マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『CRESCENT 冷たい海の底』の私的な感想―マーブルに染まる女が辿り着く海辺―(ネタバレあり)

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The Crescent/2017(カナダ)/99分
監督:セス・A・スミス
出演:ダニカ・バンダースティーン、ウッドロウ・グレイブス、エイミー・トレフリー

 メランコリックな異色ホラー

冒頭に出てくる色彩豊かなマーブリングの映像を見ていると、始めはだいぶメランコリックな映画の様に感じてしまう。

 

寒々しい海と家。

更にそこに幼子を見守る母親が佇んでいると、やっぱりそこには侘しさと共に、自然と畏敬の念にも似た感情が込み上げてくる。

そしてその幼子が母親に纏わりつくようにひたすら叫び続けている様子は、中盤までかなり鬱陶しく感じてしまったのだが、その意味も最後にはきっと納得できるだろう。


一見夫を失ったシングルマザーが抱える不安と孤独、そしてそこにシンクロしていく異形の者たちが忍び寄るホラー映画にも見えるのだが・・・

 

 

 

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 現世に取り残された者(※以下、ネタバレあり)

この映画のあらすじはあえて割愛させてもらいたい。

夫の死と共に、海辺の“三日月の家”と呼ばれる家に移り住むことになる母子というだけで、その大枠の物悲しさは十分に理解できるはずだ。

 

けれどもこの映画の本当の恐怖は、その先にある。

暗い海辺の波打ち際や、マーブリングに興じている母親の描写。

更にその裏に流れ続けるアノーイングなBGMから、夜中に不気味になり続けるドアホンまで、それはすべて育児ノイローゼを抱えた母親の陰鬱を暗喩しているかのように見えてくる。

 

なんて想像していると、中盤からその絵面はガラリと変わる。

 

彼女達の回りにやってくる僅かなネイバー達の表情には既に生気はなく、彼らは常世の国からやってくる住人である事に気付かされてしまうわけだが・・

 

単純なホラー映画とは一線を画すこの作品を読み解いていくには、正方形のアスペクト比で映し出される親子の映像にその最大のヒントがある。

 

そしてそれまで疎ましくさえ感じてしまう自然体の幼子が、ラストには本当の主人公であった事が分かってしまう瞬間に込み上げてくる圧倒的な寂しさ。。

更に母子がそれまで口遊んでいるアメリカ童謡『Row Row Row Your Boat』は、それまでの不気味でダークなトーンの音色から一変して、一抹の寂寥感を感じさせる。

 

神経を逆なでするかのように歪んだそのそれぞれの描写は、母が見る桃源郷。

それをフィルムライクな質感で垣間見せる事により、彼女達のいるその浜辺の答えには二択しかありえない。

 

つまり、現世に取り残されたのは本当に妻なのか?夫なのか?

 

それでもそんな微睡んだ感覚で見ていくと、様々な闇がリンクした先には、本当にこの手の世界が存在するかのような錯覚を起こしてしまい、だいぶ深い恐怖を味わってしまった。

 

『CRESCENT 冷たい海の底』
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