マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

ドラマ

映画『タリーと私の秘密の時間』の私的な感想― 女の現実から目を背ける男へ―(ネタバレあり)

Tully/2018(アメリカ)/95分 / 女の現実から目を背けてきた男たちへ・・ /男はこの手の邦題をつけられると何だか無性にこっぱずかしくなってくる。 “タリーと私”までならなんとか・・ でも“秘密”というワードが添えられた瞬間から、その映画に甘い飽和…

映画『羊の木』の私的な感想―バロメッツに暗示された疑う者の正体―(ネタバレあり)

羊の木/2018(日本) /吉田大八監督の渾身の問題作 /吉田大八監督作品の中では、一番難しい作品かもしれません。 犯人捜しのサスペンスの様で、ヒトの業、倫理学にまで踏み込んだこの映画は、是枝組の『万引き家族』にも通じた社会批判を大いに盛り込んだ…

映画『青いパパイヤの香り』の私的な感想―ベトナム映画に観る釈迦の悟り―(ネタバレあり)

L'odeur de la papaye verte/1993(ベトナム/フランス) / アジア料理が好きになったきっかけの映画かもしれません。 使用人としてベトナムの裕福な音楽一家の下で働き始める無口なムイの手料理。 劇中では随分この料理をする描写が多いですが、それに比…

ABCテレビ『幸色のワンルーム』放送中止を受けて―瑕を持つ人たちをどうか、見捨てないでほしい―

放送を自粛したテレ朝の忖度 /『万引き家族』の上映でようやく世間が目を向け始めた時勢のうねりが再び世論の声に揉み消されてしまった。 上辺を取り繕う社会の裏で歪んでいく人間関係の実態に、自分たちはいつまで目をそらし続けるのだろうか? 幼稚化が進…

映画『悪い女』の私的な感想―女たちが辿り着いた友情の先にあるもの―

파란 대문/1998(韓国) /奇才キム・ギドク監督が後にヒットさせた『悪い男』と相対的にこの邦題がつけられた映画の本当の原題は『青い門』 確かに劇中でも印象的にこの門は写されていますが、相乗効果を狙った配給会社の思惑を差し引いても、中々にセンス…

映画『スリービルボード』の私的な感想―アメリカの縮図と免罪符―(ネタバレあり)

Three Billboards Outside Ebbing, Missouri/2017(アメリカ)/ 絵に描いたような典型的なアメリカ映画です。 第90回アカデミー賞で6部門で7つにノミネートされ、主演のフランシス・マクドーマンドと助演のサム・ロックウェルがそれぞれ最優秀賞を受賞した…

映画『ビューティフル・デイ』の私的な感想―ダークサイドを彷徨う男の絶望感―

You Were Never Really Here/2018(イギリス・フランス・アメリカ) /・・腹を据えて観ないとちょっとシンドイ映画かもしれません。。 90分という割り合い短い映画でしたが、どうも3時間くらいの体感速度を感じてしまうのは、劇中永遠に続きそうな孤独感。…

映画『万引き家族』の私的な感想―樹木希林からの遺言。ワーキングプアの実態―

Shoplifters/2018(日本) /圧倒的にひりついた痛みを感じる作品です。 “平成”の隙間に取り残された闇と“昭和”の温もりとの狭間で、現代社会に埋没している家族の一片を覗き込んでいるような感覚。 「是枝組」というアットホームな家族が紡ぎ出した明確な…

映画『孤狼の血』の私的な感想―実話をモデルにした東映任侠映画史の魂を受け継ぐ者たち―

孤狼の血/2018(日本) /時代の趨勢の中で薄れてゆくヒトの痛み やっぱりこの手の作品には、何時までも日本男児に滾る熱き血潮を感じてしまいます。 久しぶりに映画館で観た邦画でしたが、何とも言えない味わい深い日本人臭さには哀愁を覚えます。 一見男…

映画『LIFE!』の私的な感想―人生の見方を変える旅に出よう!―

The Secret Life of Walter Mitty/2013(アメリカ) /妄想癖が強い人にはピッタリの気分転換が出来る映画です。 「映画」で「映画」を見るような不思議な感覚。。 ・・朝の満員電車の中で、通勤途中の横断歩道で、あの映画のワンシーンを夢想したことはあ…

映画『息もできない』の私的な感想―連鎖する暴力―

똥파리/2009(韓国) /シバルラマ 久々に邦題がしっくりくる映画です。 原題の『똥파리』(トンパリ)とは「クソバエ」を意味する罵倒語らしいですが、そんなかわいい表現じゃ表しきれないくらい、本編は終始、怒りに満ち溢れています。 正に『息もできな…

映画『希望の国』の私的な感想―原発被害の実態。福島で生き続ける人々―

希望の国/2012(日本) /『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』等でむきだしの人間の性を捉え続ける鬼才監督園子温。 バイオレンスでセクシャルな描写をモットーする彼の作品の中でもこの作品だけは異例中の異例です。 園子温の深層風景をあの原発事故をモチーフに…

映画『ショートターム』の私的な感想―ココロが少し疲れてきたヒトたちへ・・―

Short Term/2014(アメリカ) /この映画は、サンディエゴ州立大学の映画学科の学生が卒業制作で作った言わば自主映画を基にして作られているんですがこれが中々の秀作。 22分の短編として作られた基の『Short Term 12』は、インディペンデンス映画の王道と…

映画『HANA-BI』の私的な感想―北野映画の秀作、男の美学の教科書―

HANA-BI/1998(日本) /映像業界の人間なら誰しもが、一度は仕事はさせて頂きたかった名優・大杉漣さんの魅力が一番出ている作品です。 ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞までこの作品が受賞したその一端は、ビートたけし演じる主人公の武骨な孤独感を増幅…

映画『セッション』の私的な感想―狂気に満ちたジャズドラムの世界―

Whiplash/2014(アメリカ) /極限に達する緊張感 ・・この映画は、何かをストイックにやり遂げた事がある人にしか伝わらない作品なんじゃないでしょうか? 眉を顰める程の張り詰めた緊張感と端的な会話の応酬で、映画を観ているというよりも夢を追っている…

映画『最強のふたり』の私的な感想―本当の友達のつくり方―

Intouchables/2011(フランス) / ふんわりと優しい気持ちになれる映画です。 素直になれないヒトには丁度いいかも。。 第36回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞等を始め数々の映画賞を受賞したこの作品ですが、どうも日本人ウケが一番いいみたいですね。 …

映画『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』の私的な感想―一線を越えた男の美学―

LOCKE/2013(イギリス) /スタイリッシュなワンシチュエーションドラマ 夜の高速を車で走っていると、よく色々な事を考えます。 他愛のない事から仕事の事まで、暗闇に目を凝らし集中していると思考がクリアになていくというか、色々な事を客観的に考えら…

映画『 ラストキング・オブ・スコットランド』の私的な感想―ウガンダの独裁者、アミンの正体―

The Last King of Scotland/2006(イギリス) /歪んでいくアフリカの憎悪 スコットランドの場所って皆さんは直ぐにイメージできますか? サッカー好きな方はご存知でしょうが、フィヨルドに囲まれたイギリスの最北端にある小さな沿岸部の国です。 当時イン…

映画『クラッシュ』の私的な感想―ココロが震える、圧巻の魂の叫び声―

Crash/2005(アメリカ) / 忘れません。この映画は。 この作品を誰かに伝えたくて、著者はこのブログを初めました。 感動というより、見終わった後の胸の奥の小さなぬくもりが今でも忘れられません。 多民族国家を象徴するようなアメリカの、様々な人種が…

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