マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『セッション』の私的な感想―狂気に満ちたジャズドラムの世界―

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Whiplash/2014(アメリカ)/106分
監督: デミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ

 極限に達する緊張感

・・この映画は、何かをストイックにやり遂げた事がある人にしか伝わらない作品なんじゃないでしょうか?

眉を顰める程の張り詰めた緊張感と端的な会話の応酬で、映画を観ているというよりも、夢を追っている若者のドキュメントを覗き見ているかのようなそんな感覚。。

この作品で鬼教官テレンス・フレッチャーを務めたJ・K・シモンズは、その余りの歪んだシニカルな演技に2014年のアカデミー賞を始め数々の助演男優賞をかっさらいましたが、彼の演じる自らの音楽に対する狂気なまでのストイックさは正に芸術家の真骨頂。

そしてラスト、9分19秒にも及ぶ長尺なジャズ演奏シーンは、主人公達の微妙な心理描写とその心の駆け引きを巧みに表現しています。

只、音楽ををテーマにしている作品だからと軽い気持ちで観てしまうと、ちょっと胸が苦しくなるかも。。

劇中繰り広げられるのは、圧倒的な音楽に対する情熱と、それに必死に食らいついていこうとする青年との緊迫したセッション。

個人的にはもう殆どスリラー映画なんじゃないかと思ってしまうくらい胸が脈打ち、主人公の青年の葛藤と苦悩に満ちた日々に打ちひしがれてしまいます。

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物語はマイルズ・テラー演じるニーマンがアメリカで最高峰の音楽学校、シェイファー音楽学校に入学するところから始まります。
―――偉大なドラマーになる為、夢と希望を描いて学院へとやってきた彼を早速に待ち受けていたのは、校内のカリスマ教師であるフレッチャーのシニカルな洗礼。
怒号と罵声の飛び交うフレッチャーの徹底的なしごきにも耐え、文字通り必死に血の滲む練習に明け暮れるニーマン。
やがてそんな彼のセンスを見抜き、フレッチャーはようやく彼を自らのスタジオ・バンドに招こうとするが・・

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 夢を追う世界に飛び込んだ人間達の狂気

どうして芸術家を目指す人間達ってこんなにも不器用で歪んでいるんでしょうか?

音楽も映像もそうですが、何か一つの美学に陶酔してしまった人達は往々にしてカタルシスを決め込むナルシスト。

劇中フレッチャーがショーンケイシーという元教え子のトランぺッターの死を悼むシーンがありますが、それに賛同出来る生徒は誰もいません。

しかしニーマンだけは違います。

音楽に没頭するあまり彼女も手放していた彼は、フレッチャーのその孤独と狂気の裏にある何かに気付いてしまいます。

結局、芸術とはそういう事です。

鬱屈した精神がどこかで共鳴し合い、まだ誰も観たことや聞いたことがない何かを探っていく作業。

凡人には理解が及ばない世界ですが、だからこそそういうストイックで切迫した人達の想いって、やっぱりどこかカッコイイんじゃないでしょうか?

物語の終盤でフレッチャーがニーマンに言う台詞、

「この世で最も危険な言葉を教えてやる。それは”上出来だ”だ。」

これはフレッチャーのニーマンへの壮絶なしごきに対する言い訳にも聴こえる台詞ですが、なんか分かるような気はします。

飽き性で逃げ癖がついてしまった自分にとって、甘んじず、どこまでも己の夢に向けて努力し続けられる人間は、無条件で尊敬に値します。

天才よりも努力家に憧れられる、直向きで健気に生きている人達には正にうってつけの感動出来る名作と言えるでしょう。

劇中永遠と繰り返される、フレッチャーの強烈な罵詈雑言に最後までメンタルが持てばの話ですが・・

 

『セッション』
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