マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『デイ・アフター・トゥモロー』の私的な感想―現実に近づく地球氷河期―(ネタバレあり)

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The Day After Tomorrow/2004(アメリカ)/124分
監督/脚本:ローランド・エメリッヒ
出演:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、エミー・ロッサム、セーラ・ウォード

 王道のディザスタームービー

ゾンビモノ映画に次いで自分が欠かさず毎年チェックしているのは、実は災害をテーマにしたディザスタームービー

近年ではその陳腐なドラマ性のおかげですっかり見る気が失せてきてしまっているけれども、そんな中でもこの作品だけは結構興味深い。

 

インデペンデンス・デイ』やFoxで放送されていた人気テレビドラマシリーズ『V(ビジター)』なんかでは、悪意の塊の様なエイリアンに躊躇なく人類を襲わせてきたローランド・エメリッヒはこの手のSFディザスター業界を代表する巨匠監督だが、彼は進歩主義を擁護しながら、実は地球温暖化問題にもかなり熱心に取り組んでいる情熱的な篤志家でもある。

 

そんな彼がこの映画で描いたのは正に世紀末そのままの氷河期であり、人類の終焉

 

2019年の1月には、イリノイ州で「5分で凍傷になる気温」となる-50℃となる記録的な大寒波にみまわれたが、地球規模的な異常気象が多発する現代で、もう対岸の国の災害として他人事で済ますレベルではなくなってきた今だからこそ、その心の準備をする為にも、もう一度この手の映画を見返して見るのはどうだろうか?

jp.wsj.com

 

 

 

 

あらすじ
南極で研究を続ける古代気象学者ジャック・ホール教授(デニス・クエイド)は調査データから地球規模の自然危機を予感する。
そして、その4か月後、東京などで異常気象が発生し彼の嫌な予感は現実味を帯びてくる。
シネマトゥデイより引用

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 熱塩循環機能の停止

高校生役のジェイク・ギレンホールの姿なんかも拝めるこの作品では、だいぶ昔から指摘され始めている地球温暖化現象により、南極の棚氷が融け始めた事から始まるスーパー・フリーズ現象が世界を襲う恐怖を描いていたが、この現象自体はどこまで本当に起こりうる事なんだろうか?

その直接の原因と言われるのは、いわゆる「熱塩循環機能の停止」の様だが、自分も含め科学に全く疎い人達の為に、まずはその解説を簡単にしてみる。

「熱塩循環」(Thermohaline Circulation)とは、「海のベルトコンベヤー」と呼ばれる地球全体の海洋を1000~2000年かけて循環する大きな海流であり、黒潮や親潮といった海流の名でも知られている。
その海流の大きな要因は温度と塩分濃度の差であり、北大西洋北部やグリーンランド沖に南からやってきた暖かい海流が、大陸からの乾いた風によって水分を奪われるとその濃度が高くなっていく。
やがて沈み込みを起こした海流に温暖化によって融解した大陸氷河や、スコールの様な集中豪雨によって降水量が増加した場合、真水がその沈み込みの部分に過剰に注入され、濃度差が小さくなる。
やがてその沈み込みが止まった場合にはこの海のベルトコンベヤーが停止状態に陥り、南からの熱をヨーロッパ北部に運んでいく役目も果たせなくなると、北半球の気温を急激に下げる要因に繋がっていく。

『地球温暖化、そして氷河期突入の危機!スーパーフリーズ現象!』より抜粋

 

要約すると、複雑な要因が重ならない限り起こりにくい現象ではあるが、2018年に西日本の広範囲を襲った集中豪雨南極の氷が5年前の3倍速で消えていっている事実等を鑑みていくと、まんざらあり得ないとも言えないような気がしてきてしまう。

 

更に皆さんは以下の記事を御存じだろうか?

この様な記事を読む度に、とてもそれがSF世界のお伽話の様には思えなくなってくる。

 

つまりこの映画の中で発生したミニ氷河期は、そのスピード自体の誤差はあるにせよ、確実に現代の地球上に迫りつつある現象を予測していたといっても過言ではない。

 

 

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 映画の嘘と自然災害の可能性

とは言え、劇中の事象の矛盾点も幾つか存在するようだ。

それは東京に振る拳大の雹や、複数の竜巻が同時多発的にロス等の大都市を襲う現象。

英サウスハンプトン大学のシブレン・ドリファウト教授は、このような現象は物理的な法則にも沿わないとして否定しているが、それでも劇中で起こる海流循環が突然停止する可能性は5%の確立で起こりうる現象だとも指摘している。

映画的な観点から言えば、前者はアメリカの手先と化した日本がまず初めに被害を受けるというアイロニカルな比喩であり、後者は自然現象の脅威を観客にまざまざと体感させる為に大分誇張されたシーンであろうが、この辺の事を映画の嘘と割り切ったとしても、2019年の1月にシカゴを襲ったこの極渦寒波の映像を見てしまうと、どうしても『デイ・アフター・トゥモロー』の世界そのままのような気がしてきてしまう。

この強烈な寒波はエルニーニョ現象等による北極圏を取り巻く寒帯ジェット気流が、大きく南下し始めた事が原因のようで、それはNOAA(アメリカ海洋大気庁)が発表した下の図を見ても一目瞭然。

そんな地球規模の気候変動が如実に表れ始めた現代で、自分達に出来るコトは何だろうか?

 

 

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 隣人との友愛(※以下、ネタバレあり)

元々ゲイである事を公言しているローランド・エメリッヒ監督は、どうしても作品内で描く人物の愛憎描写が極端に弱い。

主人公のジャックと息子のサムの親子の絆は随分端折り過ぎだし、サムが恋心を抱く女子大生ローラとの恋愛模様なんかもあまりにステレオタイプ過ぎて面白味はない。

 

しかし人類愛的な見地でこの映画を少し俯瞰で見ていくと、彼の普遍的な情熱は所々に垣間見える。

 

それは例えばサム達が取り残されるニューヨークの公立図書館で、無神論者の紳士が世界最古の活版印刷物のグーデンベルグ聖書を守り抜こうとする描写や、ホームレスの男からサバイバル術を学ぶ資産家の優等生J.Dとの交流。

そのホームレス自体がのら犬と暮らしていた為に、大寒波に襲われても公的機関である図書館に当初入場させてもらえなかった事なんかはあざとい社会批判だが、ここら辺の価値観はマイノリティーの性を持つ彼だからこその独特なアジテーションであり、そのテンポよく作品に潜り込ませる技術は中々に上手い。

そして京都議定書なんかの発言をも盛り込み、政治と科学の対立、ひいては資本主義経済の盲点なんかも鋭く突いてくる。

 

視聴者に分かりやすい程度の説明台詞を簡潔に添えて、動きの多いカメラワークを繋げて人物の肩ごしから見せるそのダイナミックな映像は、ただの緊張感を煽るだけの演出ではないはずだ。

街を飲み込む甚大な規模の津波映像やそこから逃げ惑う人々を、CG処理技術で全て補完しながらも、映画の総バジェットを必ず厳守して作り上げる彼のその真意には、王道の娯楽エンターテイメント作品を追求しながらも、鑑賞後に僅かな温もりのある余韻を受け手側に与えてくれている。

映画のラストでは、国境線を超えてメキシコへと避難していくアメリカ国民の映像がきっちりと映されているが、排外主義的な外交政策と保身に憂慮するあまり、議会を停止させてまで他の国との物理的な壁を建設しようとしている今だからこそ、有事の際に手を差し伸べてくれる可能性のある隣人との友愛を、もう一度思い出してみるべきではないだろうか?

 

「デイ・アフター・トゥモロー」
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