マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

邦画

映画『検察側の罪人』の私的な感想―キムタクの原点回帰と本当の罪人―(ネタバレあり)

検察側の罪人/2018(日本)/123分 /エポックメイキングなキムタクの熱演 /何とも言えない虚脱感に襲われた映画でした。 それが、映画自体の社会批判からなのか、監督の狂奔ぶりからなのか、製作側の悪意からなのか・・・ 時勢を反映した映画作りは『万引…

映画『リリイ・シュシュのすべて』の私的な感想―青春の瑕と夏の匂い―

All About Lily Chou-Chou/2001(日本) / 透明感のある青春の瑕 /『スワロウテイル』でそのセンシティブな世界観を描ききった岩井俊二が、原点回帰したとも言える映画がこの作品。 最近一部の若い世代の岩井俊二をリアルタイムで知らない人たちの間では…

映画『羊の木』の私的な感想―バロメッツに暗示された疑う者の正体―(ネタバレあり)

羊の木/2018(日本) /吉田大八監督の渾身の問題作 /吉田大八監督作品の中では、一番難しい作品かもしれません。 犯人捜しのサスペンスの様で、ヒトの業、倫理学にまで踏み込んだこの映画は、是枝組の『万引き家族』にも通じた社会批判を大いに盛り込んだ…

映画『聯合艦隊司令長官山本五十六』の私的な感想―戦争の裏にあるもの―

聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-/2011(日本) / 昭和男児の面影 /終戦記念日にちょっと振り返ってみたい戦争映画です。 「太平洋戦争70年目の真実」なんてあからさまな客寄せキャッチコピーを付けられたおかげで、時代考証の誤認や…

映画『カメラを止めるな!』の私的な感想―奇跡のワンカットが生んだ止まらない映画愛―(ネタバレ殆どなし!)

ONE CUT OF THE DEAD/2017(日本) / ゾンビ映画をテーマにしたC級コメディー? /・・正直、この手の映画は最初あまり見る気にはなれませんでした。。 前評判からゾンビ映画をテーマにしたコメディーと聴いてしまっていたので、B級どころかC級?な匂いも…

映画『深呼吸の必要』の私的な感想―ウチナンチュに受け継がれる魂―

深呼吸の必要/2004(日本) /究極の癒し、沖縄の精神 夏が近づくと思い出す映画です。 篠原哲雄監督の沖縄愛がたっぷり詰め込まれているこの作品は、自分にとって究極のヒーリング映画。 疲れた時に、ただ、何も考えずに感じるだけの作品です。

映画『DISTANCE/ディスタンス』の私的な感想―オウムの闇を背負う者たち―

DISTANCE/2001(日本) /私的にはこの映画が一番是枝監督らしい作品な気がします。 ドキュメンタリー出身の彼が日本の社会問題に初めて疑問を抱いたのは、実は地下鉄サリン事件。 平成の犯罪史上類を見ないあの事件の事は未だに記憶に新しいですが、この映…

映画『三度目の殺人』の私的な感想―からっぽの器が背負う十字架―(ネタバレあり)

The Third Murder/2017(日本) /余韻を咀嚼する珠玉のサスペンス 白昼夢を見ている様な感覚に陥る映画です。 『万引き家族』で行政の歪を描いた是枝監督がこの作品で暴いたのは司法の闇。

映画『勝手にふるえてろ』の私的な感想―綿矢りさと松岡茉優が起こした化学反応―(ネタバレあり)

勝手にふるえてろ/2017(日本) /原作者の綿矢りさの作品群は自分の中で思い出でもあり羅針盤。 この作品は、そんな彼女の筆致がはっきりと伝わってくる恋愛映画です。 昔風に言えば、、 ちょっとニッチでキッチュな非リア充系女子の断片を垣間見せ、広が…

映画『万引き家族』の私的な感想―樹木希林からの遺言。ワーキングプアの実態―

Shoplifters/2018(日本) /圧倒的にひりついた痛みを感じる作品です。 “平成”の隙間に取り残された闇と“昭和”の温もりとの狭間で、現代社会に埋没している家族の一片を覗き込んでいるような感覚。 「是枝組」というアットホームな家族が紡ぎ出した明確な…

映画『孤狼の血』の私的な感想―実話をモデルにした東映任侠映画史の魂を受け継ぐ者たち―

孤狼の血/2018(日本) /時代の趨勢の中で薄れてゆくヒトの痛み やっぱりこの手の作品には、何時までも日本男児に滾る熱き血潮を感じてしまいます。 久しぶりに映画館で観た邦画でしたが、何とも言えない味わい深い日本人臭さには哀愁を覚えます。 一見男…

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の私的な比較―映画か?アニメか?―

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?/1995(日本) /久々に新作アニメを見ました。 若い自分がずっと傾倒してきた岩井俊二映画のアニメ化作品なのでそれなりに期待して見てみたんですが・・ 正直、予想を遥かに上回る衝撃でした。 それは自分がう…

