マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

洋画

映画『孤独なふりした世界で』の私的な感想―世紀末に本当の愛はあるのか?―

I Think We're Alone Now/2019(アメリカ)/93分 /孤独を愛する者 /『GOT』のティリオン役でも有名になったピーター・ディンクレイジは、何よりもその小さな背中から嫌みのない強烈な男の哀愁を感じさせてくれる。 それが『ハンドメイズ・テイルズ』でデ…

映画『魂のゆくえ』の私的な感想―宗教に縛られる者が見失っていく事―(ネタバレあり)

First Reformed/2019(アメリカ)/113分 /宗教に捕らわれる者の悩み /この映画のテーマでもある問題をちょっと昔に突きつけられた事がある。 幼少期よりアメリカの片田舎で、敬虔なバプテスト(キリスト教プロテスタントの一教派)の家庭にどっぷり浸っ…

映画『ザ・バニシング-消失-』の私的な感想―二つの金の卵が暗示するもの―(ネタバレあり)

SPOORLOOS/1988(オランダ/フランス)/106分/ /反社会性パーソナリティー障害を持つ男の真理 /子供の頃、ブランコを漕いでいる友人が、その手を放してしまう妄想を抱いた事はないだろうか? 半円を描く弧が次第に深くなっていき、彼らの目線の位置に大…

映画『ラストデイズ』の私的な感想―カート・コバーンが背負い続けた痛み―

Last Days/2005(アメリカ)/97分/ /グランジロックの原点 /心の奥底に潜めた怒りを綺麗に発散するのは結構難しい。 それが末期状態に陥った天才ミュージシャンの性なら尚更。。 カンヌでグランプリを獲得した『エレファント』に代表されるように、殺風…

映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』の私的な感想―ゾンビパロディに潜めた少年心―

Shaun of the Dead/2004(イギリス)/99分 /ゾンビ映画の王道セオリーを・・ /パロディ映画だが、なんだか愛おしくなる映画だ。 とりあえず、ゾンビ映画初心者には正にうってつけの愛情たっぷりな作品。 安いヒューマニズム?過酷なサバイバル生活? そ…

映画『運び屋』の私的な感想―老いを受け入れたイーストウッドが最期に辿り着いたもの―

The Mule/2018(アメリカ)/116分 /クリント・イーストウッドの告解 /破天荒に生きてきた人間ほど、その人生の最期を上手く締めくくろうとする。 それが贖罪の意識からくる懺悔なのは明白だが、とうとう往年の名優にして偉大な監督としての功績も上げて…

映画『ウトヤ島、7月22日』の私的な感想―史上最大の殺戮劇をワンカットで撮る意味―

Utøya 22. juli/2018(ノルウェー)/90分 /テロ事件を映像化する難しさ /この手の映画を観るには相当の気合がいる。 現に自分も一人では勇気が出せず、連れに付き合ってもらって観賞した。 77人の犠牲者と300人以上の負傷者を出したこの歴史上類を見ない…

映画『フェイク』の私的な感想―実話を元にしたオールドファッションタイプの男達の絆―

Donnie Brasco/1997(アメリカ)/126分 /どこにでもいる家庭的なイタリアンマフィア /・・映画紹介も1年を超えてきたので、これまで恐れ多過ぎて感想さえ手が出せなかった、アル・パチーノ映画をそろそろ。。 愚行を繰り返すがあまり、とうとうディズニ…

映画『セレニティー』の私的な感想―平穏の海のルールを破る者―(ネタバレあり)

Serenity/2019(アメリカ)/90分/90分 /現実では体験できないコト / ・・最近、面白い映画といい映画の違いがイマイチよく分からなくなってきた。 大勢の観客を納得させられれば面白い? 平和や人類愛なんかを訴えていればいい映画? 作り手側としては…

映画『海底47m』の私的な感想―禁断症状に陥った姉妹を襲うサメより怖いもの―

47 Meters Down/2017(イギリス)/90分 /減圧症と窒素酔いの恐怖 /ディープダイビングでは、1分間に18Mを越えないように浮上していかないといけないというルールがある。 これはダイビング経験者にとって生死を分けるポイントであり、麻痺や呼吸困難、場…

