マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『ショートターム』の私的な感想―ココロが少し疲れてきたヒトたちへ・・―

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Short Term/2013(アメリカ)/97分
監督: デスティン・ダニエル・クレットン
出演:ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガー・Jr、ケイトリン・ディーヴァー、ラミ・マレック

 自主映画を基にした鋭い目線のヒューマンドラマ

最近シンドイ映画やドラマばかり観ていて、ちょっと憂鬱になりかけている今日この頃。

元から純粋に楽しめる映画をあまり知らないので、こういう時の気分転換がうまく出来ません。

誰かいいのがあったら教えて下さい。。

そんな自分にとって、久々に心が癒されたのがこの作品。

この映画は、サンディエゴ州立大学の映画学科の学生が卒業制作で作った言わば自主映画を基にして作られているんですがこれが中々の秀作。

22分の短編として作られた基の『Short Term 12』は、インディペンデンス映画の王道とも言えるサンダンス映画祭において審査員賞を受賞し、それを皮切りに再編された長編の本作品は2013年のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭、ロカルノ国際映画祭等、数々の映画賞を受賞し今正に注目されつつある作品です。

撮影は公開募集で集まった子供たちと20日間の短期スケジュールで製作され、物語の舞台は監督自らの経験を基にした問題のあるティーンエイジャー達の自立支援を目的としたグループホーム(共同生活介護施設)というちょっと特殊な環境。

彼らの生への渇望と、それに向き合うケアマネジャー達の心の交流を鋭いヒューマニズムの目線から見事に表現しています。

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物語はグループホームに新人ケアマネージャーとしやってきたネイトが、先輩のメイソン達と他愛もない会話をしているトコロから始まります。
―――グレイスと主人公のメイソンはグループホームで働く若きケアマネージャー。
自閉症のサミー、母親からの虐待を受けて育ったマーカス、様々な心に瑕を負った若者達の相手をしながら、彼女は自分自信のトラウマとも向き合おうとしている。
そんなある日、自分と同じ絵を描く事が好きな少女、ジェイデンがやってきたことで彼女の生活は少しづつ変化する。
グレイスは彼女に寄り添う事でその闇から救い出そうとするが、ジェイデンは固くその心の扉を閉ざしたまま。
やがてグレイスは恋人でもあったメイソンとの間に子供を妊娠している事が発覚し、それをきっかけに彼女は徐々に不安定になってゆくが・・

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 ココロの瑕(きず)の癒し方

ちょっと映像技法的な話から入ってしまいますが・・

この映画で私的にもっとも興味を引いたのはそのカメラアングル。

昨今進化が著しい映像業界において、その余りの映像美の影響でルーズショット(人物の回りを含めたカメラアングル)が多用されがちですが、主観としてはあまり好みません。
背景にそれなりの意味や、状況説明がどうしても必要な場合を除いて、あのサイズだとうまく人物に集中出来ないんです。
ましてやこの映画のような「グループホーム」というある意味閉鎖された空間内での撮影だと、傾向的に引いたサイズのアングルになりがちです。

更にこの物語のテーマはココロの瑕という重い内容。

あまりに寄ったサイズだと観ている側が苦しくなってしまうはずなんですが、この作品ではそれをゆったりとした手持ちのカメラワークで優しく捉えています。
なので施設の彼らの心の闇を表す際にも踏み切ったフェイスアップのアングルを用い撮影され、その絶妙な揺らぎは彼らの心と完全にリンクし、何よりも20代の学生がその手法を見事に使いこなしている事には驚きの一言。

 

脚本もそれに全く引けを取らず、虐待を受けてきた子供達とケアマネージャーの様子はあくまでも自然体。

冒頭、他愛もない普段の会話の延長線上から始まるサミーとの追っかけっこはその象徴的なシーンなんですが、その後、新人ケアマネージャーとしてやってきたネイトのように、助ける側と助けられる側に廻ろうとした瞬間にこの関係性は一瞬で壊れてしまいます。
(2019年に第91回アカデミー賞の最優秀主演男優賞に輝いた、ネイト演じるラミ・マレックの初々しさもかなり見物♪)

この映画の主人公グレイスのコミュニケーションの方法は、

 

ただ彼らに徹底的に寄り添うというコト。

 

簡単な様で、中々難しい事かもしれません。

同じようなトラウマを抱えていた彼女にだからこそ出来る事と言われればそれまでですが、その友達の様に側で瑕を分け合うコトにより自傷癖を持ったジェイデンが次第に心を開放してゆく描写には自然と心が癒されていきます。

そしてグレイス自身もそのジェイデンによって、母親になる事にコンプレックスを抱いていた事を気付かされ、自らの不安を再認識していくその様子・・

恋人のメイソンは彼女とは対照的に、

 

そんな若者達と一緒に楽しもうとします。

 

それは暑苦しいものではなく、ジェイデンの聴く音楽を一緒に聞いてみたり、ラップのリリックに乗せて自らの虐待経験を吐露するマーカスとセッションしてみたりと、正に自然体。

そんな二人が自然に惹かれ合い、不安の中でも健気に結びついてゆく様子は、優しく流れる印象的なサントラとも混ざり合い、久しぶりに胸がすく思いを感じられた温かい情景でした。

 

『ショートターム』
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