら、ティリオンはやっぱり衝動的にでも、孤独を選ぶんじゃないだろうか・・・?

 

「孤独なふりした世界で」
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