映画『ギルティ』の私的な感想―邪悪な蛇を認めた心に宿るもの―(ネタバレあり)

Den skyldige/The Guilty/2018(デンマーク)/88分 /ワンシチュエーションスリラーで見せる人の業 /ワンシチュエーションスリラー映画としては久々の大傑作。 人の持つ善意の裏で蠢く業をくっきりと浮かび上がらせてくる。 『フォーンブース』等に代表…

映画『インポッシブル』の私的な感想―津波に飲まれた楽園で込み上げる情動―

Lo Imposible/2012(スペイン)/113分 /大地震の前兆 /”スーパームーン”と聴くと、どうしても大地震を連想してしまう。 直接の因果関係は立証されていないにせよ、強まった月の引力は活断層になんらかの変化を与えてきそうだ。 この映画の元となる2004年…

映画『デイ・アフター・トゥモロー』の私的な感想―現実に近づく地球氷河期―(ネタバレあり)

The Day After Tomorrow/2004(アメリカ)/124分 /王道のディザスタームービー /ゾンビモノ映画に次いで自分が欠かさず毎年チェックしているのは、実は災害をテーマにしたディザスタームービー。 近年ではその陳腐なドラマ性のおかげですっかり見る気が…

映画『ファースト・マン』の私的な感想―アームストロング船長の空白の時間―

First Man/2018(アメリカ)/141分 /人類で初めて月に降り立った男 /“宇宙飛行士”という肩書には、無条件で惹かれてしまう。 それは夢想家の自分にとっての見果てぬ夢であり、永遠の憧れ。 宇宙モノ映画はそれだけで意識を幻想空間に飛ばしてくれるが、…

映画『ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー』の私的な感想―禁忌に触れた者達の殺戮ショー―

Velvet Buzzsaw/2018(アメリカ)/113分 /牙をむく芸術 /芸術家を目指す人間は、意外にもマッチョが多い事を皆さんはご存じだろうか? ダウンタウンの松ちゃんやGacktなんかもその類で、自分の回りにもストイックに筋トレを欠かさない連中は大勢いる。 …

映画『サスペリア』の私的な感想―リメイクされた本物のモダンホラー―(ネタバレあり)

Suspiria/2018(アメリカ、イタリア)/152分 /本当の狂気 /ホラー映画のリメイク物は大抵駄作に終わる。 それは恐怖の根本を蔑ろに、進化した映像処理に依存してしまう自分達の悪癖でもある。 78年のホラーの生みの親ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に…

映画『ポーラー 狙われた暗殺者​』の私的な感想―グラフィックノベルから飛び出すダンディズム―

Polar/2018(アメリカ、ドイツ )/118分/111分/120分 /マッツ・ミケルセンの艶 /マッツ・ミケルセンという俳優をこの作品で初めて知ったのだが、『孤狼の血』を観たあたりから、年甲斐もなく粋でポーカーフェイスなチョイ悪オヤジに憧れを抱き続けてし…

映画『バハールの涙』の私的な感想―戦場の女達が託す尊厳と希望―

Les filles du soleil/Girls of the Sun/2017(スイス、フランス、ベルギー、ジョージア )/111分/120分 / 実在のモデルとIS /ドキュメントのような悲壮感がたっぷり漂う作品だった。 中東の女達の悲鳴にも似た叫び声がしっかりと聴こえてくる・・

映画『マグダラのマリア』の私的な感想―キリストに捧げる究極の愛情―

Mary Magdalene/2018(イギリス)/120分 /人道主義的なキリスト教の精神 /最近、中学の国語の授業の中で『作られた『物語』を超えて』という人類学者山極寿一氏の著書がある事を知った。 彼は霊長類学者として30年以上のキャリアを積んでゴリラの研究に…

映画『ミスター・ガラス』の私的な感想―19年の時を経て完結するシャマラントリロジー―(ネタバレあり)

Glass/2018(アメリカ)/128分 /シャラマンの意思 /『アンブレイカブル』を世に送り出してから実に19年。。 リアルな時を経てその畢生の仕事を終えた監督M・ナイト・シャラマンの執念には、まず手放しで称賛したい。 けれども、相変わらずの難解なレトリ…