映画『四月物語』の私的な感想―春に見たい、学生時代の風景―

四月物語/1998(日本) /・・とりあえず春先は、コレを観ておくとなんだか心が少し温かくなります。 この作品には日本人が感じる「春」がすべて詰まっている気がするんですが。 久しぶりに見返して見たら、無駄に大物俳優がゲスト出演しているのにもちょっ…

映画『ヒメアノ~ル』の私的な感想―R指定おかまいなしの森田剛の挑戦―

ヒメアノ~ル/2016(日本) /本作の原作を知らない方って、やっぱりそれなりに多いんでしょうか? 自分達アラフォー世代にとって、ギャグ漫画界のカリスマ的存在だった古谷実の作品が映像化に漕ぎつけられた時は、ちょっとした驚きでした。 「稲中卓球部」…

映画『希望の国』の私的な感想―原発被害の実態。福島で生き続ける人々―

希望の国/2012(日本) /『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』等でむきだしの人間の性を捉え続ける鬼才監督園子温。 バイオレンスでセクシャルな描写をモットーする彼の作品の中でもこの作品だけは異例中の異例です。 園子温の深層風景をあの原発事故をモチーフに…

映画『あゝ、荒野』の私的な感想―寺山修司の魂を引き継いだ菅田将暉の迫力―

あゝ、荒野/2017(日本) /久々に強い映画を見ました。 身構えずに見ると、ちょっと火傷しそうになる映画です。 この映画で若干25歳で最優秀主演男優賞に輝いた俳優、菅田将暉には、皆さんと同じく以前から注目してはいましたが、この作品での熱演で同年代…

映画『HANA-BI』の私的な感想―北野映画の秀作、男の美学の教科書―

HANA-BI/1998(日本) /映像業界の人間なら誰しもが、一度は仕事はさせて頂きたかった名優・大杉漣さんの魅力が一番出ている作品です。 ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞までこの作品が受賞したその一端は、ビートたけし演じる主人公の武骨な孤独感を増幅…

映画『日本黒社会 LEY LINES』の私的な感想ーリアルなさみしさ・・ー

LEY LINES/1999 /CXドラマ『昼顔』で画家の加藤を演じ、主婦層にもそのセクシーな魅力を広めた北村一輝の初期の頃の主演映画ですが、この作品の監督も実は世界的に有名になりつつある三池崇史監督。 アイロニックな主人公の悲哀に満ちた青春を描いたこの作…

映画『スワロウテイル』の私的な感想ー円都(イェンタウン)に憧れてー

Swallowtail/1996(日本) /「フェイホン」覚えている方います? ええ、若かりし頃の馬鹿な自分は、彼に触発され髪の毛を緑色に染めていた時期もありました。。 岩井俊二の独特な世界観と、鼻にかかった気だるい声で歌う「YEN TOWN BAND」の音色が心地良過…

映画『クヒオ大佐』の私的な感想―実在した天才詐欺師の半生―

クヒオ大佐/2009(日本) /70年代から90年代にかけて、総額1億円以上を騙し取った天才詐欺師「ジョナサン・エリザベス・クヒオ」をモデルにしたこの作品は、史実をベースにその当時の被害者の女性達の心情や、クヒオ大佐自身の心の葛藤等を独特な吉田ワー…

映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の私的な感想―イタくて儚い生き様―

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ/2007(日本) /映画『羊の木』が有名な吉田大八監督のデビュー作です。 初の長編デビュー作でもあったこの作品は、サトエリ自体にちょっと抵抗感のある自分にとっては劇場まで足を運ぶ勇気はありませんでしたが、このスト…

映画『CASSHERN』の私的な感想―誰かの願いが叶うころ―

CASSHERN/2004(日本) /国産SFアクション映画の新境地 当時から賛否両論のあるこの作品ですが、自分は全然嫌いじゃありません。 尺の長さや演出の不出来等、映画としてのツッコミどころは満載ですが、それでも120分間十分に紀里谷ワールドの真骨頂とも…

映画『Love Letter』の私的な感想―青春の一ページに刻まれた記憶―

Love Letter/1995(日本) /言わずと知れた「岩井美学」の代表作。 この映画をきっかけに彼の作品にハマったヒトも多いんじゃないでしょうか? ほろ苦いエピソードに情緒的でノスタルジックな映像描写を織り交ぜ、90年代の日本映画界を席巻したこの作品は…

映画『櫻の園』の私的な感想―禁断の花園に漂う、淡い春の思い出―

櫻の園/1990(日本) /監督:中原 俊 /出演:中島 ひろ子、白島 靖代、宮澤 美保、つみき みほ /チェーホフの四大戯曲の一つ『桜の園』を演じる女子高生達の群像劇。吉田秋生漫画原作で映画化された作品の中でも屈指の傑作。

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