映画『CRESCENT 冷たい海の底』の私的な感想―マーブルに染まる女が辿り着く海辺―(ネタバレあり)

The Crescent/2017(カナダ)/99分 /メランコリックな異色ホラー /冒頭に出てくる色彩豊かなマーブリングの映像を見ていると、始めはだいぶメランコリックな映画の様に感じてしまう。 寒々しい海と家。 更にそこに幼子を見守る母親が佇んでいると、やっ…

映画『ミスティック・アイズ』の私的な感想―女の理想を打ち砕くインモラルな田舎街―

WRECKERS/2014(イギリス)/85分 /理想的な家庭を夢見る妻の横顔 /この映画をじっくり観ていくと、クレア・フォイの表現力豊かな顔芸の多さに驚かされる。 Netflixオリジナルドラマの『ザ・クラウン』でゴールデングローブ賞を受賞してからはその頭角を…

映画『パッセンジャー』の私的な感想―オリジナル脚本に込められていた本当のテーマ―(ネタバレあり)

Passengers/2016(アメリカ)/116分 /実現できなかったオリジナルの脚本 /・・まるで手塚治虫の描いた世界の様だけど。。 Rotten Tomatoes等の映画批評サイトではすこぶる評価の低いこの作品は、私的にはちょっと考えさせられる深みのあるスペーススリラ…

映画『ドント・ブリーズ』の私的な感想―侵入者を待ち受ける白濁した瞳の男―

Don't Breathe/2016(アメリカ)/88分 /フェデ・アルバレス監督の異才 /ルーニー・マーラーの魅力を余すところなく解放したデビット・フィンチャー監督の前作には少々及ばなかったようだが、『蜘蛛の巣を払う女』を監督したフェデ・アルバレスの異才が十…

映画『隣人は静かに笑う』の私的な感想―VODで解禁された名作スリラー―

Arlington Road/1999(アメリカ)/117分 /ティム・ロビンスの瞳 /・・タイトルからすると、まるで日本に挑発的な態度をとるかの国の様だけど・・ 主演のジェフ・ブリッジスは『オンリー・ザ・ブレイブ』では主人公の親友を演じた中々の技巧派だが、無冠…

映画『ROMA/ローマ』の私的な感想―記憶の底に埋もれた家族の風景―

Roma/2018(メキシコ・アメリカ)/135分 /逞しく生きる女の生き様 /・・年の瀬くらいはもう少し夢のある映画を観たかったのだけれど、またしても逞しい女の生き様をまざまざと見せつけられてしまった。。 脚本、監督、撮影、編集まで熟すこの映画のアル…

映画『アルカディア』の私的な感想―カルト集団の奇跡に魅せられた兄弟―

The Endless/2017(アメリカ)/111分 /複雑な感情の兄弟が迷い込む異世界 /原題と冒頭のインタータイトルでその世界観を殆ど説明してしまっている感は否めないが、それでもこの手の映画は割と嫌いじゃない。 複数のファンタスティック系の映画祭で賞を取…

映画『タイタニック』の私的な感想―志高のラブストーリーに隠された逸話―

Titanic/1997(アメリカ)/194分 /珠玉の名作ラブストーリー /不沈のこの名作映画が世に生まれて20年以上。 ノルウェー生まれのシセルが、漂う様にハミングするこの音色が聴こえてくるだけで、世界中の多くの人たちはその深く沈む海の底に思いを馳せられ…

映画『バード・ボックス』の私的な感想―あれを見てしまった人間達は・・―(ネタバレあり)

BIRD BOX/2018(アメリカ)/124分 /現代社会の一片を切り取ったディストピア /『すべての終わり』に続き、Netflixがポストアポカリプス映画にも本格的に参戦し始めてきたみたいだ。 ドラマ作りはともかく、映画というジャンルにおいてはイマイチ良作の少…

映画『希望のかなた』の私的な感想―フィンランドでアキカウリスマキが叫ぶ友愛―

Toivon tuolla puolen/2017(フィンランド・ドイツ)/98分 / 小津映画に通じる清貧さ / 師走を迎えるとなんだか無性に忙しい。 映画ブログにかまけて仕事をサボっていたツケが回ってきたのか? 或いは業界独特の年末に向けての撮影ラッシュの為か・・? …

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